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zoom RSS 日本語の間違いの実例。「保護者各位殿」は誤りなの?

<<   作成日時 : 2016/01/21 07:27   >>

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★日本語★
問題:「保護者各位殿」は誤りだそうです。なぜか。各位は「2人以上の人を対象としてそれぞれの人に敬意を表す語」だからです。もともと敬語なんですね。
■「殿」はご存知のとおり敬称です。もともとは身分の高い人をその御殿の名前で呼んだことから来ているらしい。目上に使われ、関白殿、清盛入道殿などの表現が記録として残っているそうです。最近では部下や目下に使う事例も増えているようですが。いずれにせよ公的な場合に使われるとのこと。「様」も敬称ですが、私的な場合に使われるらしい。
■歴史がお好きな方は「淀君」という表現と「淀殿」という表現があることをご存知でしょう。前者は徳川幕府が推奨する言葉らしい。「○君」は遊女にも用いられ、対象を貶める(おとしめる)こともある表現だそうです。「淀殿」のほうは純粋な敬意が含まれているらしい。
■ネットの「大辞泉」「大辞林」どちらも、「各位殿とする必要はない」、「各位殿は敬意が重複するので好ましくない」と間違いと指摘しています。参考資料*1によれば、かつて「三省堂国語辞典」では「各位」の用例とて「各位殿」を挙げたことがあったらしい*1。最近は修正されているのかな。
■口絵は「各位殿」を画像で検索したら登場した凄い事例です。集合住宅の管理会社側からすれば、客に失礼があってはいけないと思う気持なのでしょう。気持ちは理解できますけど、違和感をたっぷり感じさせる事例です。
■本日は、実際のマスコミなどに登場した日本語の誤りについて考えてみましょう。下の例には、日本語として正しくない部分が含まれています。それはどこでしょうか?
[い]「危うく一命はとりとめたものの、かくなる事態になってしまった」
[ろ]「ご主人の姿は、影もかたちも見えなかった」
[は]「それはよくない。自分の荷を他人の肩に背負わすことになるのだから」
[に]「これで決勝戦で勝てる自信がつきました」
(答えはずっと下↓ スクロールして下さい)

























★日本語★
正解:各項目を参照してください
説明:
[い]「危うく一命はとりとめたものの、かくなる事態になってしまった」は「かくなる」が誤り

■ほぼおなじ事例が、読売新聞の昭和52年(1977年)5月2日の「海外短波」という企画で使われていたらしい*1。
□「かく」は漢字で表記するなら「斯く」です。「このように」の意味だそうです。「斯くして」は「このようにして」の意味で今でも時々使われます。「なる」は「成る」。「物・ことが結果として実現・成立する」という意味らしい。例文を直訳すると、「このようになる事態になってしまった」です。変ですね。「成る」の意味が重複しています。
□そもそも「かくなる」は「かくなる上は」という使い方以外にはなさそうです。現代の「大辞泉」や「大辞林」では少なくとも「かくなる上は」以外には見つかりません。「こうなった以上は」の意味ですね。30年ほど前の「日本国語大辞典(小学館)」にいたっては、「かくなる上は」も「かくなる」も立項されていません。「斯く」と「成る」は別々に立項されていますが。当時は「かくなる」は単語・成語ではなく、文章とみられていたのかな。
□推測ですが、記者は「かかる事態になってしまった」と書きたかったのかもしれません。これならば重複はないので問題ありません。
[ろ]「ご主人の姿は、影も形も見えなかった」は「姿」が誤り
■これはR ・D ・ウィングフィールドの「クリスマスのフロスト」(創元推理文庫)という作品中に類似の例があるようです*1。
□どこが間違いかわかりにくいかもしれません。でも、「ご主人は、影も形も見えなかった」と直してみると、「姿」が余計な言葉だとわかります。「影も形も見えない」は姿が確認できないことですから、重複した表現になってしまうわけですね。
[は]「それはよくない。自分の荷を他人の肩に背負わすことになるのだから」は肩に背負わすが誤りく
■これはアンドレ・ジイドの「田園交響楽」(世界文学全集)の邦訳に似た例があるようです*1。
□肩を使って荷物を運搬する場合は、ふつうは「肩に掛ける」と表現するでしょう。背中を使って荷物を運搬する場合は「背中に背負う」ことになるでしょう。「肩に背負わす」は翻訳者の発明かもしれませんが、すこし奇異に感じます。「肩に負わす」なら問題ないのかな。
[に]「これであの投手を打てる自信がつきました」は打てるが誤りく
■平成13年(2001年)5月10日のTBS「ニュースの森」という番組に似た表現が出てきたようです*1。
□正しくは「打つ」でしょうね。「打つ自信がつきました」。これならすっきりしてひっかかりません。「可能」の意味にとらわれすぎるとこんな誤りが生まれるようです。「勝てる自信、泳げる自信、話せる自信、辿り(たどり)着ける自信」。変ですよね。「勝つ自信、泳ぐ自信、話す自信、辿り着く自信」とあっさり表現したほうがいいようです。
◆参考*1:書籍「おかしな日本語 正しい日本語」、土屋道雄著、ISBN4-7601-2279-6、柏書房
◇辞書「字通」白川静、平凡社
◇辞書「漢字源」藤堂明保、学習研究社
◇辞書「日本国語大辞典」小学館
◇Yahoo! J Dictionaries 大辞泉
◇Yahoo! J Dictionaries 大辞林

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
役場から殿付きで来ると、ムッとしますけどね。
様とつけんか様と!思います。
ねこのひげ
2016/01/24 05:30
コメントをありがとうございます。

 なるほど。たしかに「様」を使わない例もあります。先方としては敬意を表しているつもりなのでしょう。でも、「殿」が目下に使われる例が多くなっているので、誤解を招きやすいですね。
(^^;)
ねこのひげ様<素町人
2016/01/24 09:22

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