町人思案橋・クイズ集

アクセスカウンタ

zoom RSS 明治の始め。見世物の中で一番人気は、熊の曲芸なの? それとも軽業(かるわざ)なの?

<<   作成日時 : 2015/11/04 07:26   >>

驚いた ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 2

画像
★歴史★
問題:おそらく、人類の歴史が始まって以来、現代ほど娯楽にあふれた時代はないのでしょう。テレビやインターネットはもちろん、携帯機器を利用した音楽や動画・静止画、ゲームなど、いつでもどこでも閑潰しのネタは山ほどあります。
■旅行は世界中が対象となり、場合によっては宇宙さえも観光できるらしい。人々が求めるのか、娯楽産業が求めるのか、新しい刺激は次々と開発され、市場に送り込まれます。もちろん、飽きられて落伍するサービスや商品もまた数多いのですが。
■江戸時代とか明治時代の前半には映画はありませんでしたし、写真もようやく登場したばかり。音の再生装置も明治の半ば過ぎにようやく日本で普及を始めます。当時の娯楽はたいへん素朴なものだったようです。
■でも、それで不幸だったとは思えません。囲碁も将棋もあれば、近所づきあいも井戸端会議もあり、芝居もあれば吉原もある。裏道には鉄火場(賭博場)もある。長唄や義太夫、舞踊や民謡などの習い事もあれば寄席や講釈場は町内に1つずつあり、縁日も祭りもいまよりずっと人々に近い存在でした。本も雑誌も新聞もあれば浮世絵もありました。機械仕掛けの娯楽はほぼ皆無なのですが。
■当時の素朴な娯楽の1つに御開帳(ごかいちょう)があります。江戸/東京や京都、大坂/大阪といった大都市に地方の名刹の秘仏・秘宝などが運ばれ、公開されることです。旅行が現在よりも困難で時間がかかった時代です。有名な仏像を目の当たりにし、好奇心も信仰心も満足させられます。話題を求めて多くの人が集ったようです。
■明治7年(1874年)の4月2日から6月10日まで。ちょうど70日間にわたり、両国の回向院(えこういん)で2つの御開帳が同時開催されたそうです。1つは千葉県山武郡芝山町の観音教寺(かんのんきょうじ)。江戸時代には関八州の寺院を統括した由緒ある名刹だそうです。芝山観音像と仁王像が出張して来たようです。もう1つは大田区西六郷にあった安養寺(あんようじ)。古川薬師という薬師如来像らしい。聖武天皇の皇子が乳を飲まずに衰弱したとき、この薬師の霊験でおいしい乳が得られ、皇子は救われたという伝説があるそうです。
■期間中の御賽銭の合計は、観音様と仁王様が2150円。薬師様は280円だったらしい。当時と現代の貨幣価値を1万倍と仮定して見ますと、70日間で2150万円、280万円の賽銭があがったことになります。1日あたり30万円、4万円ですね。これが高いのか安いのかはよくわかりませんが。
■回向院に集まる人々を目当てに、境内では11件の見世物興行が行なわれたようです。では、下の5つの見世物のうち、ダントツで人気を集め、高い売上げを示したのはどの興行だったのでしょうか?
[い]貝細工(貝を材料に使った細工物)
[ろ]熊の曲芸
[は]軽業(かるわざ)
[に]生人形(いきにんぎょう)
[ほ]異獣(いじゅう、珍しい生き物)
(答えはずっと下↓ スクロールして下さい)

























★歴史★
正解:[い]貝細工(貝を材料に使った細工物)
説明:貝細工は、70日間の御開帳のあいだに44日間の興行があったようです。興行といっても細工物を配置して見せるだけ。人件費は少なくて済みそうですね。44日で1881円余りの売上げだったらしい*1*3。1日あたり42円75銭でしょうか。御賽銭よりも多いらしい。下の画像はそのときの引き札(チラシ)なのかな。
◇*HP「貝細工 小寺金藏 - Google 検索」(画像)
https://www.google.co.jp/search?q=%E8%B2%9D%E7%B4%B0%E5%B7%A5%E3%80%80%E5%B0%8F%E5%AF%BA%E9%87%91%E8%97%8F&hl=ja&rlz=1T4GGHP_jaJP523JP523&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ved=0CAgQ_AUoAmoVChMI7fS_1ITxxgIVSjCICh2jewnk&biw=1268&bih=620#imgrc=x9Ci2DL5mN_OLM%3A
■売上げの2位以下は次のようになっています*3。
(貝細工      興行44日  1日当たり1881円10銭)
2.桃太郎大人形  同44日  同430円14銭
3.熊芸        同37日  同299円33銭
4.押絵眼鏡     同53日  同290円98銭
5.生人形       同37日  同265円89銭
6.猿軽業       同50日  同250円14銭
7.生人形眼鏡押絵 同41日  同225円50銭
8.怪談人形     同44日  同213円95銭
9.力曲持       同37日  同217円35銭
10.猿物真似     同39日  同134円54銭
11.異獣        同35日  同 18円15銭
■抜群の人気を誇った貝細工がどういう物なのかは、ネット上では把握できませんでした。東京/京都国立博物館、江戸東京博物館の収蔵品検索でも引っかからないようです。少なくとも現代海辺の観光地の土産物よりは、はるかに手が込み、多くの人の鑑賞にたえるもののようです。
■寛政(かんせい)9年(1797年)には、見世物としての記録が残されているようです。文政年間(1818〜1830年)に江戸で隆盛を見たらしい。「細工はさまざまな種類の貝を用いてその天然の色彩を利用したもので、屏風など平面的なものもあるが、立体的な像も多く作られた。人物像の場合は顔面と手足には練物を用いる。緻密さと色彩の鮮やかさで評判」となったらしい*1。ちょっと菊人形にも似ていますね*4。
■回向院での興行は貝細工としては末期に近かったようです。以後、徐々に廃れていき、いまはまったく見られなくなりました。写真も残されていないのかな。残念です。
■なお、ランキングに見られる押絵眼鏡というのは、高級羽子板に見られるような押し絵細工を大きな箱の中に入れ、中を覗くようにして鑑賞するものではないか…と勝手に推測しています。
◇*HP「押し絵 - Google 検索」(画像)
https://www.google.co.jp/search?q=%E6%8A%BC%E3%81%97%E7%B5%B5%E7%9C%BC%E9%8F%A1&hl=ja&rlz=1T4GGHP_jaJP523JP523&biw=1268&bih=620&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ved=0CAYQ_AUoAWoVChMI7JjD0YvxxgIVSzuICh06ngDe#hl=ja&tbm=isch&q=%E6%8A%BC%E3%81%97%E7%B5%B5
■生人形は「いきにんぎょう」と読みます。生きているように見える精巧な人形のことらしい。力曲持(ちからきょくもち?)は軽業の一種らしい。曲持は、「さまざまなものを手・足・肩・腹などで持ち上げ、 それを操って見せる曲芸」と辞書にはあります。これに力技が加わるのかな。
■猿物真似は、猿が物真似をするのか、猿の真似をしてみせるのか、わかりませんでした。異獣はおそらく珍獣なのでしょう。1日50銭しか売上げが立たないのですから、あまり珍しくなかったのかな。
■なお、当時の見世物の見物料はおおむね1銭〜3銭前後のようです。当時別の場所で行なわれた貝細工の見世物興行では1銭だったらしい。1万倍として考えれば現在の100円ぐらいなのかな。もし回向院でも1銭だったとすれば、1881円を売り上げるためには18万8100人の人が見にくる必要があります。1日当たり4000人以上ですね。凄い人気だったようです。
◆参考*1:書籍「幕末明治見世物事典」10〜11頁、倉田喜弘編、ISBN978-4-642-08074-3、吉川弘文館
◇*2HP「興福寺の仏像 - Wikipedia」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%88%88%E7%A6%8F%E5%AF%BA%E3%81%AE%E4%BB%8F%E5%83%8F
◇*3HP「見世物興行年表:明治7年」
http://blog.livedoor.jp/misemono/archives/cat_50046849.html
◇*4HP「菊人形はいつごろから始まったの? 町人思案橋・クイズ集/ウェブリブログ」
http://blog.q-q.jp/201509/article_8.html

ぬけられます→歴史雑学クイズ一覧

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
驚いた

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
超絶技巧とかいって本物そっくりな動く彫刻なんかも人気があったと聞きます。
どんな貝細工なのか見てみたいですね。
ねこのひげ
2015/11/08 08:25
コメントをありがとうございます。

 動く彫刻というのは、ロボットに近いものなのでしょうか。あるいは絡繰(からくり)人形みたいなものなのかな。楽しそうですね。
 貝細工はちょっと見てみたいですよね。写真を持っている人もいるかもしれないのですが。
(^^;)
ねこのひげ様<素町人
2015/11/08 15:30

コメントする help

ニックネーム
本 文
明治の始め。見世物の中で一番人気は、熊の曲芸なの? それとも軽業(かるわざ)なの? 町人思案橋・クイズ集/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる