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zoom RSS 牛にまつわる諺。「暗がりから牛」ってどんな意味なの?

<<   作成日時 : 2015/10/29 07:29   >>

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★日本語★
問題:本日は牛にまつわる諺について考えてみましょう。まずは題の問題。「暗がり(暗闇とも)から牛」は、辞書によれば「暗がりから牛を引き出す」の省略形だそうです。この場合の牛は黒毛和牛らしい。あるいは黒アンガス種と呼ばれている外来種かな。いずれにせよ黒い牛らしい。暗がりに黒い牛がいたらはっきり見えません。「物の区別がつかないたとえ」だそうです。
■もう1つ意味があって、「動作が鈍重ではきはきしないたとえ」としても使われるとのこと。「暗がりから牛」。たしかにモソッとしていて、なんだか切れのない感じですね。
■上方落語の「おたおたの太助」という噺(はなし)の中で使われていました。「…大工の左甚五郎という御方も、日頃はボォーツとしてなさったが、いざ仕事になると、皆を寄せ付けんはどの腕を見せたそうな。『暗闇から牛を引きずり出したような男』の方が、奥が深うて、値打ちのあるものじゃ」。なるほど。これは後者の意味でしょうね。そんな使い方をするものなのか。前者の意味で使われている事例は見つかりませんでした。
■なお、太宰治は「天狗」という文章…芭蕉と2人の門人の連句の感想文の中で次のように使っていました。「見事なものだ。滅茶苦茶だ。去来(きょらい)は、しすましたり、と内心ひとり、ほくほくだろうが、他の人は驚いたろう。まさに奇想天外、暗闇から牛である。仕末(しまつ)に困る。芭蕉も凡兆(ぼんちょう)も、あとをつづけるのが、もう、いやになったろう。それとも知らず、去来ひとりは得意である」。
■これは辞書には掲載されていない用法のように見えます。素人は、「瓢箪から駒」と勘違いしたのかと疑いたくなります。どんな意図で使ったのでしょうね。
■では、本番です。牛にまつわる5つの諺と、その説明が下に記されています。正しい記述はどれでしょうか? (正しい記述は無いかもしれないし複数かもしれません)
[い]「牛の角を蜂が刺す」は、「蟷螂(とうろう、カマキリ)の斧」と同じ意味である
[ろ]「牛も千里、馬も千里」とは、長い距離を移動するには、時間の差はあってもどのみち長い時間がかかる…という意味である
[は]「九牛の一毛」とは、希少価値のある宝物を意味している
[に]「牛に引かれて善光寺参り」は、人に連れられて思いがけずに面白い場所に行くことを意味している
[ほ]「鶏口となるも牛後となるなかれ」の「牛後」とは牛の肛門を意味している
(答えはずっと下↓ スクロールして下さい)

























★日本語★
正解:[に]と[ほ]が正しい
説明:[い]「牛の角を蜂が刺す」は、「蟷螂(とうろう、カマキリ)の斧」と同じ意味である(×)
■「牛の角を蜂が刺す」は、「牛は少しも痛痒を感じない。そこから、何も感じないこと、あるいは効果がないことのたとえ」だそうです。「蟷螂の斧」は「力の弱い者が、自分の力をかえりみず、強い者に立ち向かうことのたとえ」とのこと。
□牛の角と聞くと焼き肉屋を思い浮かべる人は健康な人でしょう。牛の角というと鬼を思い浮かべる人は年配の人かもしれません。鬼の角は牛の角らしい。鬼の褌(ふんどし)は虎の皮です。この扮装にはいわれがあるらしい。鬼門というのは北東、丑寅(うしとら)の方角だそうです。そちらから鬼や災いがやってくるらしい。で、牛と虎の格好を借りているようです。
◇*HP「十二支 方位 - Google 検索」
https://www.google.co.jp/search?q=%E5%8D%81%E4%BA%8C%E6%94%AF%E3%80%80%E6%96%B9%E4%BD%8D&hl=ja&rlz=1T4GGHP_jaJP523JP523&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ved=0CAcQ_AUoAWoVChMIzo-C-bz3xgIVCyWUCh0HFgsm&biw=1268&bih=620#imgrc=GXd06L-Avd9uwM%3A
[ろ]「牛も千里、馬も千里」とは、長い距離を移動するには、多少の差はあってもどのみち長い時間がかかる…という意味である(×)
■「牛も千里、馬も千里」とは、「早くても遅くても、また上手でも下手でも、行き着く結果は同じだから慌てるなというたとえ」だそうです。出世の遅れた人。習い事が上達しない人。婚期の遅れた人。その他、現状では遅れている人にとっては、慰めになる優しい言葉なのでしょう。
[は]「九牛の一毛」とは、希少価値のある宝物を意味している(×)
■「九牛の一毛」とは「九牛の一毛とは、多数のうち、きわめて少ない部分のたとえ。また、比較にならないほどつまらないこと」だそうです。
□牛を撫でた経験がないのでよくわかりませんが、細かい毛が無数に生えているものだそうです。九は「究」につうじて数がやたらと多いことを意味するようです。「無数(本数/頭)×やたらと多い(頭)」の中の1本の毛ですから、極めて少ない量・数になるわけですね。
□余談です。現代の中国語では粉糠雨(こぬかあめ)を牛毛雨と表現するらしい。雨粒の数が多いこと、毛筋のように細かいことの両方を表現しているらしい*1。
[に]「牛に引かれて善光寺参り」は、人に連れられて思いがけずに面白い場所に行くことを意味している(○)
■「牛に引かれて善光寺参り」は、「昔、長野の善光寺近くに住んでいた不信心で欲深い老婆が、さらしていた布を隣の家の牛が角に引っかけて走り出したのを見て、その牛を追っていくうちに善光寺にたどり着き、それがきっかけで度々善光寺に参詣するようになり、信仰の道に入ったという言い伝え」から生まれた諺だそうです*5。
□ただし、この老婆は欲深でケチですから、御賽銭は一切出しません。南無阿弥陀仏と唱えるだけです。善光寺の阿弥陀様も現金です。この老婆が亡くなったとき、極楽への推薦状を書かなかったとのこと。彼女は地獄に落ちたらしい。…以上は単なる憶測ですけど。
[ほ]「鶏口となるも牛後となるなかれ」の「牛後」とは牛の肛門を意味している(○)
■「鶏口となるも牛後となるなかれ」は、「大きな集団の中で尻にいて使われるよりも、小さな集団であっても長となるほうがよい」という意味だそうです。
□参考資料*1には次のように記されていました。「「牛後」は漠然と「牛の尻」を指すのではなく,「鶏の口」に対するものとして「牛の肛門」そのものを指すと解するのがよい。多くの中国刊の辞典類がそう解しているし、『史記』のこの部分の注釈や対訳も、そう解している。食物を摂取する「口」と排泄する「後」とを対比して用いているのである」。
□ひょっとしたら「人後に落ちない」などの決まり文句で使われる「人後」は人間の尻の穴なのかと思って調べてみましたが、そんな証拠は見つかりませんでした。
□「鶏口となるも〜」は、中国の戦国時代(紀元前403〜同221年)に使われていた諺だそうです。「史記」によれば、蘇秦(そしん)という遊説家が韓の宣恵王(せんけいおう?)を口説いたときに引き合いに出したらしい*1。当時は秦が強国であり、周辺の6国は不安定な情勢だったようです。蘇秦は6国が合従(がっしょう、合縦とも)して共同戦線を張ることを勧めたようです。秦は1国ずつ合従から離脱させる作戦を進めたらしい。最後には始皇帝による中国の統一が完成するようです。このときのやりかたが連衡(れんこう)だそうです。「秦と組んで隣国を滅ぼさないか」ともちかけるとのこと。なかなか賢いやりかたでしたね。
◆参考*1:書籍「ことばの散歩道U 日本語と中国語58話」初版10〜15頁、上野恵司(けいじ)著、ISBN978-4-86398-043-3、白帝社
◇*2HP「ウシ - Wikipedia」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%B7#.E6.97.A5.E6.9C.AC.E5.9C.A8.E6.9D.A5.E7.89.9B
◇*3書籍「続々復活珍品上方落語選集」初版36頁、4代目桂文我(ぶんが)著、ISBN4-88978-038-6、燃焼社
◇*4 書籍「故事名言ことわざ総解説」、自由国民社
◇*5HP「牛に引かれて善光寺参り - 故事ことわざ辞典」
http://kotowaza-allguide.com/u/ushinihikaretezenkouji.html
◇辞書「字通」白川静、平凡社
◇辞書「漢字源」藤堂明保、学習研究社
◇辞書「日本国語大辞典」小学館
◇Yahoo! J Dictionaries 大辞泉
◇Yahoo! J Dictionaries 大辞林

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
『牛も千里、馬も千里』・・・いい言葉ですね。
自動車ですっ飛ばしている連中に聞かせてやりたいですね。
まあ、連中は急いでいるのではなくスピードを出したいだけなんでしょうがね。
ねこのひげ
2015/11/01 08:18
コメントをありがとうございます。

 自動車ですっとばしている人たちは、何か訴えたいことがある場合が多いと聞きます。共通のメッセージは「僕に注目してよ」ということだという専門家もいます。
 実力はあるのに認めてもらえない。過小評価されている。誰も注目してくれない。そんな不満があるのかな。
 素町人にもおなじ不満がありますが、プールで泳いでいると消えてしまうので、いまのところ暴走行為までには至っていません。
(^^;)
ねこのひげ様<素町人
2015/11/01 19:55

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