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zoom RSS 貧乏を扱った狂歌。人に踏みつけにされるのはどんなもの?

<<   作成日時 : 2015/10/22 09:17   >>

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★日本語★
問題:日本人の9割は中流だと思っている。そんな話を聞いたことがあります。平成26年(2014年)の全世帯の貯金の中央値は1000万円を超えているそうです*1。みなさんちゃんと蓄えています。ところが、つい最近の報道では「生活が苦しい」と感じている人が6割を越えているとのこと*2。不思議なことです。中流で10万ドル近い貯蓄がありつつ「生活が苦しい」。他の国の人から見たら、わけがわからないかも。
■現代の貧乏、「生活が苦しい」人たちは相対的な貧乏かもしれません。隣は別荘を買ったのにうちはとても無理、貧乏だわ。そんな人は、いつの時代にも少なからずいます。国が豊かになっても減ることはなさそうです。
■生活保護を受けられずに餓死してしまうほどの貧乏。それこそがホントの貧乏、絶対的貧乏というものでしょう。昔風に言えば赤貧(せきひん)です。1億2700万人もいるわけですから、探せばそんな人たちもある程度はいるはずです。
■昔の貧乏は、まさしく赤貧でした。本日は現代日本ではあまり見られなくなってきた絶対的貧乏についての狂歌を取り上げます。狂歌の中にはなぜか貧乏を主題とした歌が少なくありません。一説には、鎌倉時代以降の貧乏な貴族たちが和歌とともに遊びで嗜(たしな)んだ趣味だったので、ついつい我が身の不遇を思い、貧乏を主題にした狂歌が生まれたとか。ホントかどうかは知りませんけど。
■ではクイズです。貧乏を主題にした下の狂歌の虫喰い部分に入る言葉を考え下さい。意味が通じるように入れられるでしょうか。
[い]「貧乏の ( )も次第に 長くなり 振り回されぬ 年の暮れかな」(漢字1字、道具)
[ろ]「貧乏を すれば悔しき ( )の 下から出ても 人に踏まれる」(漢字2字、衣類の部分)
[は]「貧乏を しても下谷の 長者町 上野の( )の 唸る音(うなるね)を聞く」(漢字1字、道具)
[に]「貧乏を してもこの家(や)に ( )あり 質の流れに 借金の山」(漢字2字、抽象名詞)
[ほ]「いつわりの ある世なりけり ( ) 貧乏神は 身をも離れず」(漢字3字、月の名前)
(答えはずっと下↓ スクロールして下さい)

























★日本語★
正解:各項目を参照してください
説明:[い]「貧乏の ( )も次第に 長くなり 振り回されぬ 年の暮れかな」の括弧に入る言葉は
■「貧乏の 棒も次第に 長くなり 振り回されぬ 年の暮れかな」。昔は、各月の晦日(みそか、月末)が商人、そして消費者の決算日です。ツケで買った米も醤油も味噌も野菜も魚も薪も炭も、月末ごとに現金で支払ったわけですね。そして大晦日は一年の最後の日として、溜まったツケを清算する日です。年の暮れに至って、ニッチもサッチも行かなくなった気分を表現した狂歌のようですね。
□江戸時代には、6月末日も清算の日として扱われたようです。この日はまた、「夏越しの祓い(なごしのはらい)」という行事のある日でもあります。「陰暦6月晦日(みそか)に、罪やけがれを除き去るため宮中および諸社で行われる祓の行事。茅(ち)の輪をくぐったり、人形(ひとがた)を作って身体をなでて清め、それを水に流したりした」とのこと。
□「たくわえも 皆つき果てて 一文も 今日は夏越の はらえだにせず」。支払いと祓いをかけた駄洒落入りの貧乏狂歌ですね。作者は朱楽菅江(あけらかんこう)という狂歌界の著名人です。
□「貧報(びんぼう)の 神もなごむや 借銭は 今日水無月(みなづき)の みそかはらへに」。こちらは石田未得(みとく)という江戸前期の俳人・狂歌師の作品とのこと。水無月は陰暦6月の別称ですね。こちらも支払いと祓いをかけています。(ホントは払っていないのに)夏越しの「祓い」をしたから貧乏神も気持ちを和ませている…という意味でしょうか。
[ろ]「貧乏を すれば悔しき ( )の 下から出ても 人に踏まれる」の括弧に入る言葉は裾綿
■「貧乏を すれば悔しき 裾綿の 下から出ても 人に踏まれる」。綿入れは昔の防寒具です。貧乏をしていると、裾がすり切れて綿が飛び出すことがあります。そうした綿は往々にして人に踏まれるのでしょう。同様に、貧乏な人は、下手(したて)に出ても人に侮(あなど)られ、踏みつけにされやすい。無念です。
◇*HP「綿入れ - Google 検索」(画像)
https://www.google.co.jp/search?q=%E7%B6%BF%E5%85%A5%E3%82%8C&hl=ja&rlz=1T4GGHP_jaJP523JP523&biw=1280&bih=632&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ei=9XeaVbT5GsG7mwXgz4SQBA&ved=0CAYQ_AUoAQ
[は]「貧乏を しても下谷の 長者町 上野の( )の 唸る音(うなるね)を聞く」の括弧に入る言葉は
■「貧乏を しても下谷の 長者町 上野の鐘の 唸る音(ね)を聞く」。下谷に長者町1丁目〜2丁目という小さな町があったらしい。そこに住んでいる人は、上野の鐘の音を聞いたのでしょう。もちろん鐘と金をかけた駄洒落です。貧乏狂歌ではありますが、「金が唸る」とは妙に景気のいい歌ではあります。
□なお、「金に恨みは数々ござる」という決まり文句は、そもそもは「鐘」のほうだったらしい。「京鹿子娘道成寺(きょうがのこむすめどうじょうじ)」という長唄の一節とのこと。若い僧侶安珍(あんちん)に恋した清姫の言葉らしい。「娘道成寺」は、歌舞伎舞踊としても有名だそうです*3。今では駄洒落の「金に恨みは…」のほうがよく使われますね。
[に]「貧乏を してもこの家(や)に ( )あり 質の流れに 借金の山」の括弧に入る言葉は風情
■「貧乏を してもこの家に 風情(ふぜい)あり 質の流れに 借金の山」。山水がある貧乏長屋の一部屋とは、なかなか洒落ています。貧乏を楽しむ心構えが素晴しい。
[ほ]「いつわりの ある世なりけり ( ) 貧乏神は 身をも離れず」の括弧に入る言葉は神無月
■「いつわりの ある世なりけり 神無月(かんなづき) 貧乏神は 身をも離れず」。神無月は陰暦の10月の別称ですね。毎年、神様たちのカンファレンスがあるらしく、出雲地方に全員集合するそうです。で、出雲地方では「神在月(かみありづき)」、他の地方では「神無月」と呼ばれます。このとき、「神送りの風」という強い風が出雲地方に向かって吹くという伝説があるらしい*4。
□そんな話になっているのに、貧乏神だけは出雲に行かず、我が家にいついて離れない。話が違うじゃんと言っているのがこの狂歌のようです。雄長老(ゆうちょうろう)という室町後期〜安土桃山時代に活躍した禅僧であり、かつ狂歌作者の作品だそうです。
□「貧しさに じっと手をみる 詩人たち 我らはじっと 通帳を見る」。これは今、即興でつくってみました。リアリティのみがあって詩情や機知に欠けるのは残念です。
□なお、作者名のない狂歌は、落語「掛け取り」の中に登場する狂歌です。6代目三遊亭圓生や10代目桂文治の「掛け取り」が、素町人としては好みです。
◆参考*1:HP「世代別の平均貯金額、負債額<2015年版>」
http://www.chokin-ginko.com/kiso/chokingaku.html
◇*2HP「生活「苦しい」、過去最高62.4%=平均所得は1.5%減―厚労省調査 (時事通信) - Yahoo!ニュース」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150702-00000105-jij-pol
◇*3書籍「名作歌舞伎全集19巻 舞踊劇集一」初版26頁、山本二郎/戸板康二/利倉幸一/河竹登志夫/郡司正勝監修、東京創元社
◇*4HP「秋の季語、「神送りの風」ってどんな風なの? 町人思案橋・クイズ集/ウェブリブログ」
http://blog.q-q.jp/201210/article_4.html

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
日本はアメリカに続く貧乏人の多い国だと聞いたことがあります。
年収が500万以下の人が80%とか・・・
その割にはベンツなどの高級車が都内に溢れかえっている気がします。
ねこのひげ
2015/10/25 07:03
コメントをありがとうございます。

 たしかに、ベンツやポルシェに乗る人は少なくないですね。
 我が家の近所では、イタリアのなんとかいう車高の低いスポーツカーに乗っている人もいます。でも、お宅を拝見する限りでは、そんなにお金持ちには見えないのですが。
(^^;)
ねこのひげ様<素町人
2015/10/25 08:26

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