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zoom RSS 文章の間違い探し。「元旦の夜に会おう」はなにがいけないの?

<<   作成日時 : 2014/11/06 19:45   >>

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★日本語★
問題:題の問題は、以前にもご紹介した、「おかしな日本語 正しい日本語」という本に掲載されていた間違いの例です*1。「元旦」は「元日の朝」を意味する言葉だそうです。「旦」という漢字を漢和辞書「字通」で調べると「タン、よあけ、あさ、あした」という字音・字訓があります。象形文字だそうです。雲の上に太陽が現れる形らしい。
▼銅器などの表面に記された「旦」の古い字体
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■「大辞泉」によれば、「『旦』は『朝・夜明け』の意であるから、『元旦』を『元日』の意で使うのは誤り。ただし、『元日』と同じように使う人も多い」とのこと。題の文は若干の問題をはらんでいます。言葉についての感覚や日本語の知識を疑われる可能性があるでしょう。「元日の夜に会おう」としておけば、疑問を持たれることもないはずです。
■では、さっそく本日の問題です。下の3つの文の誤りを指摘してください。(誤りのない文が含まれているかもしれません)。
[い]「遺体の収容はいぜん進んでおり、最終的には50名近い死者となるものと警察は推定している」(『読売新聞』昭50・10・21夕刊「メキシコで最新式地下鉄惨事」)
[ろ]「しかも、いたいけない少女である」(「ちょっと殺人を」講談社文庫・ミステリー傑作選3)
[は]「一揆は『暴動』とする」(「朝日新聞の用語の手引き」初版)
(答えはずっと下↓ スクロールして下さい)

























★日本語★
正解:各項目を参照してください
説明:
[い]「遺体の収容はいぜん進んでおり、最終的には50名近い死者となるものと警察は推定している」(『読売新聞』昭50・10・21夕刊「メキシコで最新式地下鉄惨事」)はいぜんが誤り
■「いぜん進んでおり」が間違っているようです。「依然」は「もとのままであるさま。前のとおりであるさま」だそうです。「状態がずっと変わらない形容」とのこと。「進んで」は変化を意味するのでしょう。なじみません。「遺体の収容は依然として進まない」ならしっくりきます。
□遺体の収容が進んでいる場合は、「遺体の収容は順調に進んでおり」とすべきだそうです。痛ましい事件の処理に「順調」という表現はふさわしくないと考えるなら、「遺体は次々に収容されており」としたほうがいいらしい。たしかに、これなら不自然さは一掃されますね。
[ろ]「しかも、いたいけない少女である」(「ちょっと殺人を」講談社文庫・ミステリー傑作選3)はいたいけないが誤りかも
■「いたいけない」という言葉は、「大辞泉」によれば、「幼気ない」という漢字表記であり、「いたいけである」という意味だそうです。注意書きがついていて、「いたいけない」と「いとけない」が混同されて生じた言葉とのこと。誤用ということなのかな。
□「大辞林」では、「〔形容動詞「いたいけ」の形容詞化。「ない」は程度がはなはだしい意を表す接尾語〕 いたいけである」とありました。「日本国語大辞典(小学館)」には立項されていません。
□参考資料*1では文法の面から誤りを指摘しています。「形容動詞の語幹、たとえば『朗らか、健やか』に直接『ない』を付けて『朗らかない、健やかない』とは言えない。『いたいけ』も同様、直接『ない』を付けることはできない」とのこと。「大辞林」説の否定かな。
□「いたいけない」は誤った言葉遣いなのでしょうか。ちょっと気になるのは大作家、近松門左衛門(もんざえもん)先生も使っていることです。大作家の作と言われる「井筒業平河内通(いづつなりひらかわちがよい)」という歌舞伎の脚本に、「いたいけない」という言葉が見られます。御姫様のおつきの女の台詞です*2。なお、歌舞伎とはいっても、近松門左衛門氏は最初は人形浄瑠璃の脚本として書いたらしい。現在では、歌舞伎にも取り入れられているようです。
□「いたいけない」が使われている文章は、「…お強いならお強いにしておきましょうが、いたいけない若草様をおいたわり遊ばすそのお心」というものです。若草というのは8歳の御姫様らしい。18歳の姉、井筒姫と双六(すごろく)をやるといつも若草が勝ちます。若草に仕える女たちは、若草姫はお強いと褒めそやします。井筒姫のお付きの女たちは、井筒姫はわざと負けているのだと主張します。上の台詞は、井筒姫に仕える女の1人が発する台詞です*2。
□歌舞伎全集の中では、「いたいけない」はここだけに見られます。その他にはありませんでした。「いとけない」や単独の「いたいけ」という表現はいくつもありました。落語の記録本なども調べてみましたが、「いたいけない」は見つけられませんでした。う〜ん、ひょっとしたら近松門左衛門先生もうっかり間違えたのかな。
[は]「一揆は『暴動』とする」(「朝日新聞の用語の手引き」初版)はこの規定そのものが誤り
■Wikipediaの一揆の項、あるいは参考資料*1の「おかしな日本語 正しい日本語」によれば、一揆=暴動ではありません。一揆≒暴動でもないようです。
□一揆という言葉は、本来は「心を1つにする、道を1つにする」という意味らしい。Wikipediaの一揆の項には次のように記されています。「中世後期の日本社会は、下は庶民から上は大名クラスの領主達に至るまで、ほとんど全ての階層が、自ら同等な階層の者と考える者同士で一揆契約を結ぶことにより、自らの権利行使の基礎を確保しており、正に一揆こそが社会秩序であったと言っても過言ではない」*3*5。
□これを信ずるとすれば、一揆=同業者組合。あるいは、一揆=地域住民の集団。こうした式は成り立つようです。一揆を結んだ者たちが自分たちの利益のために立ち上がること。ときには実力行使が行なわれること。それが、時代劇で見られる一揆ですね。
□一方、暴動は、「群集が暴徒となって騒動を起こし、社会の安寧を乱すこと」と「大辞泉」には定義されています。「大辞林」では「徒党を組んで社会秩序を乱す行動」と言っています。「暴動」には「心を1つにして自分たち集団の利益を主張する」という要素が欠けています。
□一揆=暴動。この新聞社が何を思ってこんな言葉遣いを勧めているのか。わかりません。不思議です。この用語の手引きには改訂版もあってそちらでは「歴史上の事件は別」と注記されているそうです。重ね重ね不思議です。われわれの知る一揆はすべて歴史上の事件です。知られているうちでいちばん新しいと思われるアドルフ・ヒトラーのミュンヘン一揆ですら1世紀近く昔です*4。この手引きはいったい何を言っているのでしょうか。
□現代でも昔の一揆に似たことはあります。新聞社の組合が賃上げ闘争をする。「同じ立場の者が心を1つにして自分たちの利益のために立ち上がる」わけですから、これも本来の定義でいえば一揆のうちでしょう。この場合には「新聞社に雇用されている者たちが暴動を起こした」と書くべきなのかな。誤った規定と言わざるをえません。
◆参考*1:書籍「おかしな日本語 正しい日本語」、土屋道雄著、ISBN4-7601-2279-6、柏書房
◇*2書籍「名作歌舞伎全集21 近松門左衛門集二」初版321頁、山本二郎/戸板康二/利倉幸一/河竹登志夫/郡司正勝監修、東京創元社
◇*3HP「「一揆」ほど誤解されている言葉はない? 町人思案橋・クイズ集/ウェブリブログ」
http://blog.q-q.jp/200707/article_19.html
◇*4HP「ミュンヘン一揆 - Wikipedia」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%B3%E3%83%98%E3%83%B3%E4%B8%80%E6%8F%86
◇*5HP「一揆 - Wikipedia」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%80%E6%8F%86

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
いたいけないという言葉は、けっこう使われている気がしますね。
違和感を感じるか感じないかで年齢がわかるのかもしれませんね。
ねこのひげ
2014/11/09 08:32
コメントをありがとうございます。

 WORDの校閲機能でも「いたいけない」は文句を言われませんし、ATOKも「誤り」という指摘はしません。使えちゃうわけですから、使っちゃう人も少なくないのかな。

 「いたいけない」は、無理に変換すると「痛い毛無い」です。素町人の頭になにか物がぶつかると「痛い、毛無い」です。それで最近は帽子を愛用しています。まぁ「さむいけない」のほうが帽子着用の理由としては大きいかもしれませんけど。
(^^;)
ねこのひげ様<素町人
2014/11/09 10:03

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