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zoom RSS 患者を救った名判決は誰のもの?

<<   作成日時 : 2014/08/27 07:22   >>

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★歴史★
問題:江戸南町奉行をつとめたある人物の逸話です。「明良洪範(めいりょうこうはん)」という江戸中期に成立したといわれる逸話集に掲載されているらしい。
■医師と患者の間で揉め事(もめごと)があったそうです。医師の主張は、「金5両の約束で病人を全快させたがまだ治療代を払ってくれない」。患者のほうは、「5両で頼んだのは事実だが、全快のうえで渡すという約束だった。今はまだ全快していないので渡さないのだ」と反論します。
■患者の面体(めんてい)をみると、爛れ(ただれ)が少し残っており、全快したとは思われません。でも奉行は、「医師が全快したと言っているのだから約束の治療代を支払うように」と男に命じたそうです。男は次のように答えたらしい。たとえ全快していたとしても、長い間の闘病生活で暮らしが立たない。すぐには払えない。私的医療保険も公的健康保険もない時代ですから、まぁ、男の言い分も当然ですね。現代アメリカにおいても「自己破産の6割は医療費が原因」という報道を耳にしたことがあります*3。
■奉行は、「その苦労はわからぬではないが約束は約束だ。これから奉公をし、その給金を医師への返済にあててはどうか」と勧めます。男は、こんな病のある者を誰が雇ってくれましょうかと言います。奉行は医師に向かって、「そのほうも治療代は受け取りたいであろう。どうだろうか、この男の請け人(うけにん、保証人)になってどこかに奉公させたら」と持ちかけます。すると医師は、「こんな汚らしい面体の者を誰が召し使うでしょうか」と口をとがらせます。
■そのとき、奉行の顔つきが変わります。医師を睨(にら)んで強い口調でこう言います。「そのほうは最初は病を治したと言い、今度は汚らしい面体とは、ひどく矛盾したことを言うではないか。本当に全快させたのなら、汚らしいことはあるまい。汚らわしいのなら全快ではない。そのほうは、病人がだんだん貧しくなっていくのを見て、1日も早く治療代だけは取ってしまおうという魂胆にみえる。全快でもないのに全快したと言い張ったのであろう。医師を業としながら、不心得者である」。
■叱られちゃった医師は、5両は取り損ねましたし、名主五人組預けという処分を受けてしまったそうです。患者は救われましたね。なお、「預け」は江戸においては手鎖を掛けられて一定期間の拘禁状態に置かれるようです*2。軽い刑ではあるのでしょうが、医師の評判は地に堕ちたと思われます。
■ところでこの判決を言い渡したのは南町奉行をつとめた次の誰でしょうか?
[い]渡辺大隅守綱貞(おおすみのかみ つなさだ)
[ろ]大岡越前守忠相(ただすけ)
[は]鳥居甲斐守忠耀(ただてる、水野忠邦の子分)
[に]跡部能登守良弼(よしすけ、水野忠邦の実弟)
[ほ]遠山左衛門尉景元(さえもんのじょう かげもと、遠山の金さん)
(答えはずっと下↓ スクロールして下さい)

























★歴史★
正解:[い]渡辺大隅守綱貞(おおすみのかみ つなさだ)
説明:名奉行というと大岡越前や遠山の金さんの名前があがります。でも、それ以外にも、人々を唸らせるような名判決を下した人が少なからずいたようです。渡辺綱貞氏もそんな1人だったらしい。ナベサダと呼ばれて人々に愛された奉行…かどうかは知りませんけれど。万治(まんじ)4年(1661年)から寛文(かんぶん)13年(1673年)まで、第4代将軍徳川家綱の治世で南町奉行をつとめた人のようです*4。
■医師と奉行の逸話をもうひとつ。江戸時代の初期、元和(げんな)5年(1619年)〜承応(しょうおう)3年(1654年)に京都で所司代を務めた板倉重宗(しげむね)が主人公です。京都所司代は江戸における町奉行に似て、警察や裁判所の役割も果たした役所らしい。
■あるとき、医師が板倉重宗のもとに訴え出てきたそうです。「夜中に男が訪ねてきて急病人がいるのですぐに診てくれといい、準備された駕籠に乗せられてどことも知れぬ山の中に連れて行かれました。洞窟の中にいる頭領が病気なので治療せよとのことです」。
■頭領は美しい夜具で寝ていたらしい。外傷だったようです。医師は診察して処置します。早く帰りたかったが5〜6日逗留させられたらしい。傷がよくなってきたらまた駕籠に乗せられて帰ったようです。「なにしろ往復とも真夜中だったので、どこを通ったのかまるでわかりません。でも、あれは間違いなく盗賊の巣窟です」。
■「何か覚えていることはないか」。「特別のことはありません。ただ、ぶっぽうそう、という鳥の鳴き声を耳にしました」。重宗は頷(うなず)きます。「それでわかった。古い歌に、『鷲尾(わしのお)の 山の奥にも 人ぞ住む 仏法僧(ぶっぽうそう)の 鳴くに付けても』というのがある。お前が連れて行かれたのは、きっと鷲尾の山中だろう」。捕り手の者が手配され、やがて盗賊たちは捕まったそうです。こちらは「名将言行録(めいしょうげんこうろく)」という幕末から明治にかけて成立した書籍に記されているお話とのこと*1。
◆参考*1:書籍「江戸逸話事典」初版135〜137頁、逸話研究会編、新人物往来社
◇*2HP「預 (刑罰) - Wikipedia」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A0%90_(%E5%88%91%E7%BD%B0)
◇*3HP「アメリカの自己破産の6割は医療費が原因…。海外旅行先の高額な医療費に気をつけよう!|知らなかったでは損をする!医療費節約の裏ワザ|ダイヤモンド・オンライン」
http://diamond.jp/articles/-/42401
◇*4HP「町奉行 - Wikipedia」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BA%E5%A5%89%E8%A1%8C#.E4.B8.80.E5.A5.89.E8.A1.8C.E6.89.80.E6.99.82.E4.BB.A3

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
『ベニスの商人』のような話ですね。
昔は、けっこう粋な計らいする奉行が多かったようですね。
現在の奉行たちは、頭の固いのが多いようでありますが・・・
ねこのひげ
2014/08/31 08:35
コメントをありがとうございます。

 昔のほうが面白い判決が多いような気もしますね。「三方一両損」、「大工調べ」、「帯久(おびきゅう)」などのように落語のネタにされるような判例がありました。
 現代では、裁判官が脚光を浴びるような小説や映画はあまり聞きませんね。
(^^;)
ねこのひげ様<素町人
2014/08/31 20:19

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