町人思案橋・クイズ集

アクセスカウンタ

zoom RSS 漢検準一級程度の四字熟語。「衣錦夜行」とはどんな意味なの?

<<   作成日時 : 2013/10/07 07:11   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 2

画像
★日本語★
問題:漢検準一級、かなり難易度の高い四字熟語の問題です。職場や茶の間で使われる単語ではありません。使用場所は、教室や書斎に限られているのかな。
■題で取り上げた衣錦夜行は、「イキンヤコウ」と読みます。最近、飛行機や電車を思い切った意匠に塗るのが流行しています。期間限定だったようですが、東京急行(東急)には漫画「ワンピース」のデザイン電車があったらしい。
■先頭車両の運転席の前、電車の顔にあたる部分に「くのいち忍者」の顔が描かれている電車もあるらしい。こちらは三重県西部を走る伊賀線という路線の車両だそうです。伊賀忍法をマスターしたくのいちなんでしょうね。
■同様に、夜行列車もおしゃれをしてみようじゃないか。デコトラみたいに飾った夜行列車もオツなものだぜ。これこそ衣錦夜行さ…という推測は、少し外れています。
■衣錦夜行とは、「立身出世をしても故郷に錦を飾らなければ、華やかな衣装を着て夜歩くようなもので、誰も気付かないこと」だそうです。衣繍夜行(イシュウヤコウ)とも言うらしい。
■現代のように情報化社会ならば、新聞や雑誌で活躍ぶりを知り、「アイツも偉くなったものだなぁ」なんて故郷の人にも感心してもらえるわけですね。ご両親も鼻が高い。ところが昔の日本でも中国でも、情報の伝達が多く口コミによっていた時代には、皇帝になったら別でしょうけれど、科挙に合格したとかどこどこの知事になったぐらいでは、故郷の人びとにはなかなか伝わらない。父や母も胸を張りにくいのでしょう。
■故郷に錦を飾るというのは、昔の人の共通の喜びだったようです。似たような言葉で「衣錦の栄(イキンのエイ)」という言葉があるそうです。欧陽脩(オウヨウシュウ)という北宋時代の政治家・文人の文章に出てくるらしい。「富と地位を得て、錦の衣服を着て故郷に帰る名誉」という意味だそうです。青雲の志を持って都会に出るのは、衣錦の栄を得るためのようですね。
■まるで余談ですが、落語にも「故郷に錦」という演題があります。一種のバレネタです。母親と息子との近親相姦を扱っています。たしかに故郷ではありますけど。
■では、難易度の高い四字熟語の問題に挑戦していただきましょう。次の四字熟語とその説明のなかで正しいものはどれでしょうか? (正しいものは無いかもしれませんし、複数かもしれません)
[い]「夷険一節」とは、万里の長城を越えてくる侵略者たちは、ひとたび荒らしたかと思うとまた潮が引くように去っていくという意味がある
[ろ]「一望千傾」とは、見渡す限り山また山という山国を表す言葉である
[は]「一蓮托生」とは、善行をした者たちが極楽の同じ蓮の葉の上に生まれ変わることを意味している
[に]「一顧傾城」とは、絶世の美女を表す言葉である
[ほ]「運否天賦」とは、運とかツキというものは生まれつきであり、努力しても変えることはできないという意味である
(答えはずっと下↓ スクロールして下さい)



























★日本語★
正解:[は]と[に]が正しい
説明:[い]「夷険一節」とは、万里の長城を越えてくる侵略者たちは、ひとたび荒らしたかと思うとまた潮が引くように去っていくという意味がある(×)
■「夷険一節」は「イケンイッセツ」と読むそうです。「夷険」は、危険な夷(えびす)という意味ではないようです。「日本国語大辞典(小学館)」によれば、「土地の平らなこととけわしいこと、順境と逆境」という意味らしい。
□「夷」という漢字は、常用漢字表にはありません。漢和辞書「字通」によれば、「イ、えびす、たいらか、きずつく」という字音・字訓があるそうです。そもそもは象形文字であり、人が座る姿を模写しているらしい。夷人の座り方を示しているとのこと。で、夷というのは東方の野蛮人ということだそうです。中国から見て東方というのは朝鮮かな。日本かな。
□「一節」というのは「イッセツ」です。「ひとふし」ではありません。「♪逃げた女房に未練はないが」の一節太郎とは無関係のようです。一節は節を曲げないという意味らしい。自分の信念を通すことだそうです。で、「夷険一節」では、「順境にあっても逆境にあっても信念を曲げない」という意味になるようです。立派なことではありますが、なかなか難しいことですね。
[ろ]「一望千傾」とは、見渡す限り山また山という山国を表す言葉である(×)
■「一望千傾」は「イチボウセンケイ」と読むそうです。「一望」は、「一目で見渡す」ことですね。「スカイツリーからは関東平野が一望できる」などと使われます。実際には東京都の23区ぐらいは余裕で一望できるかもしれませんが、関東平野の隅のほうまでは見えないはずですけど*3。
□「千傾」の「傾」は古い中国の面積の単位だそうです。現代でいえば約182アール=1万8200平方mとのこと。正方形でいえば1辺が135mの真四角な土地は182アールであり、1傾ぐらいらしい。
□あわせて「一望千傾」は、「一目でかなたまで見渡せる広々とした景色」という意味になるようです。しつこいようですが、1000傾は約18万2000アールであり、1820ヘクタールです。1辺4266m、すなわち4.266km四方ぐらいの面積になります。このぐらいの広さならば、関東平野にはいくらでもありますね。北海道に行けばもっとずっと広いところがありそうですけど。
[は]「一蓮托生」とは、善行をした者たちが極楽の同じ蓮の葉の上に生まれ変わることを意味している(○)
■「一蓮托生」はご承知のとおり「イチレンタクショウ」と読みます。現在では、「結果はどうなろうと、行動や運命をともにする」の意味で使われることが多い。運命共同体ですね。
□「大辞泉」などによれば、そもそもは仏教の用語だそうです。「死後、極楽の同じ蓮華の上に生まれること」を意味するらしい。現代では、どちらの意味で使っても間違いではないようです。
□明治時代には、仏教の言葉として使われている例が見られます。「東京曙新聞明治8年6月23日号」の記事では、自害した妻の後を追う夫の言葉として、「今はこの世にのぞみなし、死出の小道のふもと路にさぞ我が妻の待ちわびん、未来はかならず一蓮托生、ナムアミダブツ助けてたべ」という台詞を掲載しています。この場合は、極楽の蓮の葉の上で再び一緒になるという意味なのでしょう。
□科学雑誌によれば、スイレン(睡蓮)科のオオオニバスという種類が世界最大の水草の葉であり、直径が2mぐらいになるそうです。何人もの人が「一蓮托生」できるのかなと思いきや、そこは地上のお話です。極楽とは異なるらしい。浮力があまりありません。45kgの人が乗っても沈まないとのことですが、70kgの人は駄目なようです。男女で乗れば、どんなに皮下脂肪の薄いカップルでも合計70kgぐらいにはなるでしょう。ブクブクブク。一蓮托生どころか、あえなく土左衛門になってしまう可能性があるようです。
[に]「一顧傾城」とは、絶世の美女を表す言葉である(○)
■「一顧傾城」は「イッコケイセイ」と読みます。「傾城」は「傾国」と同じような意味です。城を傾けるか国を傾けるか。城主か君主を夢中にさせる美女のことです。
□「一顧」は「ちらっと見る」ことです。近頃では「チラミ」と略して表現するようですね。「美女がちらりと見るだけで君主が夢中になり、国を滅ぼしてしまう…そんな絶世の美女」が、一顧傾城だそうです。
□江戸時代には、吉原や島原その他遊郭に勤務する接客業の女性たちも傾城と呼ばれました。「傾城の 恋はまことの 恋ならで 金もってこいが 本当(ほん)の恋なり」という狂歌みたいなのがあるそうです。「恋ならで」は「恋ではなく」の意味ですね。この狂歌は現代のキャバクラその他の風俗業の諸姉にも通用しそうです。
[ほ]「運否天賦」とは、運とかツキというものは生まれつきであり、努力しても変えることはできないという意味である(×)
■「運否天賦」は「ウンプテンプ」と読みます。「運のよしあしは天が決めるということ」ですね。「努力しても云々」というほどの意味はありません。
□単純に「運を天に任せる」という意味でも使われます。この場合、「一か八か」とおなじ使い方らしい。「井戸ほりは うんふてんふの 札を入れ」という川柳があるそうです。井戸を掘る仕事は入札制だったのかな。江戸時代なので濁点や半濁点を省いて清音とおなじ表記になっています。
◆参考*1:書籍「本試験型 漢字検定準1級試験問題集09年版」成美堂出版編集部編、ISBN978-4-415-20422-2、成美堂出版
◇*2HP「文化庁 | 常用漢字表の内閣告示等について | 「常用漢字表」(平成22年内閣告示第2号)」
http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/kokujikunrei_h221130.html
◇辞書「字通」白川静、平凡社
◇辞書「日本国語大辞典」小学館
◇Yahoo! J Dictionaries 大辞泉
◇Yahoo! J Dictionaries 大辞林
◇*3HP「富士山頂やスカイツリーからはどのぐらい遠くまで見ることができるの?」
http://blog.q-q.jp/201007/article_25.html
◇*4雑誌「直径2mをこす巨大な葉を一週間で広げるオオオニバス」Newton(ニュートン)1310月号68頁、担当編集者向井伸生、ニュートンプレス

ぬけられます→日本語雑学クイズ一覧

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
太公望なども夷と呼ばれていた異民族だったんですが、その子孫たちが中国人と名乗って、中国政界を牛耳っているのが面白いですね。
古代において本当の中国と呼ばれていたのはいまの中国の10%程度のところだったんですがね。
ねこのひげ
2013/10/09 03:03
コメントをありがとうございます。

 なるほど。おなじ大陸の人が夷と呼ばれ、少し下に見られていたわけですね。
 われら地元住民は、おなじ区内に住む恵比寿の人々を見下げたりはしません。単にうらやましがるだけです。

 中華の範囲が「いまの中国の10%程度」とは驚きました。土地は広いけれど、了見は狭いのかな。
(^^;)
ねこのひげ様<素町人
2013/10/09 07:38

コメントする help

ニックネーム
本 文
漢検準一級程度の四字熟語。「衣錦夜行」とはどんな意味なの? 町人思案橋・クイズ集/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる