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zoom RSS 井原西鶴「好色五人女・八百屋お七」からの読み問題。「羽二重」はなんと読むの?

<<   作成日時 : 2013/07/01 06:16   >>

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★日本語★
問題:井原西鶴(さいかく)の小説「好色五人女」は、名前から想像すると現在でいうポルノ小説かなとも思われます。でも先入観をもって読まれたかたは期待を裏切られることでしょう。あまり好色ではありません。今の感覚でいえば、週刊誌などの実話小説よりさらにエロ度が低いですね。
■好色と呼ばれた5人の女性のうちの1人、八百屋お七のお話も、まるでエッチではありません。むしろ純愛物語のように見えます。助平な描写はほぼゼロです。
■読んで驚いたのは、お七の恋人吉三郎(きちさぶろう)の妙ちきりんな設定です。落語では寺の小姓とされていたお七の彼氏でしたが、西鶴のお話では居候のような立場になっています。吉三郎は満15〜16歳ぐらいのようです。いい男であり、男色関係の兄分にカマを掘られていたらしい。兄分が北海道の松前に出かける用事ができます。連れて行けないので、駒込吉祥寺の和尚に預けていったそうです。大火を避け、家族ぐるみで吉祥寺に避難してきたお七と出会い、悲恋が始まるようです。吉三郎はカマは掘られていましたが、女性も好きになれるタイプだったようです。いわゆるバイなのかな。
■そういえば、十返舎一九のベストセラーかつロングセラー小説「東海道中膝栗毛」の主人公、弥次さん喜多さんもホモの関係でしたね*3。江戸時代には、いまよりずっと性に対しておおらかだったのかもしれません。
■ともあれ、好色五人女・八百屋お七からの読み問題です。次の漢字・熟語はなんと読むでしょうか。今回は、参考資料*1の原文の振り仮名を正解とします。
[い]俄
[ろ]上臈
[は]羽二重
[に]衣桁
[ほ]大晦日
(答えはずっと下↓ スクロールして下さい)



























★日本語★
正解:各項目を参照してください
説明:[い]俄はにわかと読む
■俄は、「物事が急に起こるさま」だそうです。あるいは「かりそめ、一時的であるさま」とのこと。「俄に地震が起こり、家が倒壊したので、俄に小屋を建てて住んだ」と使えるようです。
□「一天俄にかき曇り…」という慣用の表現があります。一天は「空一面」だそうです。大気が不安定な状態なのかな。そこで降ってくる雨が俄雨ですね。
□「俄には信じがたい」という慣用の表現もあります。あまりの意外な事態で、しばらくは気持ちの整理がつかない…といった意味です。
□「俄」という漢字は常用漢字表には掲載がありません。漢和辞典「字通」によれば「ガ、にわか、かたむく」という字音・字訓があります。「俄然(ガゼン)」という熟語をつくります。「にわかなさま」ですね。「一発まぐれのパンチが当たったら、俄然攻勢に出て、とうとうKOに持ち込んだ」なんて使われます。
□「好色五人女・八百屋お七」では次のように使われていました。「…『うらめしや、今寝温もる間もなく、飽かぬは別れ、世界は広し、昼を夜の国もがな』と、俄に願ひ、とても叶はぬ心を悩ませしに…」。初めてふたりで夜を過ごした翌朝のお七の言葉です。「昼を夜の国もがな」は、「昼も夜のままの国があればいいのに」という意味だそうです。急にそんな願いをいわれても、仏様としては困るわけでしょうね。
[ろ]上臈はジョウロウと読む
■上臈は、「地位・身分の高い人」だそうです。女性にも男性にも使われるようです。大奥の女中の職名にも上臈というのがあるらしい。吉原の遊女にも使われるとか。反対語は下臈(げろう)です。われわれ町人は、女郎とか下郎という言葉はよく知っています。でも上臈とか下臈という言葉とは縁が薄くてあまり耳にしません。
□「臈」という漢字は、常用漢字表には掲載がありません。漢和辞典「字通」によれば「ロウ、まつり」という字音・字訓があります。本来は、「冬至のあとで歳を送るまつり」の意味だったそうです。江戸時代より前では、高僧とか高位の女官とかに使われていたらしい。年を重ねた人の意味から階級が上位の人へと意味が変化したのかな。年功序列ならば、年配の人のほうが階級が上になりますね。
□「好色五人女・八百屋お七」では次のように使われていました。「いかなる上臈か、世を早うなり給ひ、形見もつらしと、この寺に上り物か」。避難先の吉祥寺で立派な着物を見たお七の言葉です。どんな高貴なお方が若死に遊ばして形見に残されたのだろうか。形見として持っているのも辛いので、寺に寄進されたのだろうか」といったような意味らしい。ここでは、単純に身分が高い人(の娘さん)という意味のようです。
[は]羽二重ははぶたえと読む
■羽二重は、通信関係の用語「全二重/半二重」とは無関係なようです。チョウチョやトンボのように、羽が二重になっている昆虫という意味でもありません。布地の種類です。「肌触りがよく、つやのある絹織物」です。礼服や羽織、裏地などに使われるとのこと。高級品です。ちなみに、羽二重は英語でもhabutaeと呼ばれるらしい。
□「羽二重のような」はおおむね褒め言葉です。ネットで調べてみたら、高級トイレット・ペーパーに羽二重ロールというのがありました。肛門へ肌触りがいいのかな。衆道に励んでいた吉三郎君に使わせてあげたいですね。
□「好色五人女・八百屋お七」では次のように使われていました。「黒羽二重の大振袖に、梧・銀杏のならべ紋、紅裏を山道の裾取り、わけらしき小袖の仕立て、焼(た)きかけ残りて…」。偶然に見た素晴らしい着物から持ち主を推察する場面です。羽二重は振り袖にも使われるわけですね。振り袖ですから、若い女性の物だったのでしょう。「焼きかけ残りて」は香のかおりが残っているという意味らしい。
[に]衣桁はイコウと読む
■衣桁は「エコウ」とも読みます。「室内で衣類などを掛けておく道具。木を鳥居のような形に組んで、台の上に立てたもの」だそうです。
□「桁」という漢字は常用漢字表には掲載がありません。漢和辞典「字通」によれば「コウ、けた、ころもかけ」という字音・字訓があります。「柱に渡した横木」がそもそもは「けた」だそうです。サッカーのゴールでいえば左右のポストの上に渡しているバーが「けた」なのかな。日本では位取りの意味で使われることも多いですね。
□「好色五人女・八百屋お七」では次のように使われていました。「衣桁の陰にかくして、さらぬ有様にて」。やがてお七は家に戻り、吉三郎と会えなくなります。慕情の募る吉三郎は行商人に化けてお七の家をたずね、なんとか入り込んだのですが、そこに留守をしていた親が戻ってきてしまいます。お七は吉三郎を衣掛けの陰に隠し、そらっとぼけて親と会話するという場面です。
[ほ]大晦日はおおつごもりと読む
■大晦日は、「おおみそか」ですね。昔の旧暦ですからこの日は新月であり、真っ暗の闇です。
□「晦」という漢字は常用漢字表には掲載がありません。漢和辞典「字通」によれば「カイ、くらい、つごもり」という字音・字訓があります。「つごもり」は、「つもごり」とも呼ばれるらしい。新月で「月が籠もる」から「つきごもり」→「つごもり」となったのかと勝手に思っていました。「つもごり」という言葉もあるとすると、語源は別なのかもしれません。
□「好色五人女・八百屋お七」では次のように使われていました。「大晦日は思ひの闇に暮れて、明くれば新玉の年のはじめ」、大晦日の夜の暗いのと恋の闇をかけた表現のようです。
□お話の結末です。吉三郎に会いたい一心で火をつけた八百屋お七は、現住建造物等放火罪で死刑判決を受けます。すぐに品川区鈴ヶ森の刑場で火刑に処せられてしまいます。吉三郎は、兄分への義理の悪さもあってか自殺をはかりますが、周囲に止められます。やがて江戸に戻ってきた兄分ともども出家をしたとのこと。江戸時代でも、派手に法に反する行為をしたら鍵のかかった牢屋に入れられます。派手に道徳に反する行為をした場合には宗教の戒律のかかった檻に自ら入るのかな。吉三郎はそれでいいのでしょうが、兄分のほうはなんだか割りを喰った感じではあります。
◆参考*1:書籍「好色五人女」文庫初版、谷脇理史(まさちか)訳註、ISBN978-4-04-408201-7、角川学芸出版
◇*2HP「常用漢字表:文部科学省」
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/k19811001001/k19811001001.html
◇*3HP「弥次さん喜多さんの二人はホモだった?」
http://blog.q-q.jp/200706/article_77.html
◇辞書「字通」白川静、平凡社
◇辞書「日本国語大辞典」小学館
◇Yahoo! J Dictionaries 大辞泉
◇Yahoo! J Dictionaries 大辞林

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
そういえば、谷中霊園の近くに羽二重だんごの店がありますね。
なかなかうまかったです。
ねこのひげ
2013/07/02 00:58
コメントをありがとうございます。

 羽二重だんごは食べたことがありません。でも名前からして、柔らかそうで、美味そうですね。渋いぐらいに淹れた濃い煎茶で食べたい…と、つい妄想してしまいます。でも減量中だし、我慢しなきゃ。
(^^;)
ねこのひげ様<素町人
2013/07/02 13:24
八百屋お七は、純粋だと言えば、純粋な娘さん。年齢が、丙午(ひのえうま)でも有名人!お七(ひち)笑

淡谷のり子も丙午、、うちのばあちゃんといっしょ
Sadakun
2013/09/06 11:51
コメントをありがとうございます。

 そういえば丙午の女性にとっては不利な噂がありましたね。
 直近の丙午の年、昭和41年(1966年)もその影響なのか、直前の年に比べると40万人、直後の年に比べると50万ぐらい出生数が少ないとか。そんな迷信を信じる人がずいぶんいるんですね。
 次は平成38年(2026年)ですけど、やっぱり出生数は落ち込むのかな。
(^^;)
 
Sadakun様<素町人
2013/09/07 01:25
訂正しますね。淡谷のり子1907年生まれ。丙午ではなかった。

昭和41年(1966)は、丙午。手塚治虫「鉄腕アトム」の、天馬午太郎(うまたろう)群馬大ロボット工学博士。昭和41年の、午の刻、午のとき、午にすべて関係ありと設定。御茶ノ水博士が有名ですが、天馬博士もいます。小泉今日子と、同世代だけど
Sadakund
2013/09/10 09:49
コメントをありがとうございます。

 淡谷のり子女史は、喧嘩が強そうで丙午といわれても違和感はありませんね。
 厄年に前厄と後厄があるように、丙午にも後丙午があるのかな。 
(^^;)
Sadakund様<素町人
2013/09/10 23:57

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