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zoom RSS 北大路魯山人の文章「現代茶人批判」からの読み問題。「剽軽者」はなんと読むの?

<<   作成日時 : 2013/01/21 07:13   >>

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★日本語★
問題:北大路魯山人は、多芸多才の人です。篆刻家(てんこくか)であり、画家であり、陶芸家であり、書道家であり、そしてもちろん料理家であり美食家でした。篆刻というのは、「石・木などの印材に字を刻すること」だそうです。多くは篆書体という書体が用いられたところから、「篆刻」という言葉が生まれたようです。
■明治16年(1883年)に生まれています。江戸時代からあまり経っていないころの生まれなんですね。北大路魯山人が生まれたとき、父親は切腹したらしい。
■気の毒に魯山人は不義の子だったらしい。周囲の人が知るところだったようです。魯山人が生まれた直後、母親の配偶者は面目を失ってお腹に刃を突き立てたようです。
■江戸に近いことは近いのですが、それでも明治時代です。まさか大刀を構えた介錯人はいなかったでしょう。自殺幇助になっちゃいそうです。
■首をスパッと切ってもらえないと、割腹自殺はたいへんむずかしいのだそうです*2。即死しないらしい。刃先が背骨近くまで深く入り、腹部大動脈を切断すると、ほぼ即死だそうです。でも、そんなことは切腹をする多くの人は知りません。そうする技術もありません。
■どうなるか。多くの事例では、中途半端に小腸や大腸に傷がつきます。苦痛でそれ以上の作業ができなくなります。でも出血多量では死ねません。腸の内容物が流れ出て腹部を汚し、数日後に感染症、たとえば腹膜炎で亡くなる例が少なくないらしい。たいへん苦しい思いをするようです。魯山人の父親もそうだったのか。刃物を使って自殺する場合には、割腹自殺よりも頸動脈を切ったり心臓を突いたりするほうが確実で楽に死ねるようです。
■魯山人は6歳のころ養子に出されています。おそらく、当人も自分がどんな生まれなのか、知らされていたでしょう。その後の人生に大きな影響があったと思われます。それでも自暴自棄にはなりません。おのれを磨き続けます。ひとつの道どころかさまざまな道を極めて成功し、後の世に大きな影響を与えます。たいしたものですね。
■本日は、北大路魯山人の文章「現代茶人批判」からの読み問題です。この文章は松永耳庵(じあん)という茶の趣味人の発言をきっかけに、当時の茶人と作陶家に辛口の言葉を投げつけているものです。松永耳庵は、本名を松永安左エ門(やすざえもん)といいます。財界人であり、電力事業に生涯をかけた人だそうです。世間的には成功した大金持ちです。古今の名器を所有するコレクターとしても有名らしい。
■でも北大路魯山人の悪口は遠慮がありません。茶の趣味人、作陶家の現状を解剖するように丁寧に切り裂きます。半世紀経ったいま読んでみても、当時の茶器にまつわる状況が見えてくるようで、なかなか面白い文章です。
■では挑戦していただきましょう。「現代茶人批判」で使われている次の熟語・漢字の読みを考えてください。例によって青空文庫の振り仮名を正解とします。
[い]剽軽者
[ろ]要訣
[は]雅致
[に]風懐
[ほ]妄り
(答えはずっと下↓ スクロールして下さい)



























★日本語★
正解:各項目を参照してください
説明:[い]剽軽者はひょうきんものと読む
■剽軽者は、「ひょうきんな人」だそうです。当たり前だな。剽軽は、「気軽でおどけた感じのすること」だそうです。オレたちひょうきん族は、気軽でおどけた感じを売り物にしている人たちなんでしょうね。
□「軽」という漢字は常用漢字表では「ケイ、かるい、かろやか」という音読み・訓読みがあります。漢和辞書「字通」では「ケイ、キョウ、かるい、はやい、いやしい」という字音・字訓があります。「ひょうきん」の「キン」という読みはちょっと無理があるのかな。当て字なのかな。
□もともとは、昔の戦車の中で軽鋭なものをあらわした言葉らしい。それで車偏がついているようです。のちに軽快という意味が生まれてきたらしい。
□「現代茶人批判」の中では次のようにつかわれています。「その次に剽軽(ひょうきん)者として、両者の失敗をつぶさに見て取っているにもかかわらず、しからば乃公(だいこう)がと、またまた現われ出て来たのは久吉翁である」。乃公は一人称です。オレ・私の意味ですね。乃公達剽軽族は「オレたちひょうきん族」です。少し無理があるかな。
[ろ]要訣はヨウケツと読む
■要訣は、「物事の最も大切なところ」だそうです。奥義(おうぎ)、秘訣(ヒケツ)などと言い換えることができるようです。
□「訣」という漢字は常用漢字表には掲載がありません。漢和辞典「字通」によれば「ケツ、わかれる」という字音・字訓があります。たしかにケツはふたつにわかれています。そういう意味ではないのかな。
□永訣(エイケツ)という悲しい熟語をつくります。死に別れですね。宮沢賢治の詩「永訣の朝」は、妹との死に別れを描いています。あめゆじゅとてちてけんじゃ。「雨と雪をとってきてください」という意味の岩手方言だそうです。これが妹の最後の頼みらしい。短い詩です。でも、読み終わったとき、脈拍が少し速くなっているのがわかります。
□「現代茶人批判」の中では次のようにつかわれています。「茶を浅はかな考えで見ている人々、茶を志してみたい考えは持っていても元来素質を持たぬ人、天分なきゆえに縁の結べぬ人々、そのいずれかに当たっているはずの現今陶工に向かい、茶を知れ、さすれば名茶碗も生まれるぞ、世の名器を広く見よ、名器の要訣(ようけつ)が悟れるぞ、すべからく茶家に教われ、茶道精神が解せるぞ……と吹き込んで、それがどうなるものと松永さんは思っておられるのであろう」。松永氏の発言を批判するとともに当時の陶工に対する厳しい批判を放っています。
[は]雅致はガチと読む
■雅致は、「風流な味わい。上品な風情」です。雅趣(ガシュ、みやびなおもむき)と言い換えることもできるようです。
□「致」という漢字は常用漢字表では「チ、いたす」という音読み・訓読みがあります。漢和辞書「字通」では「チ、いたす、おくる、きわめる、おもむき」という字音・字訓があります。風致(ふうち)という熟語をつくります。「自然の風景などのもつおもむき」だそうです。風致地区では自然の景観を守るためにいろいろな規制があるのかな。
□「現代茶人批判」の中では次のようにつかわれています。「たとえ茶碗作る技能は陶工に譲るとしても、ちょっと物認(したた)めるその字がかつての名茶人の物したごとく無理をせぬ、品の良い雅致(ガチ)と風懐(フウカイ)を具(そな)えた見識あるものであるかどうか」。いまの茶人は風流を体現しない人たちだと、書道家としての目をもって当代の茶人を批判しているようです。
[に]風懐はフウカイと読む
■風懐は、「風流な心」だそうです。歴史で習った「懐風藻(カイフウソウ)」という漢文詩集を思い出す言葉です。詩集ですから風流な心は必要でしょうけれど、風懐という言葉と関係があるのかないのか。まるでわかりません。
□「風」という漢字は常用漢字表では「フウ、フ、かぜ、かざ」という音読み・訓読みがあります。漢和辞書「字通」では「フウ、かぜ、ふく、おしえ、ならわし」という字音・字訓があります。四方の方角の神々からのお使い・使者が風という考えがあるらしい。また、風が動くと虫が生まれるという古い考えもあるようです。「風」という漢字の中に「虫」の字が部品として含まれているのは、こうした古い俗信によるものかもしれません。
□「現代茶人批判」の中では、[は]の雅致と同様の文章の中でつかわれていました([は]の例文を参照してください)。
[ほ]妄りはみだ(り)と読む
■妄りは、「秩序を無視するさま。自分勝手であるさま」だそうです。また、「軽率に、また、度を過ごして物事をするさま」も妄りらしい。漢字の表記がいっぱいあります。「妄り」は「大辞泉」では先頭に書かれていました。猥り・濫り・漫りもみだりと読むようです。意味はどれもおなじらしい。
□「妄」という漢字は常用漢字表では「モウ、ボウ」という音読みだけです。漢和辞書「字通」では「モウ、ボウ、みだりに、いつわり、あやまる」という字音・字訓があります。
□妄想(モウソウ)というよく知られた熟語をつくります。「根拠もなくあれこれと想像すること」ですね。多少の妄想は精神衛生上も必要かもしれません。でも行き過ぎは困ります。有名芸能人に「愛していると告白された」と妄想する男女がしばしばいるようです。ファンの1人に過ぎないのに、「彼の子を身ごもっている」なんて週刊誌に告白したりします。単なる想像妊娠なのですが。この場合は妄想妊娠なのかな。
□「現代茶人批判」の中では次のようにつかわれています。「それが平気で茶道精神より脱線し、逸脱し、怪しき見解、妄(みだ)りにして低調なる行動を常として、なすところの所作は一から十までが嘘のかたまりであり、虚礼ならざるものはないとまでいってみても、あえて過言ではない今日のお茶、まことに笑うに堪えたる虚礼そのもののお茶、これが今日存在するいわゆるお茶である」。なんか、いいですね。北大路先生の意見の正否は知りません。でも、少なくとも歯に衣着せぬ発言、遠慮のない主張です。誰にも媚びていないように見えます。権力にも大衆にも媚びない言葉。地獄を知っている人だからこそ口にできる思い切った言葉なのかな。
◆参考*1:HP「北大路魯山人 - Wikipedia」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E5%A4%A7%E8%B7%AF%E9%AD%AF%E5%B1%B1%E4%BA%BA
◇*2書籍「ヒトはこんなことで死んでしまうのか」初版64〜66頁、上野正彦(まさひこ)著、ISBN4-7573-0254-1、インデックス・コミュニケーションズ
◇*3HP「松永安左エ門 - Wikipedia」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%BE%E6%B0%B8%E5%AE%89%E5%B7%A6%E3%82%A8%E9%96%80

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内 容 ニックネーム/日時
きのう、北野武さんと、石橋貴明さんが、浅草を散歩するという番組を観ましたよ。
「ひょうきん族」で有名になった時、浅草時代の師匠深見千三郎さんから電話があり「お前も有名になったな。たまには遊びに来いよ。」と言われ、遊びに行って、浅草で酒を飲んで、小遣いを渡して分かれた後「ひょうきん族」の収録をやっていたら、別れた直後に、アパートに帰った師匠が、寝たばこで焼死したというニュースを聞いて、ガックリしたそうです。
ねこのひげ
2013/01/21 07:55
確かに、茶道って、禅修行の一つなのかな?
最近、禅に学ぶみたいな本が出ているみたいで、現代人には、学ぶことも沢山有りそうだ。
茶道、華道、書道やるとなかなかいいもんだよね。
ブータ
2013/01/21 10:52
コメントをありがとうございます。

 酒を飲んだあとで収録(?)というのがいいですね。昔の西鉄ライオンズの豪傑たちを思い出します。ベンチはいつも酒臭かったとか。

 素町人の知人には、プログラマのくせにほぼアル中という変な人がいました。細心の注意を必要とする作業なのに、ウイスキー瓶を片手に仕事していました。仕事のできる人なのかどうかは知りませんけれど。
(^^;)
ねこのひげ様<素町人
2013/01/21 21:43
コメントをありがとうございます。

 残念ながら、茶道も華道も書道も真面目にやったことがありません。日本人にあるまじき怠け者ですね。
 地に足をつけて通った道は、主に歩道ばかりです。死ぬまでには一度は花道を歩きたいのですが、堅気の地味な人生です。きっと無理でしょうね。
(^^;)
ブータ様<素町人
2013/01/21 21:52
私も、どれも習って無いです。書道はともかく、茶道とか敷居も月謝も高くての〜。抹茶は、美味いんじゃがの〜。
ブータ
2013/01/21 23:03
コメントをありがとうございます。

 そうですね。抹茶に砂糖やガムシロを入れ、氷を浮かべて飲むのは旨いですよね。夏にはこたえられません。氷千家などと呼ぶ人もいるようです。
(^^;)
ブータ様<素町人
2013/01/22 09:25
氷千家ですか…。美味しそうです。
ブータ
2013/01/23 08:10
コメントをありがとうございます。
m(_ _)m
ブータ様<素町人
2013/01/23 08:17
初めまして、アマゾンでベストセラーになっている真説ニッポン伝説と日本人と言う本を読んだのですが1度読まれてみるのはいかがでしょうか?
漢字について目からウロコの事実が書かれていて興味深かったですよ。
著者は藤本 玄と言う人です。
佐藤真貴子
2013/03/01 20:31

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