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zoom RSS 「犬死」の意味で「棒」が使われる決まり文句ってなに?

<<   作成日時 : 2012/08/02 08:34   >>

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★日本語★
問題:日本でよく使われる決まり文句がいくつあるのか。勘定した人はいないでしょうが、おそらく千や二千ではないのでしょう。
■専門家ならすべての意味を理解し、正しく使えるかもしれません。我々非専門家は、ときどき使いかたを間違えます。決まり文句で表現すれば、「上手の手から水が漏れる」とでもいうのかな。自分を「上手」と持ち上げてはいけないかもしれません。「猿も木から落ちる」かな。猿は謙遜した言葉のようですが、木登りについては名人ですから、これもいけないのか。決まり文句の使いかたもなかなかむずかしいですね。
■本日は、知らないよりは知っているほうがいい決まり文句についてのクイズです。次の決まり文句はどんなものでしょうか?
[い]「犬死」の意味で「棒」が入っている決まり文句
[ろ]「時間の経過とともに楽しさが悲しさに変わる」という意味の決まり文句
[は]「沈黙は金」の意味で「花」を使う決まり文句
[に]「目」の褒め言葉。丸いという意味の決まり文句
[ほ]「違約の場合は多数回打つ」という意味の決まり文句
(答えはずっと下↓ スクロールして下さい)

























★日本語★
正解:各項目を参照してください
説明:[い]「犬死」の意味で「棒」が入っている決まり文句は命を棒に振るである
■まさか、「犬も歩けば棒にあたる」とお答えにはならなかったでしょうね。「犬」と「棒」は入っていますが、「死」が入っていません。「犬も歩けば車にあたる」ならいいのかって? それだと「死」は入るかもしれませんが「棒」が抜けます。
□棒に振るのは、絶好の機会や高い地位、あるいは人生そのものなど、値打ちのあるものが多いようです。なかでも命は、われら生命体にとってはいちばん大切なものです。ほっといてもいつかは失われます。自殺などなさって棒に振らないほうがいいでしょうね。
□棒に振るの語源は定説がないようです。店を持たずに野菜や魚などを売り歩く棒手振り(ぼてふり、棒手売りとも)に由来するという意見があります。天秤棒の前後に荷物をぶらさげて路地を売り歩く商人ですね。「行商だから安く買い叩かれて、労が多い割には、あまり繁盛しなかった」、「生涯を棒手振りでくらすので、人生を棒に振るといわれた」というお話です*4。
□残念ながらこれは落語学を学ぶ者には賛成しにくい意見です。たしかに当代桂米朝の「始末の極意」や十代目桂文治の「豆屋」には、たちの悪い客にいじめられる棒手振りが登場します。逆に、落語の枕では棒手振りの魚屋から二分(一両の半分)で初ガツオを購入する人たちが紹介されます。大工の月収が二両ぐらいだったころの話です。
□「唐茄子屋(政談)」という落語では、年配の棒手振りの八百屋さんが登場します。この人も決して人生を棒に振った人ではないようです。お金持ちではありませんが苦労人です。勘当された甥っ子の命を助けて再教育する気持の余裕はあります。ときどき吉原に遊びに行くぐらいのフトコロの余裕もあるらしい。棒手振りがおおむね低所得だったのは事実でしょうけれど、みんな堅気の商人です。自分の職業に誇りをもって生きていた人も多いと思われます。
□参考資料*1には、次のような説が紹介されていました。「江戸時代に俳譜師や狂歌師が門人の作品に点をつけてやるときに、駄作に対して棒を引いて印をつけたとある。ここから「棒」は、下手くそとか劣悪という意味を持つようになった。難読漢字に読み仮名をつけることを『ルビをふる』と言うのと同じく、あるものを駄目にすることを『棒に振る』と言うようになったという可能性もなくはない」。落語学校の生徒としては、こちらのほうが支持しやすいですね。
[ろ]「時間の経過とともに楽しさが悲しさに変わる」という意味の決まり文句は面白うてやがて悲しきである
■蕉翁の有名な俳句に「おもしろうて やがて悲しき 鵜舟哉(うぶねかな)」というのがあるそうです。参考資料*3によれば、「鵜舟が目の前で、花やかな篝火を焚きつつ活発な鵜飼を繰り広げる時、面白さはその極に達するが、やがて川下遠く闇の彼方へ消え去るにつれて、何とも言い知れぬ空虚な物悲しさだけが心に残る」という意味らしい。
□最初は面白くてたまらない。ところがしばらくするとだんだん悲しいものなっていく。みなさまにおかれましても経験がおありでしょう。同棲や結婚はその代表かな。長い苦痛にたえかねて思い切って離婚や離別をします。久しぶりの独身生活を再び襲うのが「面白うてやがて悲しき」です。人生いたるところに悲しみありです。
[は]「沈黙は金」の意味で「花」をつかう決まり文句はいわぬが花である
■なかなか味のある言葉です。露骨な発言すれば人を傷つけたり、恨みを買ったりします。だまっているほうが場は丸くおさまる。処世術といえばそれまでです。でも、住みにくい世の中を少しでも住みやすく工夫ではあります。
□「秘すれば花」という言葉もあります。こちらは金閣寺の親分、足利義満(よしみつ)と同時代を生きた能楽師、世阿弥の言葉らしい。西洋風の明示的なコミュニケーションとはことなり、我が国の情報伝達は暗示的である…なんていわれる元になった発言のひとつらしい。
[に]「目」の褒め言葉。丸いという意味の決まり文句はつぶらな瞳である
■東京五輪のマラソンで銅メダルを獲得し、のちに自殺する円谷幸吉(つぶらや こうきち)という選手がいました。遺書が紹介されることがあります。円谷選手がどれだけ周囲の人に感謝していたか。どれだけ競技に真剣に取り組んでいたか。どれだけ苦しんでいたか。涙なくしては読めません。
□話が脇道にそれました。「つぶらな」は「円な」と漢字では表記するらしい。もちろん常用漢字表の表外の読みではあります。
□ちょっと疑問が残ります。人間の瞳は、ほとんどの場合正円です。つぶらでない瞳はあまり見かけません。なぜ、つぶらな瞳が「可愛い目」という意味の褒め言葉になったのか。専門家に聞いてみたいところです。
[ほ]「違約の場合は多数回打つ」という意味の決まり文句は(指切り)げんまんである
■「げんまん」は漢字で「拳万」と表記するらしい。1万回も拳(こぶし)で殴るぞという物騒な、あるいは誇張のきつい表現です。「指切りげんまん うそついたら針千本飲〜ます」。素町人が子供だったころにも聞いた言葉です。
□吉原の遊女などは、約束をするときに起請文(きしょうもん)を書いたといいます。落語の「三枚起請」に登場する書類ですね。契約の履行を神仏に誓う文章が書かれているらしい。でも起請文の保証人は、いるかどうかはっきりしない神様です。違約の際の天罰もごくまれにしかあたりません。
□契約者甲も乙もそんなことはよく知っているわけですので、起請文より現実的な「指切髪切入黒子(ゆびきり かみきり いれぼくろ)」というのがあったらしい*1。年(ねん)が明けたら、つまり契約期間が過ぎてフリーになったらあんたの女房になるよという約束をするとき、指の先を少し切ったり、髪を少し切ったり、亭主候補の人物の名前を入れ墨したりしたそうです。それでも契約は往々にして守られなかったようですが。「年が明けたら あなたのもとへ きっと行くわね 断りに」という都々逸があるそうです。
◆参考*1:書籍「忘れていた日本の懐かし言葉」三田英彬監修、ISBN4-901679-06-6、サンガ
◇*2HP「物売り - Wikipedia」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%A9%E5%A3%B2%E3%82%8A
◇*3HP「おもしろうてやがて悲しき鵜舟哉」
http://www.ict.ne.jp/~sasa-mi/kyoutokuhi15.htm
◇*4HP「"棒に振る"由来は? − ことばおじさんの気になることば − NHK アナウンスルーム」
http://www.nhk.or.jp/kininaru-blog/125238.html

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
いつだったか、床屋に行ったとき、隣に座っている人の手が見えて、なにか文字が見えたので見たら、女性の名前が、親指と人差し指の間に掘ってあり、思わず顔をマジマジと見てしまいました。
80過ぎのご老人でしたが、女性と約束していたのかな?
ねこのひげ
2012/08/03 05:12
コメントをありがとうございます。

 なかなか粋なご老人ですね。

 落語の「佃祭」にも登場しますが、江戸時代には堅気の人たちも異性の名前は彫ったとききます。ご老人も、その文化を引き継いでいるのかな。
(^^;)
ねこのひげ様<素町人
2012/08/03 10:49

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