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zoom RSS 永井荷風の名作「墨東綺譚」からの読み問題。「稀覯本」はなんと読むの?

<<   作成日時 : 2012/03/19 07:21   >>

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★日本語★
問題:永井荷風(かふう)という作家をご存じだと思います。アメリカやフランスに留学し、「あめりか物語」、「ふらんす物語」などを発表しています。その他で有名な作品は「つゆのあとさき」とか「断腸亭日乗」、「すみだ川」などでしょうか。
■昭和12年(1937年)には「濹東綺譚(ぼくとうきたん)」を発表しています。タイトルではサンズイがありませんが、これは「濹」という漢字が第三水準であり、このブログのタイトル部分では使えない文字だからです。サンズイのない漢字で代用しています(口絵参照)。
■本日は、永井荷風の小説「濹東綺譚」からの熟語の読み問題です。次の熟語はなんと読むでしょうか?
[い]食麺麭
[ろ]陋巷
[は]稀覯
[に]芳譚雑誌
[ほ]捌口
(答えはずっと下↓ スクロールして下さい)



























★日本語★
正解:各項目を参照してください
説明:[い]食麺麭はショクバンと読む
■食麺麭は、「特別の味付けをしないで箱型に入れて焼いたパン」ですね。フランス語ではパン・ド・ミと呼ばれるそうです。箱型の蓋をすると四角いパンになります。蓋をしないと上部は盛り上がって山形のパンになります。
□製パン業界の公正競争規約では、1斤は340g以上となっているそうです。計ってみたことはありませんが、大手メーカーのものはちゃんと340g以上になっているのでしょうね。
□「濹東綺譚」では次のように使われていました。「実は此方(こっち)への来がけに、途中で食麺麭と鑵詰(かんづめ)とを買い、風呂敷へ包んでいたので、わたくしは古雑誌と古着とを一つに包み直して見たが、風呂敷がすこし小さいばかりか、堅い物と柔いものとはどうも一緒にはうまく包めない」。
[ろ]陋巷はロウコウと読む
■陋巷は、「狭くむさ苦しい町」という意味だそうです。いま住んでいる町も妙にザワザワと狭く、むさ苦しい。他の住民は怒るかもしれませんが、陋巷と表現してよさそうな町です。少なくとも高級住宅街ではありません。素町人には似合っていますし好きなのですが。
□「陋」という漢字は、常用漢字表には掲載がありません。漢和辞典「字通」によれば「ロウ、せまい、いやしい、ひくい」という字音・字訓があります。「陋劣(ろうれつ)」という熟語をつくります。「いやしく、つまらない」という意味ですね。
□「濹東綺譚」では次のように使われていました。「わたくしは東京市中、古来名勝の地にして、震災の後新しき町が建てられて全く旧観を失った、其状況を描写したいが為に、種田先生の潜伏する場所を、本所か深川か、もしくは浅草のはずれ。さなくば、それに接した旧郡部の陋巷に持って行くことにした」。
[は]稀覯はキコウと読む
■稀覯は、「めったに見られないこと。非常に珍しいこと」だそうです。なぜか本に使われることが多いようです。稀覯本、稀覯書などの表現をよく見かけます。
□「覯」という漢字は、常用漢字表には掲載がありません。漢和辞典「字通」によれば「コウ、あう、みる」という字音・字訓があります。まれにしか逢えない、見られない対象が稀覯なんでしょうね。
□「濹東綺譚」では次のように使われていました。「主人は頭を綺麗に剃った小柄の老人。年は無論六十を越している。その顔立、物腰、言葉使から着物の着様に至るまで、東京の下町生粋の風俗を、そのまま崩さずに残しているのが、わたくしの眼には稀覯の古書よりも寧ろ尊くまた懐しく見える」。
[に]芳譚雑誌はホウタンザッシと読む
■芳譚雑誌は、明治11年(1878年)7月に創刊され、17年(1884年)10月に休刊となった雑誌の名前だそうです。いちおう文学雑誌だったらしい。
□「芳」は、常用漢字表には掲載がありません。漢和辞典「字通」によれば「ホウ、かおり、かんばしい、はな」といった字音・字訓があります。「芳譚」は、「面白い話」というほどの意味なのでしょうか。
□「濹東綺譚」では次のように使われていました。「相変らず何も御在ません。お目にかけるようなものは。そうそうたしか芳譚雑誌がありました。揃っちゃ居りませんが」。「為永春江(ためながしゅんこう)の雑誌だろう」。古本屋の主人とのやりとりです。
[ほ]捌口ははけくちと読む
■捌け口は、「水などの流れ出ていく口」だそうです。転じて、「商品などの売れていく先」も捌け口と呼びます。さらに「内からあふれる感情などを発散させる対象や、そのための手段・方法」も捌け口と呼ばれます。「欲求不満の捌け口として部下をイジメる」。これはジメジメした捌け口ですね。
□「濹東綺譚」では次のように使われていました。「お守が割れたおかげで無事だった。衝突したなア先へ行くバスと円タクだが、思出してもぞっとするね。実は今日鳩ヶ谷の市へ行ったんだがね、妙な物を買った。昔の物はいいね。さし当り捌口はないんだが見るとつい道楽がしたくなる奴さ」。発言者は古着屋ないし古道具屋らしい。この場合の捌口は売り先の意味かと思われます。
◆参考*1:HP「図書カード:濹東綺譚」
http://www.aozora.gr.jp/cards/001341/card52016.html
◇辞書「字通」白川静、平凡社
◇Yahoo! J Dictionaries 大辞泉
◇Yahoo! J Dictionaries 大辞林
◇HP「常用漢字表」
http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/pdf/jouyoukanjihyou_h22.pdf

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
陋巷というのは、孔子が弟子の顔回のことを言ったときの言葉ですね。
永井荷風の通っていた浅草のレストランに食事しにいったことがあります。
文京区から台東区を散歩していると、永井荷風住居跡なんて書いてある看板が立ってるマンションがあったりします。
木村伊兵衛の撮った晩年の永井荷風の姿というのも飄々として味がありますね。
ねこのひげ
2012/03/20 06:08
コメントをありがとうございます。

 永井荷風は全財産を持ち歩いていたと聞きます。死んだとき、残されたボストンバッグに2000万円以上入っていたとか。
 没した昭和34年(1959年)には教員の初任給が8500円だったらしい。いまの20分の1以下ですね。どんなに少なく見積もっても、現在の4億円ぐらいの価値はありそうです。凄いな。
(^^;)
ねこのひげ様<素町人
2012/03/20 12:15

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