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zoom RSS 食わず嫌い王決定戦に出場したら絶対勝ちたい。これは「負けず嫌い」なの?

<<   作成日時 : 2012/01/26 11:36   >>

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★日本語★
問題:「とんねるずのみなさんのおかげでした」という番組があります。その中で「食わず嫌い王決定戦」という企画が長く続いています。ご覧になったことはありますか。
■役者や歌手、芸人などの人気者が2人招かれます。敵味方に分かれ、とんねるずの2人がそれぞれの相談役につきます。
■2人の人気者は前もって注文しておいた4品ずつの料理を食べて見せます。中の1品はそれぞれの客が大嫌いな食べ物だそうです。敵に悟られないよう、その1品も旨い旨いと食べます。食事が終わったところで相手方の嫌いな料理を当てるという遊びです。
■ところで、「食わず嫌い」という言葉は、辞書によれば次のように説明されます。「食べたことがなく、味もわからないのに嫌いだと決め込むこと。また、その人」。とんねるずの番組の場合、「酸味が強すぎる」とか「歯ごたえがいや」、「のどごしが気持ち悪い」、「あぶらっこくて胃にもたれる」などなど、嫌いになった理由が述べられます。つまり、いちどは食べたことがあるようです。落語の小言幸兵衛のように細かい突っ込みを入れるとすれば、「食わず嫌い王決定戦」はけっして「食わず嫌い」ではありません。食べた結果として嫌悪の情を抱いているという、ごく普通の好き嫌いですね。
■「おやっ、鍋を召し上がっているんですか」。「どうだい、食っていくかい」。「肉はなんですか。私は牛は駄目なんですよ」。「なぜ牛が駄目なの?」。「あんな涎(よだれ)ばかり垂らしている行儀の悪い動物はどうもねぇ」。「そうかい、これはね、合鴨だよ。旨いよ」。「そうですか。それならいただきます」
■「やっぱり旨いですねぇ。柔らかくて脂がのっていて」。「そんなに旨いかい。これはね。実は牛なんだよ。あんたが嫌いだといった牛だよ」。「へぇ、これが牛ですか。う〜ん、これなら大好きです」。こんな小咄が落語の枕でときどき使われます。これがホントの食わず嫌いですね。
■前置きが長くなりました。本日のクイズは「負けず嫌い」という言葉についてです。食わず嫌いは食べないで嫌いになることでした。では負けず嫌いはどうでしょうか。理屈でいえば、負けないことが嫌いという意味になりそうです。勝つことが嫌いなのかな。でも辞書によれば、「他人に負けることを嫌う勝気な性質であること」だそうです。
■実は、負けず嫌いという言葉はわりと新しい言葉だそうです。江戸時代には負け嫌いといっていたらしい。こちらのほうが理屈がとおります。負けることが嫌いだから負け嫌い。では負け嫌いという言葉を明治になっても使っていた有名な小説家は次のうち誰でしょうか? 青空文庫のデータをもとにしてしらべた結果を正解とします。(正解は複数かも)
[い]坪内逍遙(しょうよう)
[ろ]樋口一葉(いちよう)
[は]森鴎外(おうがい)
[に]夏目漱石(そうせき)
[ほ]芥川龍之介(りゅうのすけ)
(答えはずっと下↓ スクロールして下さい)

























★日本語★
正解:[に]夏目漱石(そうせき)と[ほ]芥川龍之介(りゅうのすけ)
説明:夏目漱石は、「明暗」(大正5年(1916年))という小説の中で使っているようです。「彼女に特有な負け嫌いな精神が強く働らかなかったなら、彼女はお秀の前に頭を下げて、もう救(すくい)を求めていたかも知れなかった」。
■芥川龍之介は、「お律と子等と」(大正9年(1920年))という小説の中で使っています。「洋一は不服そうに呟きながら、すぐに茶の間を出て行った。おとなしい美津に負け嫌いの松の悪口(あっこう)を聞かせるのが、彼には何となく愉快なような心もちも働いていたのだった」。
■与謝野晶子(あきこ)の源氏物語でも、複数箇所に「負けぎらい」という記述が見えます。与謝野源氏は、いちばん最初は大正元年(1912年)ぐらいに脱稿しているそうです。
■漱石や芥川龍之介と同時代に書かれた中勘助「銀の匙」(前編明治43年(1910年)、後編大正2年(1913年))では「負けずぎらひの私とくやしがりのお薫ちゃんとのあひだには」と使われているそうです。このあたりまでは併用されていたのでしょうか。
■「負けず嫌い」という言葉が広く使われ出したのは昭和初年と推測されているようです。「負け嫌い」と「負けじ魂」が混同され、負けず嫌いという言葉が生まれたという仮説があります。「汚名を雪(すす)ぐ」と「名誉挽回」が混同され、「汚名挽回」という誤った言葉が誕生したのと似ているのかな。
■参考資料*2では、大野晋(すすむ)という日本語の専門家が別の説を唱えています。文法がからみますので門外漢には上手に説明できませんが、勝手に単純化して申し上げれば、「負けず」の「ず」は否定ではなく、「意志や推量」をあらわすということらしい。だから間違った表現ではないと言いたいようです。
■いまや負け嫌いは負けず嫌いに圧倒され、死語と化したようです。今宵は、舞台を去った正統派の言葉を惜しみつつ、4品の料理を肴に一献傾けたいと思います。もちろん全部大好きな料理であり、食わず嫌いの食品は1品もありません。
◆参考*1:書籍「大野晋の日本語相談」文庫初版202〜206頁、大野晋(おおの すすむ)著、ISBN4-02-264085-5、朝日新聞社
◇*2番組「気になる言葉」平成16年(2004年)4月26日放送分、NHK
◇*3HP「図書カード:明暗」(青空文庫)
http://www.aozora.gr.jp/cards/000148/card782.html
◇*4HP「図書カード:お律と子等と」(青空文庫)
http://www.aozora.gr.jp/cards/000879/card124.html
◇*5HP「図書カード:源氏物語」(青空文庫)
http://www.aozora.gr.jp/cards/000052/card5016.html

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
言葉というのは時代とともに変化していくという実例ですかね。
あの食わず嫌い対決はおもしろいですね。
泉谷しげるさんが、口もつけられずに勝負にならなかったのを覚えてます。
ねこのひげ
2012/01/27 07:07
コメントをありがとうございます。

 ときどき観る程度ですけれど、素町人が観るときはたいてい女性が勝っています。嘘のつきかた、演技力では、男性はかなわないのかな。
(^^;)
ねこのひげ様<素町人
2012/01/28 09:54

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