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zoom RSS さまざまな人が我流で使う当て字。夏目漱石が愛用したのはどの当て字?

<<   作成日時 : 2011/12/01 09:44   >>

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★日本語★
問題:当て字は、「日本語を漢字で書く場合に、漢字の音や訓を、その字の意味に関係なく当てる漢字の使い方」だそうです。アメリカを亜米利加、フランスを仏蘭西と書くのが当て字の典型ですね。
■中には当て字なのか誤字なのかわからない場合もあります。昔の小説などにはよく登場するようです。現代ではむしろ少ないかな。「用字用語辞典」などが普及しているからかもしれません。表記はある程度統一されています。記者や筆者や作者や編集者がパソコンを使っている場合には、かな漢字変換装置やワープロソフトの機能で統一がはかられる場合もあります。
■本日は、下の選択肢に当て字の事例をいくつか並べました。このうち、いくつかは明治の小説家夏目漱石が使っている当て字であり、残りは最近の小学生の当て字だそうです。
■漱石氏はバケツを馬穴と書いたそうです。厩舎で馬の身体を洗うのにバケツが不可穴、失礼、不可欠だったからでしょうか。わかりやすい当て字です。
■最近の小学生と文豪では、語彙の違いは1000倍ぐらいあるかもしれません。では言葉の専門家である明治の文豪の当て字は次のうちのどれでしょうか?(正解は複数かも)
[い]公悔(後悔)
[ろ]園足(遠足)
[は]寸断寸断(ずたずた)
[に]蚊弱い(かよわい)
[ほ]地烈太い(じれったい)
(答えはずっと下↓ スクロールして下さい)
























★日本語★
正解:[は]寸断寸断(ずたずた)と[に]蚊弱い(かよわい)、[ほ]地烈太い(じれったい)が漱石の当て字
説明:漱石作ではなかった[い]公悔(後悔)と[ろ]園足(遠足)は、前者が小学3年生、後者が小学2年生の当て字(誤字?)とのこと*1。「公悔」というのは、不祥事を起こした芸能人や企業人が記者会見で平身低頭している図を連想します。遠足の行き先が動物園や植物園などの場合には、「園足」と書きたくなるのもよくわかりますね。
■[は]の寸断寸断は、なかなかよくできた当て字です。たとえば「吾輩は猫である」という小説では次のように使われていました。「…どこの雑誌へ出しても没書になる価値は充分あるのだから、頭脳の不透明をもって鳴る主人は必ず寸断寸断に引き裂いてしまうだろうと思いのほか、打ち返し打ち返し読み直している」。精神病院に入院中の知人からの手紙を意外にも熱心に眺める苦沙弥先生を、主人公の猫が描写しています。「寸断寸断に」には、「ずたずた(に)」という振り仮名がつけられていました。他にも「趣味の遺伝」という文章でも使われていました。
■[に]の「蚊弱い」もなんとなくそれらしい当て字です。現代の表記では「か弱い」です。「ひ弱い」と似て、「弱い」に接頭語のついたものかなと思っていました。「蚊のごとく弱い」というのは新機軸ですね。やはり小説「吾輩は猫である」で使われています。苦沙弥先生宅で越智東風(おち とうふう)という詩人と迷亭(めいてい)という美学者が「あえかに」という言葉の意味について話す場面です。「蚊弱いとかたよわくと云う字だと思います」と越智東風氏が発言しています。
■[ほ]の「地烈太い」は、小説「虞美人草」で使われていました。「『いいよ。そう心配しないでも』と地烈太(じれった)そうに云い切った後で、『外交官の試験に及第しないうちは嫁どころじゃないやね』と付けた」。思惑のある母と適齢期の娘の会話のようです。
■現代の表記では、「焦れったい」と書きます。なお、おなじ「虞美人草」でも、「男は少し焦慮(じれった)くなる」という当て字もありました。小説「坊っちゃん」にも、「なんで田舎の学校はそう理窟が分らないんだろう。焦慮(じれった)いな」という用例が見られます。
■漱石の当て字は、「無造作に当てる」と非難されることがあるようです。擁護論として、山田俊雄(としお)という専門家は、「詞苑間歩(シエンカンポ)」という随筆の中で、「寸断寸断」や「蚊弱い」、「地烈太い」などが、江戸時代や明治の他の書物にも使われている事例を示したとのこと*2。漱石が思いつきで勝手に使ったわけではないのかもしれません。
■漱石の当て字の善し悪しは素人にはわかりません。21世紀のわれわれ、つまりパソコンでの検索を頻繁に行なう者としては、せめて同一の作品中では「地烈太い」か「焦慮い」かどちらかに統一して欲しかったですけどね。
◆参考*1:新聞「[編集手帳]巧みな?小学生の「漢字」誤答」050129読売新聞東京朝刊01頁
◇*2書籍「雑学ことばの日本史」初版24頁、阿部猛(あべ たけし)著、ISBN978-4-88621-469-0、同成社
◇*3HP「図書カード:吾輩は猫である」
http://www.aozora.gr.jp/cards/000148/card789.html
◇*4HP「図書カード:虞美人草」
http://www.aozora.gr.jp/cards/000148/card761.html
◇*5HP「図書カード:趣味の遺伝」
http://www.aozora.gr.jp/cards/000148/card1104.html
◇*6HP「図書カード:坊っちゃん」
http://www.aozora.gr.jp/cards/000148/card752.html

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漱石の作品「倫敦塔」からの読み問題。「陽炎」はなんと読むの?
●●●★日本語★●●● 問題:夏目漱石は、明治33年(1900年)の9月8日に横浜を出航します。40日ほどかけて倫敦(ロンドン)に到着したらしい。帰りは明治35年(1902年)12月5日に倫敦を出発し、翌年1月20日に長崎に到着しています。満33歳で出発し、戻って来たときは満36歳だったらしい。出世作「吾輩は猫である」は満38歳で記されています。 ■留学中に親友の正岡子規を失いました。自分自身も留学費が不足気味だったせいなのか、文化の違いに慣れなかったのか、神経衰弱にかかったりしている... ...続きを見る
町人思案橋・クイズ集
2012/09/10 07:32

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
パソコンが勝手に当て字をしてくれるのには困りますけどね。
コメントをOKした後に見るとアチャーッ!(~o~)
夏目漱石は、そのときの気分で当て字していたんですかね。
お子さんの談話によるとかなりの気分やで、何の理由もなく頭を殴られたことが度々あったそうですけどね。
ねこのひげ
2011/12/02 07:42
コメントをありがとうございます。

 カナ漢字変換装置の振る舞いは、いまだに笑い話の種になりますね。悪いのは装置のほうだけではなく、利用する我々にも若干の落ち度はあるのでしょうけれど。
(^^;)
ねこのひげ様<素町人
2011/12/02 10:03

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