交尾中に♀のカマキリに頭を食われる♂カマキリ。それでもラッパを離さないの?

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★科学★
問題:明治27年(1894年)の日清戦争での木口小平(きぐち こへい)という兵士の逸話をご存じでしょうか。最前線で進軍ラッパを吹くのが木口小平氏の役目でしたが、敵の銃弾に倒れます。致命傷を負った木口小平は「それでもラッパを離しませんでした」。命をかけて自分の任務を果たそうとした軍人の鑑(かがみ)として教科書等で偶像化されたようです*2。
■いきなりの余談です。「命がけ」という言葉は、木口小平氏のころには実体のある表現だったようです。117年ほど経過した現代においては、あまりに簡単に口にする人が多い。安っぽく、中身のない言葉になってしまったようです。
■政治家はなにかというと「政治生命をかけます」。運動選手は「選手生命」、アイドルや芸人は「芸能生命」をかけます。一般の人ですら、「失敗したら腹を切る覚悟です」と公言する人がいます。
■でも約束は守られません。北海道選出のボッチャン元総理は、引退宣言を撤回していまでも現役の代議士だそうです。スポーツ選手や芸能人は簡単に復帰しますし、切腹宣言の一般人が実際に落命したという話は聞いたことがありません。みなさん往生際がよろしくないようで。
■閑話休題。本日は、実体のある「命がけ」の問題です。カマキリの交尾です。ご存じのように♂のカマキリは、交尾のときに♀のカマキリに食べられてしまうことがあるそうです。交尾後なら自分のDNAを残すという任務は完了しているのですからまだマシです。中には交尾のまっただなか、あるいは交尾直前に食べられる哀れな奴もいるらしい。
■では、交尾の際、カマキリ夫人に頭部をかじられた♂のカマキリは、どういう行動をとるのでしょうか? 次の中から正しい記述を選んでください。(正解は複数かも)
[い]交尾前に頭を食べられた♂のカマキリはそれでも♀を離さず、交尾を完遂しようとする
[ろ]交尾前だと♂はDNAを残せないが、交尾中ならば必ずDNAを伝えてしまう
[は]頭がなくなると全身の筋肉の運動が止まり、単なる死体になる。残りの部分もカマキリ夫人の餌になる
[に]頭がなくなっても交尾運動は機械的に淡淡と続けられる
[ほ]頭がなくなると交尾運動はより激しくなる
(答えはずっと下↓ スクロールして下さい)

























★科学★
正解:[い]「交尾前に頭を食べられた♂のカマキリはそれでも♀を離さず、交尾を完遂しようとする」と、[ほ]「頭がなくなると交尾運動はより激しくなる」が正しい
説明:参考資料*1によると、カマキリの♀は♂を食べる際にはたいてい頭から召し上がるそうです。頭が特別に美味なのかな。足から食べることはありませんし、逆のパターン、♂が♀を捕食することもないそうです。参考資料*3によれば、♀を食べてしまったのでは♂は自分のDNAを残せないからだそうです。
■交尾を目的に♀に近づいた♂カマキリが♀に食べられ始めた場合、頭を失っても残りの身体は交尾しようとし、実際に目的を遂げる例があるらしい*1。Wikipediaによれば、「極端な種においてはオスはメスに頭部を食べられた刺激で精子嚢をメスに送り込む」とのこと*3。まぁたいていのカマキリではうっかり食べられることはあっても、自ら進んで人身御供になりたがる♂はいないようですけど。
■カマキリの♂の交尾を支配する中枢は、脳味噌の中ではなくて腹部の神経節という部位にあるそうです。脳味噌の働きは、むしろ交尾を抑制するものらしい。頭がなくなると抑制が取り払われ、性欲は高まり、交尾行動は促進されるそうです。♂の交尾行動は、食べられる前よりも激しくなるらしい*1。鬼気迫る交尾です。命がけという言葉はこの種の酷烈な行為のためにとっておきたいものです。
■なお、日本国産のカマキリは、どちらかといえば共食い消極派が多いらしい。「自然状態でメスがオスを進んで共食いすることはあまり見られないとも言われる」とのこと*3。秋が深まって餌が減ってくると♂がおいしそうに見えることはあるそうです*3。
■共食いが見られるのは餌不足の場合と飼育状態でカマキリの人口密度が高い場合だそうです*3。なお、♀は「自分より小さくて動くものに飛びつくという習性に従っているだけ」であり、倫理上の罪悪感などはいっさい持たないようです。
◆参考*1:書籍「動物おもしろ性態学」文庫初版55~56頁、日本雑学研究会編、ISBN4-620-72099-2、毎日新聞社
◇*2HP「正露丸のラッパのマークは死んでもラッパを離さなかったキグチコヘイに由来するの?」
http://blog.q-q.jp/200807/article_48.html
◇*3HP「カマキリ - Wikipedia」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%9E%E3%82%AD%E3%83%AA#.E5.85.B1.E9.A3.9F.E3.81.84

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2011年11月09日 04:09
日本国産のカマキリが、共食いに消極的というのが面白いですね。同じ国に住んでいると人も昆虫も似てくるのでしょうか?
中国なんかでは共食いしまくっていそうですね。
ねこのひげ様<素町人
2011年11月09日 07:54
コメントをありがとうございます。

 動物の習性はその土地の人間の文化に似てくる…という文化動物学があると面白いですね。

 一般には餌の多い少ないがいちばん連中の習性に影響するようでして、本土の猿はやたらと喧嘩っぱやいしボス決めも熾烈な争いになります。屋久島の猿はずっと穏やかだそうで、これは餌が豊富だからという説明を聞いたことがあります。
(^^;)
 

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