徴兵告諭で大騒ぎ。「血税」という言葉への誤解から結婚ブームが起きたの?

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★歴史★
問題:明治の日本で太陽暦(グレゴリオ暦)が採用される直前のお話です。太陽暦の導入で、明治5年12月2日の翌日は明治6年1月1日となったと聞きますね。
■新旧切替の4日前。旧暦では明治5年11月28日。新暦に翻訳すれば1872年12月28日。大丈夫ですか。頭が混乱してきそうですね。旧暦では、この年の11月は小の月であり、29日までしかなかったようです。で、以下、次のように対応するらしい。
---旧11月28日=新12月28日
---旧11月29日=新12月29日
---旧12月1日=新12月30日
---旧12月2日=新12月31日
---(旧12月3日)=新1873年1月1日
■問題は暦ではありません。旧暦の明治5年11月28日に明治新政府が発表した「徴兵告諭(こくゆ)」という文書です。この文書には、明治6年(1873年)から徴兵制度が始まることが宣言されており、その理由もあわせて記されていたらしい。
■近代国家として国民軍の創設を狙いとした徴兵制度であり、日本の歴史にとっては大きな転換点となるものだったようです。ただし、一般国民は制度創設の理由を説明した文章を大きく誤解しました。誤解のもとになったのは次のような一節だったらしい。
---人たるもの固(もと)より心力を尽し国に報ひざるべからず。西人(西洋人)之を称して血税と云ふ。其生血(生き血)を以て国に報するの謂(いい、…という意味)なり
■「血税」という言葉はそれまで誰も聞いたことがなかったようです。金や物で納める税金に対し、兵役というサービスの形で納める税金というほどの意味です。フランス語の直訳らしい。「血」という刺激的な漢字がさまざまな誤解を生み、ついには全国各地で暴動が起きてしまいます。
■本日は、「血税」という言葉から当時の人々が連想した事態をクイズにしました。次のうちで、実際に流れた流言蜚語(りゅうげんひご、根拠のない噂)は次のどれでしょうか? (正解は複数かも)
[い]徴兵者の生き血をしぼって毛布を染めるそうだ
[ろ]子供の生き血をしぼって薬をつくるそうだ
[は]妊婦の血を薬にまぜて飲むそうだ
[に]13~25歳の処女を樺太に送るそうだ
[ほ]13~25歳の処女を欧州に送り、西洋人の種をとらせるそうだ
(答えはずっと下↓ スクロールして下さい)

























★歴史★
正解:全部が流言蜚語として流れたもの
説明:「血税」という言葉に対する過剰反応は、とくに西日本で大きく、16件の暴動が起きたそうです。血税一揆、徴兵令反対一揆とも呼ばれるらしい。
■明治6年(1873年)5月26日に北条県(現岡山県)で起きた一揆は規模が大きかったようです。3000人が蜂起し、数万人にふくれあがり、6昼夜にわたって学校の破壊、被差別部落襲撃、富裕者の屋敷の焼き打ちなどが行なわれたらしい。被害は合計432軒に達し、ある被差別部落では、住民29人が殺傷されたとのこと*3。
■6月1日になって大阪鎮台の兵が到着し、ようやく鎮圧されたようです。有罪とされたのは2万6916人。ただし、一説には2700人あまりというお話もあるようです*3。
■首謀者は筆保卯太郎(ふでやす うたろう?)という人物です。調書では、「徴兵・地券・学校・屠牛・斬髪・えたの称呼廃止」などが不服だといっていたらしい。徴兵による労働力収奪をはじめとして、新政一般への不満が蜂起の動機だったようです。暴動の指導者筆保氏は、「血」の意味を正確に理解していたらしい。理解していない人々の不安な心理を利用し、煽動したのかな。結局、懲役刑が64人。筆保卯太郎以下の指導層15人が死罪となったようです。他は罰金刑なのかな。
■[に]「13~25歳の処女を樺太に送るそうだ」というのと「[ほ]13~25歳の処女を欧州に送り、西洋人の種をとらせるそうだ」という流言蜚語は、とくに中部地方を中心として起きたらしい。「あわてた娘たちの縁談ブームや押し売り嫁入りなどがおこった」とのこと*1。こちらは純然たる「血」に対する誤解ですね。
■参考資料*3によれば、北条県の一揆の他に、鳥取県会見郡(あいみぐん)の一揆、名東県(みょうどうけん、現徳島県)7郡の一揆が大きかったそうです。それぞれ1万人以上の有罪者が出たらしい。会見郡の一揆では終身刑が1人出ました。名東県の一揆では7人の死罪が出たようです。
■「徴兵検査は恐ろしものよ。若い児をとる、生血とる」という歌が人々の口の端にのぼっていたようです。「血」という言葉がこれほどまでに人々の不安をかきたてるとは、告諭の原文を書いた役人も、判子をついた政治家も想像できなかったようですね。
■血税のかわりになんと表現すればよかったのでしょうか。肉体を提供して税を納めるわけですから肉税(にくぜい)かな。これもまた誤解をうみそうですね。身体税。う~ん、これも駄目だな。汗税(あせぜい)。語呂はよくないけれど、これなら一揆は防げたかもしれません。
◆参考*1:書籍「日本史こぼれ話 近世・近代 正編」新書初版113~114頁、笠原一男/児玉幸多編、ISBN4-634-60340-3、山川出版社
◇*2HP「徴兵令 - Wikipedia」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%B4%E5%85%B5%E4%BB%A4
◇*3HP「血税一揆 - Wikipedia」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A1%80%E7%A8%8E%E4%B8%80%E6%8F%86

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2011年10月30日 06:19
デマというのはすごいですね。
明治43年のハレーすい星の時も自殺した人がいたし・・・
つい先日の28日も人類が滅亡するという流言飛語が飛んでました。
マヤ歴が今年で終わっているというのが理由だったようです。
ねこのひげ様<素町人
2011年10月30日 22:09
コメントをありがとうございます。

 ノストラダムスの大予言も富士山大爆発の小予言も見事にはずれました。それでもみんな予言が嫌いではないようですね。
(^^;)

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