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zoom RSS 江戸語検定一級の言葉。「かわたれ」とは厠(かわや)で大小の用を足すことをいうの?

<<   作成日時 : 2011/05/12 06:26   >>

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★日本語★
問題:本日は江戸語検定1級試験に出題されそうな難しい江戸時代の言葉についてのクイズです。
■江戸語検定? 聞いたことないな。それはそうです。江戸語検定というのは素町人が本日のために即席で勝手に創った試験です。江戸検定はある。日本語検定もある。でも、江戸語検定は想像上の検定です。
■ではその架空江戸語検定試験1級の問題から。次の各語の説明文のうち、正しいものはどれでしょうか?(正解は複数かも)
[い]「あんぽつ」は「餡歿」と漢字表記され、饅頭の中の餡の量が少ないこと。転じて「期待はずれ」を意味する
[ろ]「いんごう」は「院号」と漢字表記され、□□院と尊称される地位の人物を指す。江戸時代には転じて「お年寄り」一般を意味した
[は]「おたまりこぼし」は、「御默小法師」と漢字表記される。洒落言葉・無駄口のひとつで、默れの意味で、「ぶつぶつと口うるさいカカアだなぁ、少しは御默小法師」などと使われる
[に]「かわたれ」は、あえて漢字表記するなら「厠垂」。厠で大小を垂れることを短縮していった
[ほ]「定式」は「きめしき」と読み、「約束ごと」を意味する
(答えはずっと下↓ スクロールして下さい)

























★日本語★
正解:[ほ]が正しい
説明:[い]「あんぽつ」は「餡歿」と漢字表記され、饅頭の中の餡の量が少ないこと。転じて「期待はずれ」を意味する(×)
■これはかなり難しい問題です。出題している当人すらよくわかりません。参考資料*1によれば、「あんぽつ」は「行」という漢字に「竹冠の下に拂」という漢字を並べるらしい。「行」という漢字は「行灯(あんどん)」とか「行宮(あんぐう)」、「行脚(あんぎゃ)」のように、「あん」という読みをする場合がありますね。
▼あんぽつの漢字表記
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□で、「あんぽつ」が何かといえば、駕籠の一種だそうです。街道筋の駕籠屋や辻駕籠と呼ばれるものよりも少し高級なんだそうです。「上流階級や大店の病人」なんかが客とのこと。現代でいえばハイヤーなのかな。赤穂地方では「あんだ」と呼ばれたそうです*2。参考資料*2には「あんだ、あんぽつ」の写真も掲載されていました。
□江戸では、四手駕籠(よつでかご)と呼ばれる簡単な駕籠だけが庶民に許されていたらしい。「あんぽつ」が登場するのは幕府のたががゆるみ始めた後期になってからという推測もあるようです。口絵におそらく四手駕籠であろうと思われる図をあげておきました。
[ろ]「いんごう」は「院号」と漢字表記され、□□院と尊称される地位の人物を指す。江戸時代には転じて「お年寄り」一般を意味した(×)
■正しくは、「因業」と漢字表記され、「頑固で思いやりのないこと。また、そのさま」だそうです。もともとは仏教の言葉で、「何らかの結果を生む原因になる行為」の意味だったらしい。前世での悪業が原因で招いた悪い性格や運命というところから、「冷酷」とか、「欲が深くて無情」という意味が生まれたようです。
□落語の「らくだ」とか「大工調べ」などには因業な大家さんが登場します。昔は、「(大家さんが)必要になったときには、すぐに家を明け渡す」という無茶な契約があったらしい。落語「廿四孝(にじゅうしこう)」では何かというと店子(たなこ)に対して「出て行け、家をあけろ」と大家さんが怒鳴ります。借家人が法で保護されている現代とは大きな違いがありますね。
□「院号」という言葉も実際にあります。「上皇に対する尊称」だったり、「皇太后・准母など皇族の女性で、上皇に準じた待遇を受ける人への尊称」だったりするらしい。百人一首に登場する「後鳥羽院」とか「陽成院」なども院号の一種だそうです。あくまでも貴人に対する尊称です。一般の高齢者に対して院号と呼んだり、院号をつけて呼んだりする習わしはないようです。
[は]「おたまりこぼし」は、「御默小法師」と漢字表記される。洒落言葉・無駄口のひとつで、默れの意味で、「ぶつぶつと口うるさいカカアだなぁ、少しは御默小法師」などと使われる(×)
■正しくは、「御溜小法師」と漢字表記するらしい。「やりきれない、堪えられない」という意味だそうです。現代でいえば「たまらない」でしょうか。下につけられた「小法師」は、「起き上がりこぼし」をもじったものらしい。
□六代目三遊亭圓生師の落語「包丁」でも、「冗談いっちゃいけないよ、そんなことをされておたまりこぼしがあるかい。なんだい、頭のてっぺんから足のつま先まであたしの世話になっていたんじゃないか」と使われていました。
□「包丁」は、清元の女師匠のヒモが、新しい女ができたからと、別れるついでに師匠をどこかに叩き売ろうというけしからぬ企みを抱くお話です。昔の仲間に師匠にじゃれつかせ、2人が近づいたところに出刃包丁を持って現れ、「さぁ、間男見つけた、ふてぇあまだ」と美人局(つつもたせ)のようにことをすすめる作戦でした。でも仲間が計画を師匠にばらしてしまい、色男は逆に師匠に叩き出されることになります。「おたまりこぼし」を含んだ台詞は、師匠が色男をやりこめる場面で使われていました。
[に]「かわたれ」は、あえて漢字表記するなら「厠垂」。厠で大小を垂れることを短縮していった(×)
■正しくは、「彼は誰」と漢字表記し、「夕方、あるいは明け方のうす暗い時間帯」の意味だそうです。暗くて顔がはっきり見えないようですね。「向こうから来るあいつは誰だろう」と思う時間帯らしい。
□「かわたれ時」としても使われます。語順を逆にした「誰そ彼」は、「たそがれ」として現代にも生き残っています。近頃では「たそがれる」と動詞のようにも使います。「彼はたそがれている」は、漢字表記すると「彼は誰そ彼ている」となり、誰が誰なんだかわかりません。
□「大辞泉」によれば、「かわたれどき」はどちらかといえば明け方に多く使われ、「たそがれ」は夕方に使われることが多いらしい。
□余談です。夕方を意味する言葉は、ずいぶんたくさんあります。夕暮れ、黄昏(たそがれ)、日暮れ、宵の口、薄暮(はくぼ)などなど。上方落語には、「夕景小前」という言葉も登場します。「ゆうけいこまえ」あるいは「ゆけこまい」と短くした形で読まれることもあるようです。
[ほ]「定式」は「きめしき」と読み、「約束ごと」を意味する(○)
■「きめしき」は、落語の「大山詣り」、上方落語では「百人坊主」などに登場する言葉です。一緒に行動をする連中の約束事というほどの意味らしい。
□団体旅行をする際に、酒が入ると決まって喧嘩が始まり、宿や指導者に迷惑をかけることになります。もういやだ。俺は今年は降りるよと先達(せんだつ、指導者・案内人)に愛想をつかされた者たちは、今年は腹を立てたら大金を払い、喧嘩をしたら髪を剃って坊主にしてしまうという約束事をしたのだからといって先達さんを納得させます。この約束が旅行のあいだの「定式(きめしき)」になるわけですね。
□「定式」は、「じょうしき」とも読みます。この場合は、「定まった儀式、きまったやりかた」という意味になります。「きめしき」は世間一般で通用する約束事ではなく、仲間内だけのローカルルールのような雰囲気があります。「定式」は通用する範囲の広い、正式な雰囲気が感じられます。
□歌舞伎には「定式幕(じょうしきまく)」とよばれる幕があります。「萌葱色(もえぎいろ)、柿色、黒」の三色の縦縞模様だそうです。萌葱は萌黄とも書きます。でも黄色系ではなく、緑系の色らしい。浅葱色(あさぎいろ)が黄色系の色ではなく、青系の色であることと似ています*3。
▼定式幕
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◆参考*1:書籍「生かしておきたい江戸ことば 450語」文庫初版124頁、澤田一矢著、ISBN978-4-344-40981-1、幻冬舎
◇*2HP「赤穂民報|田淵家の古駕籠、解体修理の納屋で見つかる」(あんぽつの写真)
http://www.ako-minpo.jp/news/581.html
◇*3HP「武士が羽織の裏に使っていた「あさぎいろ」ってどんな色?」
http://blog.q-q.jp/200609/article_73.html

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