「あらゆる円は円周の長さが同一である」ことが証明できる図。間違いはどこにあるの?

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★科学★
問題:口絵の上の図をごらんください。タイヤとホイールキャップ、地面の模式図です。左側のタイヤが地面に接している点をA1、タイヤが1周した場所をA2とします。A1からA2の長さは「タイヤの直径×π」のはずですね。
■次に、ホイールキャップの下端B1・B2に注目してください。このホイールキャップはちょうどタイヤの半分の直径があります。当たり前ですが、タイヤが1回転するあいだにホイールキャップもちょうど1回転します。B1からB2に移動します。ということはB1からB2の長さは「ホイールキャップの直径×π」のはずですね。
■ん? 少し変です。A1からA2の長さはB1からB2と等しく見えます。でも、タイヤが示す円は、どうみてもホイールキャップが示す円よりも大きい。
■考えを拡張してみましょう。口絵の下の図をごらんください。大きな円盤の中にいろいろな同心円を描き、円盤を1回転させてみます。サイズにかかわらず、内側の円の1点の移動距離はおなじです。円の直径が異なっても、円周の長さは同一になる。これはピタゴラスやユークリッドも裸足で逃げ出す大発見かもしれませんぞ。
■なんてね。たいへん残念なことですが、これは大発見ではなく、単なる大誤解だそうです。では、ホイールキャップが1回転した長さがタイヤのそれと同一に見えるのはなぜなのでしょうか?
(答えはずっと下↓ スクロールして下さい)

























★科学★
正解:ホイールキャップはすべって移動しながら回転しているから
説明:タイヤが1周した距離は確かにA1からA2の距離です。これは「タイヤの直径×π」で求められます。ホイールキャップはたしかにB2の地点でちょうど1回転しています。でもB1からB2の長さはホイールキャップの円周だけでなく、ホイールキャップが「すべって移動した」距離も含まれているらしい。
■「すべって移動した」というのがちょっとわかりにくいですね。思い切って極限のことを考えてみましょう。タイヤやホイールキャップの中心点C1とC2を想像してください。C1はA1やB1の真上にあります。C2はA2やB2の真上です。つまり、C1からC2の長さはA1からA2、あるいはB1からB2と一緒です。
■中心点は点です。円周はゼロです。ということは、C1からC2の長さは、純粋に中心点が「すべって移動した」距離になります。
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■このホイールキャップの直径はタイヤの直径の半分です。円周もまた半分です。残りの半分は、B1が回転しながらB2にたどり着くまでに「すべって移動した」距離になるようです。
■まだわかりにくいですね。参考資料*1にはおおむね次のような説明がありました。タイヤのかわりに2つの歯車で考えます。外側の歯車と内側の歯車は、歯のついた軌道の上を走ります。登坂用のアプト式鉄道みたいですね。歯車ですから「すべって移動する」ことはできません。
■それぞれ独立して動くときには、当たり前ですが、小さい歯車のほうは短い距離で1周します。では、この2つの歯車をおなじ心棒に通し、ネジで互いに固定したとします。で、アプト式風の軌道をそれぞれあてがって転がそうとすると、なぜか動かないそうです。小さい歯車、タイヤの例でいえばホイールキャップに当たるほうが、わずかずつすべって移動しようとするため、軌道側のピッチ、歯と歯の距離に合わなくなり、かみ合わなくなるためらしい。
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■歯車の例は素町人は実際には試していません。東急ハンズや模型屋さんにいくと歯車は売っています。歯のついた軌道も入手できるかも知れません。時間と好奇心と実証精神のあるかたは、試してみてください。「どんな円も円周は同一だ」という主張が誤解であることを体感できる可能性があります。
◆参考*1:書籍「数学トリック だまされまいぞ!」新書初版112~113頁、仲田紀夫(なかだ のりお)著、ISBN4-06-132908-1、講談社

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