マウスの癌(がん)が増える物質はヒアルロン酸なの? コエンザイムQ10なの?

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★科学★
問題:ちょうど100年前。明治43年(1910年)に史上最初のビタミンが日本人の手によって抽出されたそうです。鈴木梅太郎(うめたろう)博士のオリザニンですね。でも、最初のビタミン抽出の栄誉は、翌年にポーランド人カジミール・フンク(カシミールという表記もあり)という人物に与えられてしまいます*1。鈴木梅太郎の論文が英語で書かれていなかったから認められなかったという噂があります。
■ビタミンとは、「微量で体内の代謝に重要な働きをしているにもかかわらず自分で作ることができない化合物」を指す言葉だそうです*7。食べ物や飲み物で摂取するのが基本です。でも、食事で摂れないときには、錠剤や粉末、あるいは液体の形で体内に取り入れなければならないこともあるわけですね。
■ビタミンの発見からちょうど1世紀が経過しました。さまざまなビタミン剤が作られ、大量に消費されてきました。
■20世紀も末期に近づくと、ビタミンの大量摂取は害になるのではないかという話が出てきたそうです。たとえばビタミンC。「1日500mg以上を摂取するとDNAを構成する4つの塩基のうちの1つ、アデニンという物質の酸化が進む」とかいう話を聞いたことがあります。ただし、グアニンという塩基の酸化は止められるとのこと*2。ビタミンEの場合にも健康に害がある可能性があると言う人たちがいます。アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の専門家たちは警鐘を鳴らしているらしい*3。
■2010年現在では、ビタミン以外の物質のブームも起きているようです。たとえばコラーゲン、ヒアルロン酸、コエンザイムQ10(きゅーてん)、フコイダン、グルコサミン、コンドロイチン、イソフラボン、ポリフェノールなどなど。Wikipediaのサプリメントの項には、100種を軽く越える物質の名前が列挙されています*4。
■本日は、ビタミン以外の「健康によさそうな物質」に関するクイズです。科学雑誌Newton (ニュートン)の 2010年 4月号には、こうした物質、それも大々的に販売されている物質のうちの1種は、少なくともマウスにおいては寿命を縮めることがあるらしいと書かれています*5。その物質は、サプリメント、あるいは化粧品などの中にも含まれ、入手がたいへん容易なようです。場合によっては気づかないうちに摂取させられていることもあるのかな。では、素人が見ると大変危険に見えるその物質とは、次のどれでしょうか?
[い]コラーゲン
[ろ]ヒアルロン酸
[は]コエンザイムQ10
[に]フコイダン
[ほ]グルコサミン
(答えはずっと下↓ スクロールして下さい)

























★科学★
正解:[は]コエンザイムQ10
説明:参考資料*5はニュートンという科学雑誌2010年4月号の「老化は防げるか」というカラー6頁の図解入り読み物記事です。老化の原因、傾向と対策が解説されています。参考までに小見出しを並べてみましょう。
---老化はどのように測るのか
---ホルモン投与で老化は防げるか
---“腹八分”で、寿命がのびる
---なぜカロリー制限で長寿になるのか
---赤ワインを飲むと長生き?
---そもそもは酸化ストレスが老化の原因?
---老化の”鍵”はミトコンドリア
だいたいの内容がご想像いただけますでしょうか。
■最後の頁に囲み記事でQ&Aがあります。2問あって1問は「コエンザイムQ10を飲むと老化が防げると聞いたのですが」という質問です。もう1問は「今、老化に対する対策はないのでしょうか」という質問です。
■注目は前者の質問です。素人にはちょっと衝撃です。素人が要約すると誤解を招きそうなので、質問と回答を全文掲載します。
---Q.コエンザイムQ10を飲むと老化が防げると聞いたのですが?
---A.コエンザイムQ10は加齢とともに減少する、ミトコンドリアでのエネルギー生産を助けるはたらきがある物質だ。そのため、摂取することで細胞のエネルギー補給を助け、疲労回復効果があると考えられている。寿命をのばすかという点では賛否両論ある。実験の結果、線虫とハエではまったく逆の結果が報告されているためである。またマウスでは、過剰に摂取すると、がんが増加して寿命がちぢんだという。それは酸化ストレスを増大させた結果では、との推測もあるがまだはっきりしていない。
■伝聞の形ですが、「マウスでは過剰に摂取するとがんが増加して寿命が縮んだという」と書かれています。ただし、「コエンザイムQ10をサプリメントで摂取している自分はがんになりやすいのか」と落ち込むのは早計でしょう。人間ではどうかはわかりません。また「過剰」とはいうものの、どの程度の量が過剰といえるのかはわかりません。さらに、がんが増加するといいますが、どの程度の割合で増加するのかもわかりません。極端な話、科学雑誌だって人間が作っているわけですから、間違うこともあるでしょう。すでに7月号まで発行されているニュートンですが、「訂正とお詫び」欄を調べていっても、この記事についての記述は見られないようですが。
■なお、酸化ストレスというのは、細胞内の部品であるミトコンドリアでエネルギーを生産するときに活性酸素が生まれ、その反応によってDNAや蛋白質(たんぱくしつ)が傷つけられることを指すようです。活性酸素によってわれわれの細胞の部品は徐々に壊れていくようですね。それが老化にもつながるらしい。
■人間は昔から不老不死の話に弱いものです。世界中の神話や伝説に不老不死のお話が見られるそうです。我々は現代の科学の神話にも弱い。「3割のカロリー削減で長寿が得られる」という話についつい耳をそばだてます。よく聞いてみると、その実験動物は線虫だったりします。回虫なんかの仲間だそうです。人間とはおおよそ縁遠い単純な構造の生き物です。そんな生き物で確認された実験結果でも、人間に置き換えて考えたくなります。まっ、最近は「腹八分目長寿説」は哺乳類でも確認されつつあるようですけど。
■今回は、逆の意味で耳をそばだててしまいます。なにしろマウスです。哺乳類です。コエンザイムQ10の過剰摂取でがんが増加するかも? ちょっと心配ですね。
■追い打ちをかけるわけではありませんが、もうひとつ気になる記事があります。WikipediaのコエンザイムQ10(項目名としてはユビキノン)の項です*6。「…その薬剤としての実証性のなさから、米国FDAは薬剤として認めておらず…」とあります。なぜか、日本の厚生労働省では、いまでも一般用医薬品・医薬部外品としての販売を認めているらしい。
■さらに我が国では健康食品や化粧品に応用されているそうです。で、気になる話。100525現在のWikipediaの記述によれば、2007年の段階で、コエンザイムQ10の原料製造を行なっているのは、世界中を探しても日本企業5社のみだったそうです。日清ファルマ、カネカ、旭化成ファーマ、三菱ガス化学、協和醗酵工業とのこと。シェア100%なのは結構なことです。でもなぜそんなことが起こったのでしょうか? 日本企業の製造技術が優秀だから? そうだといいですね。でも、ひょっとしたら、世界の大部分の国では、国民の健康には必要のない物質と考えているのではないか? あるいは有害な物質と考えているのではないか?
■素人は無知なだけにいろいろなことに気をまわすものです。コエンザイムQ10を含む製品を販売している企業、たとえばサントリー・資生堂・協和発酵・DHC・ファンケルその他は、不安を解消すべく、一般消費者に説明したほうがいいでしょう。とくにがんとの関係はみんなが知りたいと思います。
■金を払って命を縮める人がいたとしたらバカバカしい話ですよね。コエンザイムQ10でそんな悲劇が起こらないことを祈ります。
◆参考*1:HP「ビタミン – Wikipedia」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%82%BF%E3%83%9F%E3%83%B3#.E7.99.BA.E8.A6.8B.E3.81.AE.E6.AD.B4.E5.8F.B2
◇*2HP「果汁100%、糖分無添加でも、飲み過ぎればデブのもと?」
http://blog.q-q.jp/200604/article_27.html
◇*3:新聞「ビタミンE大量摂取は健康に『危害』の恐れ、米大学」(CNN.co.jp 041112)
◇*4HP「サプリメント - Wikipedia」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88
◇*5雑誌「老化は防げるか」Newton(ニュートン)2010年4月号84~89頁、担当編集者森久美子、ニュートンプレス
◇*6HP「ユビキノン - Wikipedia」(100525現在)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B6%E3%82%A4%E3%83%A0Q10
◇*7HP「「健康食品」の安全性・有効性情報」
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail677.html
◇*8HP「ビタミンやミネラルのサプリメントの延命効果はゼロどころかマイナス?」
http://blog.q-q.jp/200703/article_41.html

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この記事へのコメント

2010年05月25日 13:52
なかなか興味深いクイズで真剣に考えました。
私はコラーゲンかと思ったのですが、コエンザイムQ10ナノですね~
勉強になります。
天使ララ様<素町人
2010年05月26日 20:20
コメントをありがとうございます。

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