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zoom RSS 徳富蘆花の小説「不如帰」からの読み問題。「癇癪」はなんと読むの?

<<   作成日時 : 2009/10/16 07:51   >>

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★日本語★
問題:明治31年(1898年)から翌年にかけて、「國民新聞」に連載された徳富蘆花(ろか)の小説「不如帰(ふじょき/ほととぎす)」は、当時のベストセラーになります。片岡中将の愛娘浪子(なみこ)と陸軍少尉川島武男(たけお)男爵の哀しい物語だそうです。
■ふたりは幸福な結婚生活を送っていたようです。でも浪子は結核に冒されます。当時の不治の病です。伝染性があります。武男が出征している間に浪子は離婚を強いられ、武男を思いながら死んでしまうらしい。夫婦それぞれに横恋慕する男女、犯罪者、意地悪な親族等々が絡んで、なかなか賑やかな物語だそうです。
■病を告げられたあとの武男と浪子の会話がよく知られているそうです。「なおりますわ、きっとなおりますわ、――あああ、人間はなぜ死ぬのでしょう! 生きたいわ! 千年も万年も生きたいわ! 死ぬなら二人で! ねエ、二人で!」*1。万年も生きていたら、退屈で死んでしまうでしょうね。
■「不如帰」のことは俗謡にも歌われたそうです。
--- …
---十一一願かけたれど
---浪子の病いは なおらない
---ごう ごう ごうごと 行く汽車は
---浪子と武夫の別れ汽車
---ハンカチふりふり ねえあなた
---はーやく帰ってちょうだいな
---泣いて血を吐く ほととぎす*2
おしまいの2行はときどき耳にしますね。
■口絵は、「國民新聞」に連載された当時の挿絵だそうです。明治洋画壇の重鎮、黒田清輝(せいき)が描いたとのこと。現在でも「湖畔」という作品が多くの教科書に掲載されている画家ですね。下の絵です。
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「國民新聞」は徳富蘇峰(そほう)が創刊した新聞です。蘇峰は蘆花の実兄です。
■本日は、明治のベストセラー小説からの読み問題です。次の漢字・熟語の読みはなんでしょうか? 例によって、青空文庫で読みとされているものを正解とします。
[い]「外套」
[ろ]「癇癪」
[は]「莨」
[に]「捷径」
[ほ]「婀娜」
(答えはずっと下↓ スクロールして下さい)

























★日本語★
正解:各項目を参照してください
説明:[い]「外套」はがいとうと読む
■「外套」は今様に呼べば「オーバー、コート」だそうです。マントも外套の分類に入るとする辞書もあります。
□「套」という漢字は常用漢字表には掲載がありません。漢和辞典「字通」によれば、「套」という漢字は「大」と「長」が重なっているらしい。「長」は長髪をあらわすとのこと。「大」はその髪を覆う形で、覆い重ねるとかひとまとめにする意味があるそうです。字訓としては「かさねる、おおう」と読むらしい。
□「不如帰」の中では、、「…奥様は畳(たた)みし外套をそっと接吻して衣桁(いこう)にかけつつ、ただほほえみて無言なり」と使われていました。この奥様は浪子、外套は武男のものらしい。
[ろ]「癇癪」はかんしゃくと読む

■「癇癪」は、「ちょっとしたことにも感情を抑えきれないで激しく怒り出すこと」だそうです。
□「癇」という漢字は、常用漢字表には掲載がありません。漢和辞典「字通」によれば、「カン、ひきつけ」という字音・字訓があります。「癲癇(てんかん)」という熟語をつくります。「癪」という漢字も、常用漢字表には掲載がありません。漢和辞典「字通」によれば、「シャク、さしこみ」という字音・字訓があります。
□「癇、癪」、どちらも「さわる」という言葉があとにつくと腹が立つという意味になります。「癇にさわる」と「癪にさわる」ですね。この場合の「さわる」は「触れる」ではなく、「障る、さまたげとなる、身体に悪い影響を与える」というほうらしい。
□「不如帰」の中では、、「…こちらの御隠居様はどうしてあんなに御癇癪(ごかんしゃく)が出るのでございましょう…」
[は]「莨」はたばこと読む

■「莨」は、「煙草」とおなじ意味だそうです。
□「莨」という漢字は、常用漢字表には掲載がありません。漢和辞典「字通」によれば「ロウ、ちからぐさ・おおあわ・たばこ」という字音・字訓があります。古い本を読むと、「莨盆(たばこぼん)」という言葉がときどき出てきます。
□「不如帰」の中では、、「…ほほほ、こんな流刑(しまながし)なら生涯でもようござんすわ――あなた、巻莨(まきたばこ)召し上がれな」という台詞の中で使われていました。
[に]「捷径」はしょうけいと読む
■「捷径」とは、「目的地に早く行ける道、目的を達するてっとり早い方法」だそうです。早道、近道の意味らしい。
□「捷」という漢字は、常用漢字表には掲載がありません。漢和辞典「字通」によれば、「ショウ、すみやか、さとい、かつ」という字音・字訓があります。「戦捷(せんしょう)」は、戦勝とおなじ意味のようです。「かつ」の意味ですね。「敏捷」という熟語では、「すみやか」という意味で使われているのかな。
□昔の本には、「捷径」という言葉を使った題名がときどき見られたらしい。たとえばジョン万次郎が明治時代に上梓した本の題名は「日米対話捷径」だそうです*3。最近の本でも、たとえば「1級合格のための合格捷径」という本が平成8年(1996年)の10月に出版されています。出版社は日本漢字能力検定協会。つい最近、頻繁に耳にした名前だな。
□「不如帰」の中では、「…彼は世渡りの道に裏と表の二条(ふたすじ)あるを見ぬきて、いかなる場合にも捷径をとりて進まんことを誓いぬ」と使われていました。
[ほ]「婀娜」はあだと読む
■「婀娜」とは、「女性の色っぽくなまめかしいさま」という意味だそうです。また、「美しくたおやか」という意味もあります。「たおやか」は「姿、形がほっそりとして動きがしなやかなさま」だそうです。
□「婀娜な年増」といえば、フェロモンを振り撒いている30代の女性でしょうか。40代も入るかな。50代も含めておかないと叱られるかな。
□昭和4年(1929年)の流行歌に「♪東京行進曲」という歌謡曲があります。中山晋平(しんぺい)作曲、西条八十(やそ)作詞、佐藤千夜子(ちやこ)が歌ったとのこと。その昔、NHKの連続テレビ小説「いちばん星」で描かれた女性歌手ですね。
---昔恋しい 銀座の柳
---仇(あだ)な年増を 誰が知ろ
---ジャズで踊って リキュルで更けて
---明けりゃダンサーの 涙雨
「仇」という漢字が使われることもあるんですね。
□「不如帰」の中では、「…婀娜めきたる島田の障子(しょうじ)に映るか…」と使われていました。島田は髪型の一種、未婚・花柳界の女性が多く結ったらしい。変種である文金高島田(ぶんきんたかしまだ)は、人生の墓場の入り口付近でときどき見かけます。
◆参考*1:HP「図書カード:不如帰 小説」
http://www.aozora.gr.jp/cards/000280/card1706.html#download
◇*2HP「一番はじめは」(泣いて血を吐くほととぎす)
http://www.mahoroba.ne.jp/~gonbe007/hog/shouka/ichibanhajimewa.html
◇*3HP「ジョン万次郎が帰国した日。ゴールド・ラッシュで一山当てようとしたの?」
http://blog.q-q.jp/200902/article_4.html
◇*4HP「常用漢字表」
http://www.bunka.go.jp/kokugo/main.asp?fl=list&id=1000003929&clc=1000000068
◇辞書「字通」白川静、平凡社
◇Yahoo! J Dictionaries 大辞泉
◇Yahoo! J Dictionaries 大辞林

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徳富蘇峰(そほう)が「國民新聞」を創刊した日。現実主義の新聞だったの?
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