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zoom RSS 慣用句の誤用。「五十歩百歩の素晴らしい出来栄え」は誤りなの?

<<   作成日時 : 2009/05/29 06:40   >>

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★日本語★
問題:「助長」という言葉があります。今では「力を添えて、ある物事の成長や発展を助けること。また、ある傾向をより著しくさせること」という意味で使われます。
■もともとは「不必要な力添えをして、かえって害すること」という意味だったらしい。「孟子」という本の公孫丑(こうそんちゅう)上という箇所に出て来る故事に由来するそうです。苗を早く生長させようと思った宋の人が苗を引き抜いて枯らしてしまったという少しお間抜けな話が出所らしい。
■現在の使われかたは本来の意味とは異なるようです。新聞や雑誌では「不安を助長する」とか「傾向を助長する」という表現をよく見かけます。本来の使いかたに従えば、「不安や傾向を助長すれば、不安や傾向は引っこ抜かれて枯れてしまう」はずです。意味は逆になります。
■でも、言葉は多数決の原理に従います。現代では、新聞・雑誌の使いかたも誤用ではないことになっているようです。
■本日は、慣用句の使いかたの誤りについてのクイズです。以下に挙げる事例は、「助長」の事例ほどには市民権を得ていない小さな誤用が含まれています。それぞれ何がいけないのでしょうか? 
[い]「メッシもC・ロナウドも素晴らしい選手だね。五十歩百歩といえるだろう」
[ろ]「特攻精神もいいけど、死んで花見ができるものじゃなし、まずはなんとか生き延びることを考えるべきさ」
[は]「あいつは上司の不始末を漏らさなかったので査定が高くなり、ボーナスが少し増えたらしい。まさに『沈黙は金』だね」
[に]「何がきっかけになるかわからない。『袖擦り合うも多少の縁』というじゃないか」
[ほ]「準備は十分だ。角を矯(た)めて牛を殺して見せるさ」
(答えはずっと下↓ スクロールして下さい)

























★日本語★
正解:各項目を参照してください
説明:[い]「メッシもC・ロナウドも素晴らしいサッカー選手だね。五十歩百歩といえるだろう」
■「五十歩百歩」は、「本質的にはおなじである」という意味だそうです。でも、素晴らしさを称える場合には使われません。「5000万円の借金も1億円の借金も五十歩百歩だろう」とは使えそうです。でも、「5000万円の年収も1億円の年収も〜」とは言わないようですね。
□この言葉は「助長」と同様に「孟子」という本に出て来るらしい。梁恵王(りょうけいおう)上に記された寓話が元になっているとのこと。戦闘の際に50歩逃げた者が100歩逃げた者を臆病だと笑ったが、逃げたことには変わりはないという意味らしい。近い言葉でいえば「目糞鼻糞を笑う」でしょうかね。
[ろ]「特攻精神もいいけど、死んで花見ができるものじゃなし、まずはなんとか生き延びることを考えるべきさ」
■正しくは、「死んで花実が生(な)るものじゃなし(生るものか)」だそうです。「生きていてこそいい時もあるので、死んでしまえば、万事おしまい」という意味だそうです。「死んだら花見もできなくなる」という意味ではないらしい。ちょっとした違いですけどね。「死んで花実が咲くものか(咲くじゃなし)」とも使われるようです。
□日本では年間3万人前後ものかたが自らの命を捨てているらしい。残念なことです。煙草の箱にはかつて「健康のためタバコの吸い過ぎに注意しましょう」という表示がありました。これを真似して、ロープや練炭、硫化水素を発生させる薬品などの箱には、「死んで花実が咲くものか」と記すべきかもしれません。あまり効果ないかな。
[は]「あいつは上司の不始末を漏らさなかったので査定が高くなり、ボーナスが少し増えたらしい。まさに『沈黙は金』だね」
■「沈黙は金」の「金」は「キン」と読みます。「かね」ではないらしい。口止め料という意味もないようです。
□そもそもは、「沈黙は金、雄弁は銀」という言葉で、「沈黙を守るほうがすぐれた弁舌よりまさる」という意味らしい。西洋の諺だそうです。西洋人といえば自己主張が大好きな連中かと思いましたが、口を閉じているほうが得になるという考えもあるようですね。
□余談です。昭和42年(1967年)ごろのヒット曲に「♪サイレンス・イズ・ゴールデン」というハーモニーの美しい合唱曲がありました。トレメローズというグループの代表曲のひとつだそうです。連中は、昭和37年(1962年)にビートルズを蹴落としてDeccaというレコード会社のオーディションに受かったそうです。ビートルズほどには成功しなかったようですが、「♪サイレンス・イズ・ゴールデン」は人々の記憶に残っているようです。
[に]「何がきっかけになるかわからない。『袖擦り合うも多少の縁』というじゃないか」
■正しくは、「袖振り合うも多生の縁(そでふりあうもたしょうのえん)」だそうです。「多生」は「他生」でもいいらしい。でも「多少」ではないと辞書に明記されています。また、「振り合う」が正しく、「擦り合う」は誤りと参考資料*1は明言しています。
□「道で人と袖を触れあうようなちょっとしたことでも、前世からの因縁によるものだ」という意味らしい。「多生」は仏教の考えかたで、「何度も生まれかわること」とのこと。「他生」も仏教の言葉で、前世(ゼンセ)と来世(ライセ)のことだそうです。ちなみに、現在の世の中は今生(コンジョウ)と呼ぶようです。
□余談です。シェークスピアの「ジュリアス・シーザー」という戯曲の中に、「再び会うことがあればその時は笑顔で。なければこれが今生の別れ」とかいう台詞があったと記憶します。若いころ読んで「今生の別れ」の意味がいまひとつはっきりせず、なんとなく気になっていました。でも怠け者ですから辞書は引きません。今日ようやくそのもやもやした気分が晴れました。ハハハ。
[ほ]「準備は十分だ。角を矯(た)めて牛を殺して見せるさ」
■こう発言されたかたは、牛を強敵と考え、「ためる」を「力をたくわえる、準備を整える」という意味と勘違いされているのかもしれません。「角を矯めて牛を殺す」は、「小さな欠点を直そうとして、かえって全体をだめにしてしまうたとえ」だそうです。ずいぶん意味が異なります。
□「矯める」は「曲がっているものを伸ばしたり、まっすぐなものを曲げたりして、形を整える」という意味らしい。「矯」という漢字は「矯正(キョウセイ)」という熟語にも使われます。「欠点・悪習などを正常な状態に直すこと」ですね。
□牛の角はもともと湾曲しています。「角を矯めて牛を殺す」では、これをまっすぐにしようとして牛を殺してしまったらしい。ちょっとわからないのは、牛の角はかなり硬い。どんな方法でまっすぐにしようとしたのかな。金槌でガンガン叩いたのでしょうか。炭火で炙(あぶ)ったのかもしれません。「牛角」ですものね。
◆参考*1:書籍「勘違いことばの辞典」西谷裕子編、東京堂出版
◇辞書「字通」白川静、平凡社
◇Yahoo! J Dictionaries 大辞泉
◇Yahoo! J Dictionaries 大辞林
◇*2HP「漢検2級程度の書き取り。「肝にメイズル」のメイズルはどう書くの?」
http://blog.q-q.jp/200805/article_16.html

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コメント(2件)

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>そもそもは、「沈黙は金、雄弁は銀」という言葉で、「沈黙を守るほうがすぐれた弁舌よりまさる」という意味らしい。西洋の諺だそうです。西洋人といえば自己主張が大好きな連中かと思いましたが、口を閉じているほうが得になるという考えもあるようですね。

この言葉は金よりも銀のほうが価値が高かった時代に生まれた言葉で本来の意味は「雄弁は金、沈黙は銀」ですよ。

慣用句の誤用を指摘する場でこのような認識誤りを披露されるのは感心しませんね。
むの
2012/07/14 22:53
コメントをありがとうございます。

 ご教示いただき恐縮です。
 ところで、むの様が「金よりも銀のほうが価値が高かった時代に生まれた言葉で本来の意味は「雄弁は金、沈黙は銀」ですよ…とおっしゃっている根拠はどういったところにあるのでしょうか。

 ネットを調べてみると、たしかにその種の説が流れているのは見かけますが、素町人が眺める限り、どのページにも「確かな根拠」というほどのものが見当たりません。そもそも引用元が示されていないものが多くて困ります。

 せっかくですからこの機会に勉強をしたいと思います。
 むの様が「なるほどこれは確度の高い情報だ」と思われた参考資料をご紹介いただければ幸いです。
m(_ _)m
むの様<素町人
2012/07/15 11:18

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