肺病患者が治療の実験台にされた気体は動物のオナラなの?

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★科学★
問題:18世紀の終わりごろ。イギリスのブリストルという港町に保養客が多数訪れたそうです。温泉が湧き出ていたらしい。延宝5(1677)年にチャールズ2世という王様の王妃がこの地を訪れたのがきっかけになったようです。その後は保養客で賑わうようになっとのこと。保養客の多くは、近くの優雅な別荘地であるダウリー・スクエアに滞在したそうです。
■寛政10(1798)年10月。トーマス・ベドーズという医者が保養客をあてこんで気体研究所を設立します。気体研究所では、当時の化学者、ジョゼフ・プリーストリーやラボアジェらが発見したさまざまな気体について、医学へどのように応用できるかを研究したそうです。入院患者は8人、外来患者は1日に80人も来る日があったらしい。ほとんどの患者は、当時、不治の病とされていた肺病を患っていたとのこと。治療効果や副作用が不明なのに怪しい気体を吸い込みにやってくるわけです。かなり重症であり、「ワラをもつかむ」思いの人たちなのかもしれません。
■ちなみに、この気体研究所の運営費は、患者からの支払いだけでなく、個人からの寄付金にも頼っていたらしい。陶芸家のジョシア・ウェッジウッドという人物は1500ポンドを献金したようです。平成21(2009)年の1月に破綻した高級陶磁器メーカーの創業者だそうです*3。
■気体研究所では、さまざまな気体を患者に吸わせて効能を確認していったそうです。ではこの研究所で患者が実際に吸わされていたガスは、次のうちどれでしょうか?
[い]豚のオナラ
[ろ]牛のオナラ
[は]馬のオナラ
[に]山羊のオナラ
[ほ]兎のオナラ
(答えはずっと下↓ スクロールして下さい)

























★科学★
正解:[ろ]牛のオナラ
説明:ベドーズ医師は、牛は健康に有益な動物だと信じていたようです。牛が排出する気体には、肺病に効能があると予想しました。隣接する庭園に牛の小さな群れを飼いました。発生する気体を管を通して病室に送り込んだらしい。この場合の気体は、牛の呼気、すなわち吐く息とゲップとオナラが混合したものだったと推測されています。
■肺病にどの程度の効果があったかは不明だそうです。参考資料*1には、「『早く治って退院したい』という患者のモチベーションはさぞかし高まっただろう」と記されていました。牛のオナラやゲップを四六時中かがされたのでは、誰だって逃げ出したくなるでしょうね。
■ちなみに牛のゲップには、少なからぬ量のメタンガスが含まれているとのこと。メタンは炭酸ガスの20倍の温室効果があるらしい。温暖化の進行を早めるということで問題になっています*2。
■ところで、ベドーズ医師は、まるで無意味な実験・治療ばかりしていたのかといえば、必ずしもそうはいえないようです。たとえば、助手に雇われたハンフリー・デービーという19歳の青年は、亜酸化窒素の吸入には素晴らしい効果があることを発見したそうです。
■ハンフリー・デービー。どこかで聞いた名前だと思ったら、後にボルタの電池を使った電気分解で6つの元素を発見し、元素発見のレコードホルダーとなる人物です。著書「ロウソクの科学」や電気分解、電磁誘導の研究で知られるマイケル・ファラデーの指導教官ですね*4。
■ハンフリー・デービーは、亜酸化窒素に麻酔の作用があることを発見したそうです。そもそもはジョゼフ・プリーストリーが発見した気体らしい。現在では笑気ガスとも呼ばれます。現在でも、害の少ない安全な麻酔薬として使われているそうです。
■余談です。亜酸化窒素は、車のエンジン内に吸気して、大きなエネルギーを得ることが出来るそうです。第二次世界大戦中には、戦闘機のエンジンに使われたらしい。現在でもレースカーなどで使われるとのこと。空気には20%の酸素が含まれていますが、亜酸化窒素では36%の酸素が含まれているから大きなエネルギーを得られるとのこと。
■ちなみに亜酸化窒素も、温室効果ガスだそうです。Wikipediaによれば、炭酸ガスの310倍の温室効果があるとのこと。気体研究所で扱っていたガスには、けっこう温室効果の高いものがあったようですね。
◆参考*1:書籍「世界一役に立たない発明集」初版166~169頁、アダム・ハート=デイヴイス著、田中敦子翻訳、ISBN978-4-86020-238-5、ブルース・インターアクションズ
◇*2新聞「家畜ゲップのメタン、餌で除去 温室効果CO2の20倍」讀賣新聞 080519東京夕刊07頁
◇*3新聞「高級陶磁器のウェッジウッドが破綻 売り上げ落ち込み/イギリス」讀賣新聞090106  東京朝刊32頁
◇*4HP「イオンを命名したのは「ロウソクの科学」のおじさんなの?」
http://blog.q-q.jp/200902/article_38.html

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