イオンを命名したのは「ロウソクの科学」のおじさんなの?

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★科学★
問題:イオンというと何を思い出すでしょうか。スーパーなどを経営する流通企業かな。それとも英会話教室かな。マイナス・イオン発生装置などという健康器具かもしれません。理科系に強いかたは、化学で習ったイオン結合でしょうか。
■化学の授業で習うイオンは英語では「ion」と書くそうです。スーパーと英会話のほうは「AEON」らしい。「ion」は、「原子あるいは分子が、電子を授受することによって電荷を持ったもの」という意味だそうです。
■本日は、化学の授業で習うほうのイオンにまつわる雑学クイズです。次のうち正しい記述はどれでしょうか?
[い]イオンの発見はイタリアの科学者ボルタがアシストし、イギリスの科学者マイケル・ファラデーがゴールした
[ろ]イオンの名前の由来は、ギリシャ語の「永遠」という単語から来ている
[は]マイケル・ファラデーの師匠である学者は、電気分解の実験をむやみにおこない、1人で3つの元素を発見した
[に]イオンの実体を突き止めたのはスウェーデン人の学者だったが、最初はまるで受け入れられなかった
[ほ]海岸や滝の近辺で気分が落ち着くのはマイナス・イオンの影響である
(答えはずっと下↓ スクロールして下さい)

























★科学★
正解:[い]と[に]、[ほ]が正しい
説明:[い]イオンの発見はイタリアの科学者ボルタがアシストし、イギリスの科学者マイケル・ファラデーがゴールした(○)
■イオンの発見は、水の電気分解によってもたらされたそうです。寛政12(1800)年、イタリアの科学者、アレッサンドロ・ボルタによってボルタの電池が開発されます。この電池を使って、多くの科学者が水に電気を通す実験をしたらしい。ボルタ電池が開発されたおなじ年、はやくもニコルソンとカーライルというイギリスの学者が水の電気分解を発見しています。電極の近辺になんだか小さな泡が出ているなと気づいたのでしょう。調べてみると、それは水素と酸素だとわかりました。この時までに、酸素と水素は発見されていたわけですね。
□科学者たちの1人、マイケル・ファラデーは厳密な実験を行ない、電気の性質を次々と明らかにしていきます。天保4(1833)年には「電気分解の法則」を発表したらしい。
□ファラデーは、「電気を流すと物質は電気の影響を受けて分解され、分解された物質が電極に向かう」と考えたようです。ファラデーはこの「分解された物質」をイオンと呼びました。「ロウソクの科学」で知られる科学者は、イオンの名付け親だったらしい。
[ろ]イオンの名前の由来は、ギリシャ語の「永遠」という単語から来ている(×)
■正しくは、「ギリシャ語の『行く』という単語に由来する」だそうです。ファラデー氏は、陰極に向かう物質は陽の性質があると考え、陽イオンと名づけました。陽極に向かう物質は当然陰イオンですね。
□余談ですが、流通企業であるイオンの名前は、ラテン語の「永遠」を意味する「アイオーン」から来ているそうです。
[は]マイケル・ファラデーの師匠である学者は、電気分解の実験をむやみにおこない、1人で3つの元素を発見した(×)
■正しくは、「…6つの元素を発見した」だそうです。水が電気分解されて水素と酸素に分かれるなら、他のものだったら何に分かれるのか。たとえば醤油は? ケチャップは? ウースターソースは? コーラは?
□材料に食品しか思いつかないのは素人です。科学者は食品のほかにもいろいろ試してみたようです。電圧をかければ分解が進むとわかったので、電池を直列にむやみにたくさんつないだりしたらしい。ファラデーの師匠であるハンフリー・デービーという学者は、250ものボルタ電池をつなげて実験したと言われます。草木灰の電気分解からカリウムを発見したらしい。その他に、ナトリウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、マグネシウムの合計6つの元素を発見しているそうです。これは元素発見の最多記録とのこと。
□余談ですが、ハンフリー・デービーという学者は、「自分の最大の発見はマイケル・ファラデーである」と言っていたらしい。デービーの一般向け公開講義に参加したファラデーが、すばらしい図入りの聴講記録をデービーに製本して贈ったことで2人は出会ったようです*6。
□ファラデーは貧しい家で育ち、教育もないし振る舞いもいわゆる紳士ではありません。デービーの奥さんはファラデーを蔑んでいたと言われます。でも、旦那のほうは、ファラデー青年が19世紀最大の学者に育って行くのを暖かく見守っていたようです。
□デービー自身も木彫り職人の息子で、薬局に勤めていた若いころ、独学で化学を学んだ苦労人らしい。成功してから結婚した奥さんは裕福な未亡人だったとのこと。な~るほど。
□なお、Wikipediaによると、ハンフリー・デービーは晩年になってマイケル・ファラデーに嫉妬し、「ウラストン(という学者)の研究を盗んだ」と非難しているそうです。ウラストン氏本人は、被害を否定しているとのこと。デービー氏は妙に人間臭くて面白いですね。
[に]イオンの実体を突き止めたのはスウェーデン人の学者だったが、最初はまるで受け入れられなかった(○)
■ファラデーは、電気分解の法則を導き、イオンの実体に他の人よりは迫りました。でも、イオンが「電気を帯びた原子あるいは原子団」であることには気づきませんでした。なにしろ当時は、原子はそれ以上分割できない最小の存在であるという迷信が信じられていたのですから、やむをえないところかもしれません。
□スウェーデン人のスバンテ・アレニウスという人物が、他の人に先んじてイオンの実体に気づきましたが、やはり迷信に邪魔されて他の学者には信じてもらえませんでした。のちに原子にも内部構造があることが明らかにされ、ようやくアレニウスの説の正しさが証明されます。アレニウス氏は明治36(1903)年にノーベル賞を受賞しているとのこと。
[ほ]海岸や滝の近辺で気分が落ち着くのはマイナス・イオンの影響である(○)
■Wikipediaによると、マイナス・イオンという言葉は厳密に言えば科学の用語ではないらしい。定まった科学的定義がないとのこと。参考資料*7によると、日本でしか通用しない言葉だそうです。ただし、学者の中にも「負イオン、負の大気イオン」という意味で使う人がいるという妙な状況だそうです*2。
□高原や海岸ではマイナス・イオンというか、マイナスに帯電している浮遊物質が多いらしい。海岸では岸に打ち寄せる海水の粒子が飛散し、滝では叩きつけられて水が飛散しているためにマイナス・イオンが生まれるといわれます。高原でなぜ多いのかはよくわかりません。
□参考資料*5によると、マイナス・イオンは副交感神経を刺激するそうです。副交感神経は心臓の働きをおだやかにし、眠りにつくときのような弛緩した状態にするとのこと。そのため、くつろいだゆったりした気分が生まれ、身体にいいと言われているそうです*5。
◆参考*1:書籍「化学の”カラクリ”がよくわかる イオンと元素」別冊Newton、ISBN978-4-345-51807-8、ニュートンプレス
◇*2HP「イオン Wikipedia」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%B3
◇*3HP「マイケル・ファラデー Wikipedia」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%B1%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%A9%E3%83%87%E3%83%BC
◇*4HP「ハンフリー・デービー Wikipedia」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%87%E3%83%BC%E3%83%93%E3%83%BC
◇*5書籍「頭にやさしい雑学読本3」竹内均(たけうちひとし)編、ISBN4-8379-0943-4、三笠書房
◇*6HP「『ロウソクの科学』で知られるファラデーの逸話とは?」
http://blog.q-q.jp/200601/article_66.html
◇*7書籍「知るほどハマル!化学の不思議」吉村忠与志(よしむらただよし)著、1SBN978-4-7741-3017-0、技術評論社

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