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●●●★日本語★●●● 問題:会社の社長さんが、地方支社から来た社員に対して、「いつ東京に出て来たの?」という質問をします。これはよくあることでしょう。でも、質問者のほうが下位の立場だったら、「いつ東京にお見えですか?」と聞くでしょうね。あるいは、「いつ東京にいらっしゃいましたか?」かな。 ■おなじ社長さんでも下町にあるガテン系零細企業の場合は、「いつ東京に出てきたんだい?」となるかもしれません。敬語以外の部分も微妙にかわるようです。 ■身分や立場によって、表現が変わるのは昔もおなじだったようです。では、次の[い]〜[ほ]の言いかたは、後ろの[1]〜[5]の立場の誰の発言でしょうか? それぞれの発言者をあててください。 [い]「いつ江戸へ参られた」 [ろ]「いつ江戸へおいでなせえました」 [は]「いつ江戸へござりました」 [に]「いつ江戸へござらしゃった」 [ほ]「いつ江戸へ来なさんした」」 [1]芸者 [2]職人や鳶職 [3]町家の母親 [4]僧侶や医師 [5]武家の男性 (答えはずっと下↓ スクロールして下さい) ●●●★日本語★●●● 正解: [い]「いつ江戸へ参られた」---------[5]武家の男性 [ろ]「いつ江戸へおいでなせえました」--[2]職人や鳶職 [は]「いつ江戸へござりました」-------[4]僧侶や医師 [に]「いつ江戸へござらしゃった」------[3]町家の母親 [ほ]「いつ江戸へ来なさんした」-----[1]芸者 説明: 参考にした資料は「知って合点 江戸ことば」という本です*1。参考資料*1の中でも引用です。元をたどると「江戸語・東京語・標準語」(水原明人著、講談社現代新書)という本に掲載されていた情報らしい。昭和56(1981)年に亡くなった二世中村芝鶴(なかむらしかく)という歌舞伎役者が、いろいろな立場の役をこなした際に使った台詞を記録したもののようです。 ■参考資料*1の著者によれば、いずれもたいへん丁寧な言いかただそうです。ただし、芝居の役ということですから、質問する相手がいつもおなじわけではないでしょう。発言者と相手の立場の差の大小があることは含んでおいたほうがいいかもしれません。でも、とても面白い資料だと思ったので、ご紹介しました。 ■他にも次のような立場の人の台詞が紹介されていました。 ---武家の女性「いつ江戸へお越しでござりました」 ---町家の主人「いつ江戸へおいでなされました」 「いつ江戸へござった(目下の者に対して?)」 ---下働き「いつ江戸へごらっしゃりました」 ---遊女「いつ江戸へ来やしゃんした」 ---遊女の太夫「いつ江戸へござんした」 ■職人がもうすこしくだけて言うときは、「いつ江戸へ来なしたね」となるそうです。さらにくだけると、「いつ江戸へ来たのかえ」となり、究極にくだければ、「いつ江戸へ来やがった」となるらしい。最後のはけんか腰に聞こえますね。 ■時代劇を書く戯曲家や台本作者。あるいは、江戸時代の人々を描写をする落語家、講談師、浪曲家。彼らは、こうした使い分けが必要になるんですね。大変です。 ■テレビドラマ化もされているので、「半七捕物帳」をご存じのかたは多いかと思います。岡本綺堂(おかもときどう)の原作は幕末の江戸を活写していると評されます。参考資料*1の中では、江戸時代末期の山の手・下町両方の言葉を上手に操っていると書かれていました。 ■岡本綺堂は明治5(1872)年に生まれた旧幕臣の次男だそうです。山の手生まれですが、下町の暮らしも長く、両方の言葉が耳にしみついているらしい。いわばネイティブスピーカーです。現代の作家たちは、外国語を学ぶように、江戸時代の言葉を知識として身につけた上で、作品をつくることになります。ハンディが大きすぎます。岡本綺堂のような作家は、もう二度と現われないのかもしれませんね。 ◆参考*1:書籍「知って合点江戸ことば」新書初版36〜42頁、大野敏明著、ISBN4-16-660145-8、文藝春秋 ぬけられます→日本語雑学クイズ一覧 |
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