移植時の拒絶反応抑制技術が臨床試験へ。免疫は残るのになぜ拒絶されないの?

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★科学★
問題:英語では、移植のことを「transplant」と呼ぶそうです。もとの意味は「植物の植え替え」らしい。転じて、臓器移植の意味でも使われるようです。
■植物ならば、植え替えは割りと簡単です。ちゃんと根がはるように注意すればいいそうです。動物の臓器移植に相当するのは接ぎ木でしょうか。この場合も植物は鷹揚です。台にされた木が上に載る木を追い出すなんてことはしません。カボチャにキューリを接ぎ木して果実表面に白い粉のないキューリをつくっているそうです。ユウガオ、あるいはカボチャ、トウガンなどの台にスイカを接ぎ木するそうです。つる割れ病という病気にかからないでスイカを収穫できるらしい。
■動物の場合はちょっと事情が違います。免疫という仕組みがあります。異物が侵入すると攻撃する仕掛けになっています。移植された他人の臓器は、ホントは役に立つわけですが、免疫システムは敵とみなします。拒絶反応と呼ばれます。
■現状では、免疫抑制剤で拒絶反応を回避するらしい。でも、他の異物、たとえばウイルス、細菌類に対しても免疫力が弱まってしまいます。免疫抑制剤そのものの副作用もあるそうです。
■免疫抑制剤が効いたとしても、慢性拒絶という反応が起きて、1~2年で血管が固くなる場合もあるそうです。例の万能細胞をはじめとする再生医療の研究がもっと進んで実用化すれば、こうした問題は解消するのかもしれません。でも実現はもう少し先の話のようです。
■最近、拒絶反応を起こさせないで臓器を移植する技術が順天堂大学の研究グループによって開発されたそうです。すでに猿を使った実験では成功しているとのこと。人間での臨床試験の認可がおりたらしい。
■では、猿で成功したという新技術は、次のどの内臓移植でしょうか?
[い]心臓移植
[ろ]腎臓移植
[は]肺臓移植
[に]肝臓移植
[ほ]膵臓移植
(答えはずっと下↓ スクロールして下さい)

























★科学★
正解:[ろ]腎臓移植
説明:腎臓は、比較的拒絶反応の強い臓器だそうです。移植手術の件数も多いらしい。平成19(2007)年の新聞記事によれば、日本では年間約800例だそうです。生体移植の5年生着率は75%ほどらしい*2。年間200例ほどは、拒絶反応などで失敗に終わるようです。
■順天堂大学の研究グループの実験では、新技術を使って腎臓移植を受けたアカゲザルは、免疫抑制剤の投与なしで5年以上健康に生きているそうです。
■新技術は、免疫の仕組みの中で、司令塔の役割を果たしている「ヘルパーT細胞」と呼ばれる組織に着目したものらしい。ヘルパーT細胞。どこかで聞いた名前です。そうそう、エイズの話題の中でときどき登場してきました。
■エイズは免疫機構が破壊される病気だそうです。進行すると、ヘルパーT細胞が減り、免疫力が弱くなり、カリニ肺炎、トキソプラズマ症、結核などにかかって亡くなってしまうらしい。
■ヘルパーT細胞が働き始めると、異物に対して攻撃をしかけるようです。そのきっかけをつくるのは2つのシグナルらしい。ひとつはヘルパーT細胞が異物を認識するためのシグナル。もうひとつはヘルパーT細胞を活性化させるためのシグナルだそうです。2つ目のシグナルは、「抗原提示細胞」と呼ばれる細胞が持つCD80あるいはCD86という分子がヘルパーT細胞の表面に結合することで伝わるそうです。これがなければ、ヘルパーT細胞は働き出さないとのこと。
■順天堂大の研究グループは、腎臓提供側の猿のリンパ球と受け手側の猿のリンパ球を混ぜ合わせ、体外で培養したそうです。リンパ球にはヘルパーT細胞が含まれているらしい。本来なら、ヘルパーT細胞が異物に反応して活性化するはずです。でも、ここに2つ目のシグナルを邪魔する物質も一緒に混ぜ合わせたそうです。それはCD80やCD86という分子に結合する物質(抗体)だそうです。CD80やCD86は、ヘルパーT細胞の表面に結合できなくなります。腎臓提供側の細胞に対して、受け手側のヘルパーT細胞は活性化されなくなったらしい。この効果は、シグナルを邪魔する物質(抗体)の投与をやめた後も続いたとのこと。
■このヘルパーT細胞を腎臓移植を受けた猿の体内にもどしたそうです。拒絶反応が起きなくなったとのこと。その一方で、他の異物に対する免疫は正常に動作するそうです。
■体外で培養されている間に、ヘルパーT細胞は腎臓提供元の猿の細胞に対しては活性化しないことが記憶されたらしい。その仕組みはよくわかっていないそうですが、実験結果からは、いまのところそのように考えられています。
■現在のところ、腎臓移植に応用される予定ですが、他の臓器移植での可能性も十分に考えられるらしい。実際の臨床試験はこの秋から始まる予定とのこと。うまくいってほしいですね。
◆参考*1:雑誌「メディカル・トピックス 拒絶反応のない移植手術,実現へ」Newton 0809月号128頁、担当筆者編集部赤谷拓和、ニュートンプレス
◇*2新聞「[スキャナー]比が腎臓売買公認へ 「倫理」「安全」懸念の声」読売新聞070202東京朝刊03頁

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