油屋騒動が起きた日。今でも歌舞伎で演じられる事件の加害者はどんな人?

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★歴史★
問題:西暦1796年の今日、6月9日。旧暦では寛政8年5月4日。伊勢古市(ふるいち)の妓楼(ぎろう、女郎屋)油屋(あぶらや)で刃傷沙汰(にんじょうざた)がありました。遊女にふられた酔客が逆上し、脇差しを振り回して2人を殺し数人が負傷したとのこと。
●もてない客が野暮なことに乱暴狼藉を働いた。たったそれだけの事件なのですが、伊勢参りの人が多く寄り道した場所だけに、この出来事は全国に伝えられたそうです。歌舞伎の題材にも取り上げられ、現在でもよく上演されるとのこと。
●では、212年前の今日、亡くなったり傷ついたりした気の毒な被害者たちと、もてなかった客に同情しつつ、油屋騒動と伊勢古市に関する雑学クイズです。次のうちで正しい記述はどれでしょうか?
[い]舞台となった伊勢古市は、当時は江戸の吉原、京都の島原と並んで三大遊郭と言われるほどに繁盛していた
[ろ]加害者は紺屋の職人であり、長いあいだかかって貯めた金をつかって遊びに来ていた
[は]事件後、加害者は逃亡して行方をくらませている。雇い主が連座で仕置きを受けた
[に]事件後、油屋には野次馬根性にあふれた観光客が多く訪れ、大繁盛した
[ほ]事件に取材して「籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのゑひ(えい)ざめ)」という歌舞伎が制作された
(答えはずっと下↓ スクロールして下さい)

























★歴史★
正解:[い]と[に]が正しい
説明:●[い]舞台となった伊勢古市は、当時は江戸の吉原、京都の島原と並んで三大遊郭と言われるほどに繁盛していた(○)
伊勢古市は、伊勢市にある地名だそうです。
○伊勢古市には遊郭70軒、遊女1000人、歌舞伎を上演する劇場も数軒あったと言われます。当時は活気に溢れていたそうです。油屋は部屋持ちの遊女だけでも24人を数えたという大見世(おおみせ)とのこと。備前屋、杉本屋とならんで三本の指に入ったらしい。いちばんの大見世は備前屋で、大広間「桜の間」があり、遊女が伊勢音頭の総踊りをして客をもてなしたそうです(口絵参照)*6。
○余談です。アニメ「千と千尋の神隠し」の舞台は油屋という銭湯です。スタジオジブリのアニメ作家高畑勲(たかはたいさお)の故郷は伊勢市だそうです。Wikipediaでは、伊勢古市の油屋と「千と千尋の~」の油屋の関係は薄いという説を唱えていました。
○話を元に戻します。江戸時代の旅行は、多くの場合、伊勢参りとか大山参りなど、信仰が理由になっているようです。神信心(かみしんじん)が目的だと通行手形が発行されやすかったのでしょうか。でも、旅行者の本音は行楽にもあったらしい。
○伊勢古市には、「伊勢参り 大神宮にも ちょっと寄り」という川柳があったとのこと。精進落とし(しょうじんおとし)にちょっと遊ぶのではありません。古市のほうが本来の目的なんですね。いわば買春ツァーです。この言葉は、現代ではマイナスイメージらしい。でも、当時は法にも道徳にも触れなかったようです。時代は進歩したのでしょうか。それとも偽善が進んだだけなのでしょうか。
●[ろ]加害者は紺屋の職人であり、長いあいだかかって貯めた金をつかって遊びに来ていた(×)
正しくは、「加害者は孫福斎(まごふくいつき)という医者だった」だそうです。相方はお紺(こん)という遊女だったらしい。でも孫福さんは振られます。お紺は去ってしまったようです。孫福さんは怒ります。こういう客を遊郭では野暮と呼んで馬鹿にします。でも、客にしてみれば高い金を出しているのですから面白くない。
○女性のはべる酒席に無縁のかたのために申し上げれば、楽しい場合とそうでない場合は、かなり歴然とわかれます。都々逸でいえば、「♪もててるお方と もてないお方 機嫌のいい顔 わるい顔」となります。機嫌が悪いぐらいでは済まず、激怒する人もいます。落語「五人廻し」には、振られた連中の気持ちが面白おかしく描かれています*5。
○孫福さん、いったんはなだめられ、帰ろうとします。でも玄関口で預けていた脇差しを受け取った瞬間に屈辱感が蘇ります。いきなり下女に一太刀浴びせ、下男も切り捨てます。もうブレーキが効きません。血の滴る刀をさげ、遊郭中お紺を探し回ります。邪魔だてする者はすべて刀で払いのけます。昨日(080608)の秋葉原みたいな惨状です。
●[は]事件後、加害者は逃亡して行方をくらませている。雇い主が連座で仕置きを受けた(×)
孫福氏は目指す敵を見つけることが出来ず、結局トンヅラしちゃったようです。我に返った孫福氏は、たいへんなことをしでかしたと反省したでしょうね。もちろん家にも帰れません。逃げ切れないと観念したものか、10日ほど潜伏したあとで自ら腹を切ったそうです。
●[に]事件後、油屋には野次馬根性にあふれた観光客が多く訪れ、大繁盛した(○)
江戸時代ですから、クチコミが大きな情報伝達装置です。伊勢参りに来た客たちが土産話にこの話をしたんでしょう。以後、お紺さん見たさの客で油屋は大繁盛したとのこと。油屋側からみれば、「災い転じて孫福」、失礼、転じて福ですね。
●[ほ]事件に取材して「籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのゑひ(えい)ざめ)」という歌舞伎が制作された(×)
正しくは、「事件に取材して『伊勢音頭恋寝刀(いせおんどこいのねたば))』という歌舞伎が制作された」だそうです。
○ちなみに「籠釣瓶花街酔醒」のほうも、遊女に振られた客が妖刀「籠釣瓶」で復讐するというお話です。振られ男のぼやき、「花魁(おいらん)、そりゃあんまりつれなかろうぜ」という台詞が有名です。籠釣瓶は村正という刀鍛冶の作ったものとも言われます*4。
◆参考*1:HP「油屋騒動 – Wikipedia」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%B9%E5%B1%8B%E9%A8%92%E5%8B%95
◇*2HP「古市 (伊勢市) – Wikipedia」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%A4%E5%B8%82_%28%E4%BC%8A%E5%8B%A2%E5%B8%82%29
◇*3HP「伊勢音頭 – Wikipedia」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%8A%E5%8B%A2%E9%9F%B3%E9%A0%AD
◇*4HP「名刀のお話。初代正宗と初代村正は師弟関係にあったの?」
http://blog.q-q.jp/200711/article_1.html
◇*5CD「特選落語名人会8『五人廻し/派手彦』」六代目三遊亭圓生、KICH3138、キングレコード
◇*6HP「古市の歴史」(口絵の参考にもさせて頂きました)
http://www.dairinji.com/furuiti.htm

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