「古事記」の研究書が100万部も売れたってホントなの?

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★歴史★
問題:西暦712年の今日、3月13日。旧暦では和銅5年1月28日に「古事記(こじき、ふることふみ)」が完成し、元明(げんめい)天皇に献上されたそうです。元明天皇は43代目の天皇で、女性らしい。
●ご存じのとおり、「古事記」は日本で最古の歴史書です。ほぼ同時期に編纂された「日本書紀」は勅撰の正史です。「古事記」は勅撰にあらずという見方もあるらしい。でも、40代の天武(てんむ)天皇が序文に「帝紀(ていぎ、天皇の系譜記録)を撰録(せんろく)し、旧辞を討覈(とうかく、調べ考える)して、偽りを削り実を定めて、後葉(こうよう、後世)に流(つた)へむと欲(おも)ふ」と記しているとのこと。天皇家が命じて作らせたようにも見えます。
●編集は太安万侶(おおのやすまろ)、口述が稗田阿礼(ひえだのあれ)らしい。稗田阿礼は語り部(かたりべ)だそうです。古い物語などを暗記し、必要に応じて話す役目の人です。人間の記憶に頼っていた情報を紙の上に定着させる作業が行なわれたらしい。媒体の変換ですね。すでに6世紀半ばごろからこの作業は行なわれていたとも言われます。ただし、現在まで伝わるのは「古事記」が最古のようです。
●では、1300年ほど前の完成を祝し、「古事記」にまつわる雑学クイズです。次のうちで正しい記述はどれでしょうか?
[い]古事記は5部に別れている。神話の部分。天皇の系譜の部分。他の国との外交の記録。法と主な裁判についての記述。神様に対する祈りを記した部分がある
[ろ]残されているいちばん古い写本は14世紀の物であり、重要文化財に指定されている
[は]古事記研究の本には、100万部を売った商品もある
[に]古事記によれば、イザナミの遺骸は安来節の聞こえる土地に葬られた
[ほ]神武天皇から33代目の天皇までの記述があるけど、記録から確認できるのは15代目以降と言われている
(答えはずっと下↓ スクロールして下さい)

























★歴史★
正解:[ろ]と[は]、[に]、[ほ]が正しい
説明:●[い]古事記は5部に別れている。神話の部分。天皇の系譜の部分。他の国との外交の記録。法と主な裁判についての記述。神様に対する祈りを記した部分がある(×)
正しくは、「古事記は2部に別れている。神話の部分。天皇の系譜の部分である」だそうです。上中下の3巻があり、上は神話。中は1~15代、下は16~33代の天皇について記述されているとのこと。
●[ろ]残されているいちばん古い写本は14世紀の物であり、重要文化財に指定されている(○)
正確にいえば「国宝に指定されている」だそうです。応安4(1371)年から翌年にかけて真福寺(しんぷくじ)の僧・賢瑜(けんゆ)によって書き写されたものとのこと。参考資料*2には写真が掲げてありました。なお、国宝は「日本の文化財保護法によって国が指定した有形文化財(重要文化財)のうち、世界文化の見地から価値の高いものでたぐいない国民の宝たるもの」だそうです。早い話が、国宝は重要文化財でもあるらしい。いちばん古い写本が国宝であるならば、重要文化財であることに間違いはないので、ここでは○にさせていただきました。
●[は]古事記研究の本には、100万部を売った商品もある(○)
倉野憲司(くらのけんじ)という学者が書いた岩波文庫版の「古事記」は、いままで100万部ほどが売れたという噂です*1。国文科の学生さんが買うのかな。
●[に]古事記によれば、イザナミの遺骸は安来節の聞こえる土地に葬られた(○)
イザナギとイザナミは日本の父と母らしい。彼らがまぐわって日本の国土が出来たと聞いたことがあります。その後、イザナミはさまざまな神様を分娩します。火の神を出産なさったときに重傷の火傷を負います。救急車で搬送されましたがタライ回しにあい、ついに亡くなります。亡骸は「古事記」によれば現在の島根県安来市に、「日本書紀」によれば紀伊熊野の有馬村に、葬られたとのこと。
●[ほ]神武天皇から33代目の天皇までの記述があるけど、記録から確認できるのは15代目以降と言われている(○)
15代目の天皇は応神(おうじん)天皇だそうです。このかたは他の証拠もあるらしく、実在した人らしい。お母さんである神功皇后(じんぐうこうごう)のお腹に3年もいたという伝説があります。この伝説には、医学者から異論が出そうですね。14代より前の天皇については、いまのところ裏付けとなる別の証拠が見つかっていないようです。
◆参考*1:HP「古事記 – Wikipedia」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%A4%E4%BA%8B%E8%A8%98
◇*2HP「国宝 真福寺本古事記上巻の影印とテキスト」
http://www.kojiki.org/seikai/jokan/jokan.htm
◇*3HP「イザナミ – Wikipedia」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%B6%E3%83%8A%E3%83%9F

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この記事へのコメント

大和島根
2008年11月01日 22:25
いま、薮田絃一郎著「ヤマト王権の誕生」が密かなブームになっていますが、
それによると大和にヤマト王権が出来た当初は鉄器をもった出雲族により興
されたとの説になっています。
 そうすると、がぜんあの有名な山陰の青銅器時代がおわり日本海沿岸で四隅突出墳丘墓
が作られ鉄器の製造が行われたあたりに感心が行きます。当時は、西谷と
安来-妻木晩田の2大勢力が形成され、そのどちらかがヤマト王権となったと
考えられるのですがどちらなんだろうと思ったりもします。
 西谷は出雲大社に近く、安来は古事記に記されたイザナミの神陵があるので神話との関係にも興味がわいてきます。
大和島根様<素町人
2008年11月04日 08:04
コメントをありがとうございます。

「ヤマト王権の誕生」という本が売れているとは知りませんでした。ありがとうございます。今度、読んでみます。
(^^;)
鉄王
2009年04月10日 21:43
 安来って温泉も有名なんですね。今度、旅行に行ってみたいです。
鉄王様<素町人
2009年04月11日 13:47
コメントをありがとうございます。

素町人も知りませんでしたが、安来は温泉も豊富だそうです。ぜひ、楽しんできてください。
(^^;)
八雲鉄男
2009年08月27日 14:26
 それってジブリ映画の「千と千尋の神隠し」に出てくる八百万の神々の温泉宿、油屋のモデルが安来にあったということでは?
八雲鉄男様<素町人
2009年08月27日 14:51
コメントをありがとうございます。

>八百万の神々の温泉宿、油屋のモデルが安来にあったということでは?
島根は神々と縁の深い土地柄ですから、そういうことになるのかもしれませんね。
(^^;)
たたら
2009年09月10日 20:35
スサノオがアマテラスに天叢雲剣を渡したのは、出雲が大和へ鉄器を供給したという、考古学的な見地と対応するのではと思います。しかし出雲神にはスサノオとオオクニヌシという2人の大物の神様がいるのかというのは、弥生後期の出雲の状況を見ればわかります。島根県安来市を中心とする東部出雲王朝(スサノオ)と島根県出雲市を中心とする西部出雲王朝(オオクニヌシ)があったのです。東部出雲王朝は早期に発達し、長きに渡って繁栄しヤマトへの鉄器供給を行った。西部出雲王朝は東部の分家として発達したが、東部よりも発展しやがて、北陸あたりまでの日本海沿岸に渡る大国家を作りました。それで大国主といわれます。しかし、それより少し遅れて大和が発展し、西部王朝は短命に終わり、これが国譲りに対応します。一方、大和から見ても東部王朝は本宗家だったので、スサノオとアマテラスは兄弟と言う設定になっていますが、この事情のため滅ぼさなかったと考えられ、この子孫が蘇我氏のような大豪族になって行くと思われます。
たたら様<素町人
2009年09月10日 21:30
コメントをありがとうございます。

 興味深いお話ですね。伝説は鉄器にまつわる歴史上の事実を反映しているということでしょうか。
 日本海側には銀(石見)や金(佐渡)や鉄のお話がありますけど、太平洋側ではそういったお話があまり目立たない。気のせいでしょうかね。
(^^;)
神話の里
2009年11月29日 12:37
しかし、安来は興味深いところですよね。「坂の上の雲」関係で日露戦争のことを調べているのですが、出雲風土記に安来ことが載っていて、出雲四大神の一柱野城大神がまつられていたとか。司馬遼太郎はこの神を部族神とした子孫があの有名な乃木大将だと指摘しています。
神話の里様<素町人
2009年11月29日 15:06
コメントをありがとうございます。

乃木大将は安来近辺に住んでいた部族の子孫だったわけですか。知りませんでした。お酒の好きな方と聞きますが、ご機嫌になるとどじょうすくいを踊ったのでしょうか。

うちの祖先は近江の出身と聞いたことがあります。さらに辿るとアフリカの出身でミトコンドリア・イブと呼ばれているらしい。DNAはつながっているらしいのですが、そのぐらい遠くなるとあまり親近感がありませんね。
(^^;)
メロン
2011年03月20日 14:46
スサノオはオロチ退治の時に、持っていた十握剣でオロチの尻尾を突いたとき、なかにあった草那芸之大刀にふれて剣の先が欠けたと古事記はいっている。つまり鉄製の剣が鋼製の大刀にふれ強度の高い鋼刀が鉄剣を折ったという説があります。なるほど安来は昔から鋼の名産地なのでこういう説には説得力がありますね。
メロン様<素町人
2011年03月20日 22:40
コメントをありがとうございます。

 手持ちの角川書店版の文庫本では「十拳の剣(とつかのつるぎ)」と表記されていましたが、なんだか刃先が欠けちゃったみたいですね。大蛇の尻尾にあった草薙の剣と激しく接触したようなことが記されていました。
 安来は古代において鉄・鋼の一大産地とWikipediaなどで読みました。なるほど。そういうことなんですね。勉強になりました。
m(_ _)m
S-MAGICファン
2012年05月20日 09:17
 それにしても安来鋼の里は偉大だ。
S-MAGICファン様<素町人
2012年05月20日 13:02
コメントをありがとうございます。
m(_ _)m
熊野不二越
2015年02月02日 18:51
 よくわかりませんが、十神山とか比婆山の考察が必要かと思われます。
熊野不二越様<素町人
2015年02月03日 07:23
コメントをありがとうございます。
m(_ _)m
中国山陰
2015年04月03日 00:36
 結局、もとをただせば日立金属さんなんですね。
中国山陰様<素町人
2015年04月03日 08:21
コメントをありがとうございます。

m(_ _)m
精密ツール
2015年05月08日 00:12
 SLD-MAGIC最高ですね。
名古屋特殊鋼
2016年02月24日 20:38
 米子製鋼でもお世話になっています。
ダイヤモンド境界潤滑
2016年07月11日 21:31
 やはり、近代においても百年元年合金設計というわれる鉄鋼材料の革命があったらしく、それにより安来鋼は
多くの流通業者の風説に負けず広まったと亡くなった気骨の鉄鋼技術者の叔父がいっておりました。
ダイヤモンド境界潤滑様<素町人
2016年07月12日 10:01
コメントをありがとうございます。

m(_ _)m
新潟学会
2016年08月09日 18:18
 たしかに、炭素結晶の競合(CCSC9モデルはトライボロジー分野では革命的、新次元理論と捉えられています。
古代出雲ファン
2016年10月03日 00:05
 名古屋の熱田神宮はいいところですね。
新潟学会、古代出雲ファン様<素町人
2016年10月03日 14:14
コメントをありがとうございます。

m(_ _)m
日立化成冶金研究所
2016年11月20日 23:09
 日本機械学会の方もごくろうですねトライボロジー学会の話でご苦労されているようですね。

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