尊厳死と安楽死。ふたつの違いがわかりますか?

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問題:「延命中止判断は拙速、富山県警が病院の関係者聴取」(YOMIURI ON LINE 060327)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060327i307.htm?from=main3
●これまでにも、東海大学安楽死事件(平成3年(1991))、川崎協同病院事件(平成10年(1998))、道立羽幌病院事件(平成16年(2004))など、終末医療に疑問を投げかけるいくつかの問題がありました。今度は富山の病院でなにやら揉めているらしい。「患者7人が延命措置の中止で死亡」と記事には書かれています。
●尊厳死、安楽死は、たいへん難しい問題です。そもそも、素人には言葉の定義がわかりません。尊厳死といえば脳死とか植物状態の人の延命治療をやめること。安楽死といえば、経験的にみて死期が迫っており、ひどく苦しんでいる患者に頼まれて生命を断つこと。その程度の認識です。おっ、これも間違っているのかな。
●安楽死には、消極/積極/間接/直接/純粋…など、いくつかの接頭辞がつくらしい。それぞれに定義はありますが、諸説あって揺らぎも小さくないらしい。定義はあっても、明確には分類ができない事例もあると聞きます。現場の医師ですらとまどっている部分があるようです。
●ここで問題です。老人医療の現場で働く医師が開いているHPの内容をそっくりクイズにさせていただきます。勝手なパクリ、ご容赦を。
●「年齢80歳。寝たきりで痴呆がひどく意思疎通ができず、尊厳死に対する本人の意志は確認不能」という患者がいたとします。この患者が肺炎にかかりました。呼吸が苦しそうです。酸素不足状態を改善し、喀痰の排出を容易にするために、人工呼吸器を使って治療すべきか。あなたがお医者さんだとして、次のどのように考えますか?
□寿命だから、人工呼吸器をつける必要はない
□痴呆で寝たきり。人間としての基本的な機能が失われつつあり、人工呼吸器は人の尊厳を奪うので認められない
□患者にとって限りない苦痛の延命治療であり、人工呼吸器に反対
□呼吸苦の状態はかわいそう。治らないかもしれないが、人工呼吸器をつけ、呼吸を楽にして、精神安定剤なども投与し、苦痛を軽減しながら治療をすべき
□助かる見込みはまだある。人工呼吸器をつけ、最後まで治療すべき。この例は尊厳死とは無関係
(患者の状況および選択肢は、『逝きし人々・・・尊厳死を考える?』というHPに掲載されいた内容を若干書き換えて提示しています)
(答えはずっと下↓ スクロールして下さい)





























正解:正解はなし
説明:●これは答えに迷いますよね。現場では、設問のような事例が少なくないらしい。HPを作っている医師は、「とくに正解はないかもしれない」と言っています。彼はこうした事例を見せることにより、尊厳死について考えるきっかけを与えようとしているようです。実際、考えさせられてしまいました(*1)。
●話は遺族たちの行動に移ります。今回も、遺族から「相談を受けていない」という話が出てきました。この手の話は遺族の証言が重要です。
●常識的には、家族の依頼あるいは承諾がないとは考えにくい。医師は、尊厳死・安楽死が殺人罪や自殺幇助罪と隣り合わせであることは百も承知です。医師会も積極的安楽死には積極的反対のようです。正気の医師が、安定した身分や生活を捨ててまで、自発的に尊厳死・安楽死を行なう可能性は低いとみるのが自然でしょう。
●実際、東海大学の例では、「『楽にしてやってほしい。早く家につれて帰りたい』などと再三言われたことから…」、実行したと言われています(*2)。ところが、「…家族が“死なせてくれとは頼んでいない”と撤回して,法廷の表舞台から早々と消えてしまったのだ…」(*3)と書いてあるHPもあります。裏付けるような新聞記事もあります(*4)。う~む。
●幸か不幸か日本は契約社会ではない。医師と家族は、悲しい行為についての契約書を残さない。そのため最後にわりをくうのは「実行犯」である医師。そんな構図に見えますけど。
●奇しくも今日3月28日は、11年前に、東海大学の助手が安楽死問題で医師として初めて有罪判決を受けた日だそうです(*5)。
●なお、「尊厳死と安楽死。ふたつの違い」については、*1に述べられています。立場によって判断が分かれる事例についても触れられています。素人が下手に説明すると失敗しそうです。お手数ですが、そちらをご覧ください。
◆参考*1:HP「(逝きし人々…尊厳死を考える?)」
http://www.geocities.jp/songenky/
(「尊厳死とは」、「安楽死とは」、「尊厳死と安楽死のあいだ」、「安楽死の分類(ラッセル卿) 」…などのメニューがあります)
◇*2:HP「安楽死」(法の面から見ています)
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife/8692/anrakushi.html
◇*3:新聞「ごあいさつ」
http://www2.ttcn.ne.jp/~sanami/aisatsu/
◇*4:「『安楽死は望まず』 東海大事件公判で患者の息子が証言」朝日新聞921112東京朝刊31頁
◇*5:新聞「安楽死事件 元東海大助手に有罪判決 医師の新4要件示す/横浜地裁」読売新聞950328東京夕刊1頁

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この記事へのコメント

ユリカモメ
2006年03月28日 12:22
私のブログへコメントいただきありがとうございました。
正解はないと考えましたので、正解でした。
リンクされているHPは勉強になりそうです。
ユリカモメ様<素町人
2006年03月28日 13:02
コメントをありがとうございます。
「正解はないと考えました」…素晴らしいですね。町人はそこまではたどりつけませんでした。
 リンクされているHPの他にも、現場の医師の声が書かれたHP、ブログがありますよね。
 読んでいると、あまりに条件分岐が多すぎて素人には整理のつけられない問題だなと感じてしまいます。
 この問題をあっさり書くにはきっと「情」を捨てることなんでしょう。でも、一般人にはそれは難しいことですよね。
 (^^;)
2006年03月28日 14:47
すばらしいTB有難うございました。
常普段死を見つめていることが必要に思います。これはその人の考え方一つです。
毎日流されているではだめです。しかし世の中はそれを許しません。
誕生はその人の意思にはよりませんので、死もまた自分の思うようには行かないでしょう。しかし生前に意思表示できる生き方はしたく思います
普賢龍鬼
2006年03月28日 15:28
私のブログへコメントいただきありがとうございました。
私も「正解はない」と思ったのである意味正解でした。
しかし、現実に同じような状況に身をおいてみないとどのような判断するべきかわからない問題ですね。
今考えていることと現実に直面した時とでは違う判断をするかもわからないですね。
2006年03月28日 16:40
TBありがとう、わからへんなぁ
この問題はまったく興味(ちょっと失礼だな)がなかったけれど地元富山だったんでちょっと考えてみたが、よく考えてわからんね(笑)
2006年03月28日 16:52
コメント、TBありがとうございました。
自分は、「正解はなし」ではなく、「全てが正解」と感じました。一つ一つの考え方には、それなりの根拠があると思うので。難しい問題です。
2006年03月28日 20:07
コメント ありがとうございました。
全部正解のような気がしてましたけど
よくわかりません。
難しい問題ですけど
やはりキチンと指針を出さないと
いけない時期に来てると思っています。
2006年03月28日 20:25
TB有難うございました
この問題は難しい問題で簡単には結論が出せないと考えていました。
ただ自分や家族であった場合は回復の見込みが無い場合苦痛の軽減措置はとってほしいけれど生命維持装置はつけないでほしいと願うものです。
2006年03月28日 20:45
はじめまして。ご紹介ありがとうございました。TBさせていただきましたが、うまく入ったでしょうか?
2006年03月28日 20:50
トラックバックありがとうございました。
問題に対して私がこれだと思った答えは正解ではなく、しかし現場の医師は自らなんらかの答えを出さなくてはいけないことに、医師の責任の重さの一端を感じた気がします。
ken39様<素町人
2006年03月29日 08:17
コメントをありがとうございます。
 生前というか、健康なうちに、意志をはっきりさせておくといいんでしょうね。
 ただ、「書いたもの」でも古いのは無効という話もあって(未確認ですが)ともかくややこしい。尊厳死協会のカードは、更新していくのでしょうか。
 調べて有効なら検討しようかなと思います。
普賢龍鬼様<素町人
2006年03月29日 08:22
コメントをありがとうございます。
「正解なし」という正解を出されたわけですね。素晴らしい。

「逝きし人々」にもありましたけれど、立場や見方によって、なにをすべきかがずいぶん違って来ますよね。
 せめて自分の最期だけは、残された人たちが困惑しないようにとは思います。でも、こちらの思うとおりにはなかなかいかないかもしれないし。(^^;)
kazu4502様<素町人
2006年03月29日 08:25
コメントをありがとうございます。
「わからない」…そうですよね。町人も、事情は少しずつのみこめてきましたけれど、なにかを判断するとか提案するといった段階にはとても到達できません。ホントに難しい話ですよね。 (^^;) 
おねば様<素町人
2006年03月29日 22:03
コメントをありがとうございます。
 参考にしたHPにも書いてありましたが、たとえば「治療・回復の見込み」にしても、医者によって判断が異なる例があるそうです。複数の医者の判断が一致することが大切な理由になっているようですね。
Shoko様<素町人
2006年03月29日 22:13
コメントをありがとうございます。
 今日、例の外科部長氏が会見していました。指針についても触れていたようですが、いまひとつよくわかりませんでした。
 外科部長氏は、いま落ち着いて発言できる立場ではありません。今後どのように事態が展開するかわかりませんが、しばらくしたら、今回のことを彼の立場から見た記録を残して欲しいものですね。
ミニミニ放送局 様<素町人
2006年03月29日 22:17
コメントをありがとうございます。
 町人は、もし末期ガンだったら延命措置はやめてほしいと思います。
 でも、その反面、できる限りジタバタしてやりたいという妙な気持ちもちょっとだけあります。尊厳死を望むと書き置きしながら、おおよそ威厳のない惨めな死を迎えそうでちょっと恐い。 (^^;)
みかん様<素町人
2006年03月29日 22:21
コメントをありがとうございます。
 TBがときどきうまくいきません。理由は不明ですけれど。
 お気持ちだけいただいておきます。ありがとうございました。 (^^;)
某様<素町人
2006年03月29日 22:43
コメントをありがとうございます。
 貴記事「とりとめのない考察」の「安楽死」に次のような部分がありますね。
「…医師が患者を死亡させた」部分だけを強調して事件として取り上げることが、患者、家族、医師の苦悩の末の決定をないがしろにしているようにしか思えない…」
 同感です。
 誤解を恐れずに言えば、安楽死は被害者のいる事件ではありません。みんなが涙して重く悲しい決断をしている。そんな可能性が強いわけです。
 医師や家族の傷ついた心の内側には、ほとんどの記者は入り込めません。そのためでしょうか。現実の重さに比べて、ほとんどの記事は薄っぺらに見えます。
救命救急医
2006年04月01日 13:26
私は「人工呼吸すべきでない」と思います。
マスクで酸素投与、苦痛を取るための鎮静薬投与はおこないます。
このような患者さんに人工呼吸をはじめると、射水病院のように
止め時を失い、思い余って止めると警察沙汰になります。
患者さんの年令、意識の程度、基礎にある病気の種類と重症度のよって、受けるべき医療の質も変わります。
「全ての人にできる限りのことを」というのはある意味綺麗事です。
そんなことをしていると、意識がなくなり植物状態でも、ICUでチューブを沢山突っ込まれて人工臓器につながれて、
人はいつまでもあの世にいけなくなってしまいますよ。
救命救急医様<素町人
2006年04月02日 09:18
コメントをありがとうございます。
 ご意見をありがとうございます。射水病院の場合は「止め時を失った」わけなんですね。
 素人にはわからない、いろいろな見方があるようです。ご教示に心から感謝いたします。
 m(_ _)m
2006年04月02日 16:44
コメントいただきありがとうございました。

デリケートな話題なので
Blogで発言するにも気を遣いますが、
この事件?についてたくさんの人が
真剣に考えているようで
議論が活発になるのは良い事だと思います。

外科部長は、
「呼吸器は救急治療に使うものだから外した。
延命治療を止めたのではない。
「延命治療」と「救急治療」の違いを理解しなさい、」とコメントを出しているそうです。
このコメントの真意を勝手に解釈するのは
難しいですが、別の専門医によれば
末期がんでは呼吸器は使わないそうで、
それを外したということは
病院が経営上、無理やり延命しているのを
見ていられなくて外した、
と言ってるのかもしれません。

外科医らしい理論的なコメントだと思いますが
真意はやはり、患者や家族への愛があっての
事だと信じたいと思います。





cat様<素町人
2006年04月03日 09:03
コメントをありがとうございます。
 延命治療と救急治療の違い。文字面から言葉の意味は理解します。でも、実際に現場でどのようにつかわれているのか。素人にはわかりません。
 重病だけれど安定していた患者が急変したとき、人工呼吸器をつけるのは救急医療になるのでしょうか。それとも延命でしょうか。
 病状の判断にもよるかもしれません。完全治癒が可能と判断している人にとっては救急治療。生命維持も難しいと判断している人にとっては延命かもしれません。
 素人にはわからないことが多すぎますね。 (^^;)

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